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500年の時を越えて  作者: 胡蝶 蘭
19/19

19.スポーツフェスティバルって?

教室に入り席につくと、机の右端が淡く光っているのに気づいた。

そっとそこを押してみると、小さな画面が現れ、『順位発表』という文字が浮かび上がった。それをもう一度タップすると、試験の順位が表示された。

画面には、クラス全体の順位、体力テストの順位、学力テストの順位が並んでいた。クラス順位は1位、体力では5位だったけれど、学力では1位を取ることができたみたいだ。

《やったー!!》思わず心の中で叫んだ。体力面ではやっぱり1位は難しかった。みんなよりも2歳若いし、それでも十分に健闘したと思う。学力テストでは1問間違えたけれど、他はすべて正解だったようだ。

画面には上位20人の点数も表示されていて、2位との差も確認できた。私よりも2問多く間違えていたようで、少しほっとした。

これからもこの成績を維持していきたい。前世で培った知識も役立って、今回のテストでは主席を取れたけど、これからはみんなとの差が少しずつ縮まってくるだろう。いつか追い抜かれる日が来ないように、しっかり努力していかなくちゃ。

目指すは、二物も三物も、いや、四物も手に入れること!今世の私は、なんだか欲張りになっているなぁと思うことが多い。でも、何よりも大切な目標は『幸せになること』だ。

そのためには勉強も必要だって思っているから、一つの目標として頑張っている。やりたいことが見つかるまで、今はただ普通のことを一生懸命やっていこうと思う。


ライラの服装は、あれからすっかり普通になった。

本人曰く、『舐められないようにしていた』とのことだが、どうやら自分なりにキャラを作っていたらしい・・・ちょっと、色々イタイかも・・・

体力測定で思い切り痛い目に遭って以来、運動する時は動きやすい服装に変えたらしく、『あの服はもう二度と着ない』と言っていた。でも、いつかまたあの格好をどこかで見たい気もする・・・ぜひ、いつか着て欲しいものだ。

体力測定の結果は、どうやら散々だったらしい。いわゆるビリってやつだと思う・・・

予想に過ぎないけれど、なんとなくそんな気がする。

本人は、『夏休み前の試験では、今度こそ良い線までいくんじゃないかな』と自信を見せていた。彼女には頑張ってほしい。


気づけば、新しいクラスにも馴染んで、もう5月になっていた。

6月には、親睦会を兼ねた全学年が初めて一緒に行うスポーツフェスティバルがあるらしい。いわゆる運動会というやつらしい・・・運動会といっても男子だけが競技に参加し、女子は主に観覧役だという。グランドの周りには観覧席やテーブルが設置されていて、女子たちはそこで食べたり飲んだりしながら見物をする予定だ。女子は結局何もしないのねと思っていたら、運動会の後には、『ミッドナイト・ミラージュ』があり、パートナーと一緒にダンスをしたり、食事をしたり、アメリカだった頃のプロムみたいな?日本ではあまり馴染はないけど、そんな催し物があるようだ。もちろんパートナーがいない人は、友達でもOKだし、一人でもOKのようだ。基本的には、誰かを誘うらしいが・・・

スポーツフェスティバルをやっている間は、自分の家のヒューマノイドを1名まで連れてきてもいいことになっているそうだ。

ヒューマノイドは食べ物や飲み物を給仕してくれるので、とても助かる。私はカレンを連れて行くつもりだ。カレンは女性型だが、護身術も習得しているため、護衛としても十分役に立つらしい。

一方、ライラもヒューマノイドを連れてくるそうだが、サリーの家は普通なのでヒューマノイドを持っていない。

一般家庭では、ヒューマノイドを持つことは難しいようだ。だから、サリーの分もあらかじめカレンに頼んでおこうと思う。ライラの家のヒューマノイドは護衛にはならないらしく、名前持ちの家庭でも護衛ができるヒューマノイドを所有するのは中々に難しいらしい・・・

やっぱり、ドット家の裕福なんだね・・・いつかの為になるべく自分のことは自分でやろうと思う。


昼休み、サリーとライラと私の3人で、「ミッドナイト・ミラージュ」に着ていくドレスを探しに行こうと盛り上がった。そして放課後、一度寮に戻ってから入り口で待ち合わせをすることに決めた。

寮の部屋に戻った私は、チャチャ丸も一緒に連れて行くことにした。彼にサリーとライラの匂いを覚えさせておこうと思ったのだ。チャチャ丸はペットだけど、生き物じゃない扱いなので、飲食店に連れて行っても問題ないらしい。

