エピソード101 見ていて溜飲が下がる様
『衛兵隊から連絡がありまして、貴女に対する嫌疑は完全に晴れたそうです。花女史』
『御手を煩わせまして、心底よりの御詫びを申し上げます。帝国女騎士様』
{動機と犯行を実行する能力のある我が主への放火殺人の疑いでしたが。五日で晴れるとは思っていたよりも早かったですな}
その通りですね髪飾り。犯行動機と実行能力のある容疑者である私への衛兵隊による捜査は、もう少し長引くかと思っていました。
帝都魔法学園にて、根元魔法の治癒魔法の講義を担当されていられます、祖父とは戦友の関係でもある退役軍人な帝国女騎士身分の老女教授は。放火殺人の疑いが晴れた年下の小娘である私を、椅子に腰掛けられたまま冷ややかな眼差しにて御覧になられますと。
『それと。これは帝国軍の憲兵隊の副総監であらせられます、ケルン家の伯爵閣下からの御言伝ですが。貴女が金髪に着けている、意志ある魔道具でもある遺失魔道具の件で、貴女の身体ごと手に入れる為にを攫おうする輩に対する心配は、当面はしなくて良いとの事です。フロリアーヌ女史』
{面白くは無さそうですな。我が主}
老女教授は、現役の帝国軍人でした当時は憲兵隊に所属されていられたそうですから。古巣の副総監であらせられますケルン家の伯爵閣下が、平民身分の村娘に過ぎない私に御気遣いを見せられるのを、封建制度を政治体制に採用している帝国においては、身分の序列を乱す行いだとして不愉快に感じられるのは当然です。髪飾り。
『私のような地方部出身の平民身分の村娘に過ぎない下賤な身分の者に対して、伯爵閣下よりの格別の御厚情を賜りまして、御礼の言葉も御座いません。帝国女騎士様』
恭しく深々と御辞儀をして答えた私に対して、人生経験豊富な退役軍人でもある老女教授は、一切の暖かみを感じさせない冷たく突き放された声にて。
『貴女は本当に優れた女魔法使いです。その点だけは認めます。下がりなさい』
{個人的には我が主への疑いを解いてはいないが、立証するのは不可能だと敗北を認められましたな♪}
楽しそうですね?。髪飾り。
{はい。独善的な思い込みを客観的な事実により否定されても、妄執を解く事が出来ない人間の反応は、いつ見ても飽きませんからな。我が主♪}
悪趣味ですね。まあ、私としても、老女教授が悔しがる様は、見ていて溜飲が下がりましたけれど。
『失礼をいたします。帝国女騎士様』
再び恭しく深々と御辞儀を行い退室の挨拶をしました私に対して、内心では強い敗北感を覚えていられる老女教授は背を向けて、視線を合わせようとはされませんでした。