とおいそらのした
「覚えておくといい、カエル。これがこの世で最も許されてはならないことだ。」
怒りをはらんだ友の声。
古い記憶。
炎を逃れ、東へ向かう避難民船団。
その後背に位置する護衛船の隅に僕らはいた。
巨大な浮遊樹ごと城も街も、国ごと燃え、船に乗れなかった不運なものは燃えかすのように落ちていく
このような悲惨な事が起こることを誰が予測できただろうか。
「樹を燃やしてはならない」
この世界に暮らす人々の禁忌とされてることは、この日、この目で見ることとなった。
それを教えた父の乗る動かない鎧装は此処からでも見える。
南の塔、その上層にて無数の槍に貫かれ、尚、祖国の旗を掲げるその姿を。
騎士団長の鎧装は全長20メートルを超える。
侍どもの使う鎧装の倍近くあるのだから当たり前でもある
未だ明々と燃える祖国で戦い続ける騎士達を残し、船団は離れていく
東へ・・・ただ・・・東へと
炎の音はもう聞こえないが、浮力を失った故郷は
重金属の雲へ沈み始めるほどに高度を下げている。
「この光景を忘れてはいけない、カエル、決して、だ。」
怒りと悲しみを耐え、そう絞り出す彼の姿を
この空のように、赤く暗く染まる、トコナイ王子の眼を
僕は忘れてはいけない。
ーーーとおいそらのした Fin