エピソード1 帝都図書館
帝国の地方部にある村から帝都で根元魔法を学ぶ為に来た本好きな十四歳です。
『間もなく閉館の時間となります』
帝都にある図書館で集中して読書を行っていますと、聞き慣れた女性司書の声が館内に響きました。
『本を読んでいますと、時間が直ぐに過ぎ去るのが困ります』
帝都にある図書館は、帝国最大の蔵書量を誇る叡智の殿堂ですので。現在十四歳の私が残りの生涯の全てを読書に捧げたとしても、天寿を全うするまでに蔵書の全てを読破して内容を理解するのは極めて難しいですから、閉館時間は本当に残念に感じます。
スッ
読んでいた本を丁寧に本棚の元の位置に戻しますと、大気中の魔力を集めて図書館の館内に明かりを灯している、魔道具の照明器具に目を向けまして。
『故郷の村では読書を行う際には根元魔法で光を発現させなければいけませんでしたから、魔道具の照明器具が設置されている帝都の図書館は快適な読書環境が整っている事に、心底よりの感謝をしています』
帝都は帝国の君主であらせられる皇帝陛下の宮城があります、文字通りの国家の中枢ですので。図書館の他にも上下水道が整備されていて、街路には魔道具の街灯も設置されていて夜間の移動にも困りませんから。地方部出身の私からしますと、故郷の村で暮らしていた頃には想像が出来なかった程に高い生活水準を送る事が出来ます。
『さて。公衆浴場に行き湯浴みを済ませてから洗濯屋に寄り、学生食堂で夕餉を摂る事にしましょう』
帝都に来て一番便利に感じているのは、湯浴みや食事や洗濯は代価としてお金を支払えば、自分で水汲みや薪割りや調理をせずに行えますので。節約した時間を読書に充てる事が出来る点です。
『日常生活を送る上で必要不可欠な作業の大半を、金銭で他者に任せる事が可能な帝都での便利で快適な暮らしに一度慣れますと、二度と故郷には戻れません』