「チャチャ丸、『私に危険がない限り、無駄に吠えないこと』、わかった?」と言い聞かせてから、寮の入り口へと向かった。

入口に着くと、サリーとライラがすでに待っていた。

「ごめん、待たせちゃった?」と言いながら、私はチャチャ丸を紹介した。

「この子、可愛い!なんてフワフワなの?」とサリーとライラが同時に手を伸ばし、チャチャ丸を撫で回し始めた。

「チャチャ丸って言うの。私の護衛だよ。可愛いでしょう?」私は胸を張って自慢げに言った。

「うん、めちゃくちゃ可愛い!でも、護衛って...?」とライラが首をかしげた。

「そう。チャチャ丸は、こんなに可愛いのに、実はすごく強いんだから!」と私が言うと、チャチャ丸も「ワン!」と鳴いた。その瞬間、みんなで大笑いした。

その後、3人でリフトバスに乗り、スタイルショップが集まるエリアへ向かった。そこには、普段着からスポーツ用品、そして高級なドレスショップまで、いろんなお店が並んでいた。

「どこから見る?」とライラが聞いた。

「時間かかりそうだし、まずはドレスショップからかな?」とライラが提案。

「でも、あんまり高いお店はちょっと・・・」とサリーが小声でつぶやいた。

「私も初めてだから、ゆっくり見ながら入りたいお店に入ろうよ」と私が言うと、二人は安心したように頷いた。

通りの半分ほどは男性用品のお店だとライラが教えてくれた。

「なんでそんなに詳しいの?」と私が聞くと、

「兄がいるから、一緒に来たことがあるの」とライラは答えた。

「そうなんだ!私もパピーに聞いておけばよかったなぁ」

「女性ものは3分の1くらいで、あとは雑貨や飲食店、男性が利用するお店なんだって!」とライラが詳しく説明してくれた。

「あっ、ここなんてどう?」とサリーが指さすと、ショーウィンドーにはとても可愛いドレスが映し出されていた。

「この世界って、色んなサイズのドレスに対応してるんだね」と私がつぶやくと、

「この世界って?どの世界の話?」とライラが即座にツッコんできた。

「う、うん、この学園のことだよ。外に出たことないから、こういう場所に来るの初めてで...」私は焦って誤魔化した。まさか、前世のことだなんて言えない!変な子と思われるし・・・

「じゃあ、ここに入ってみよっか!」とサリーが言い、私たちは店内へ足を踏み入れた。

店内に足を踏み入れると、すぐに目に留まったドレスはどれも可愛らしく、しかも価格も手頃だった。

「ここ、いい感じじゃない?」と私は思わず声をあげた。

ドレスのデザインが洗練されているのに、値札を見れば驚くほどリーズナブルだ。

「学生向けなのかな?」とライラが言った。

「たぶん、そうだよね。学園側が、私たちみたいな学生が利用しやすいお店をチョイスしてるんだと思う」と私は答えた。

サリーもドレスを見ながら、「これなら、買えるかも」とほっとした様子を見せていた。

私たちはそれぞれ、目に留まったドレスを手に取り、次々と試着してみることにした。

私が選んだのは、ワンピース風のドレス。まだまだ幼児体型のポッコリお腹では、着こなせる服が限られてくる。セパレートよりも、ワンピースの方が少しはフォーマルに見えるだろうと思った。こういうとき、もしママがいてくれたら、もっと的確なアドバイスをくれるんだろうけど、寮暮らしではそうもいかないよね。

ドレスに合わせて小物も揃えたけれど、思ったよりスムーズに選び終わった私たちは、入学時に来たカフェへ行くことにした。

「みんな、いいものが見つかってよかったね!」私が笑顔で言うと、サリーが少し不安そうに口を開いた。

「でも…私、こういうの初めてだから、ちゃんとできるか心配で…」

「大丈夫だよ!」とライラが軽く肩を叩いた。

「私たち、初めてだし、もし失敗しても来年以降まだチャンスが5回もあるよ!兄も『学生なんだからそんなに気張らなくてもいい』って言ってたし、今年はどんなものか様子を見るだけでも十分だよ」

サリーは少し安心したようで、ホッとした笑顔を見せた。

「ところで、パトリ先輩は毎年誰と行ってたのかな?今年は誰か誘うのかな?」とライラが興味深そうに聞いた。

「ん~、そういう話はパピーとはあんまりしなかったなあ。パーティーがあること自体、つい最近知ったし・・・」

「そう…じゃあ、私がパトリ先輩を誘ってもいい?」と、ライラが少し照れくさそうに聞いてきた。

「えっ!?ほ、本人に聞いてみたら?」私は驚いたけど、ライラは初日に変な事言っていた気が・・・

「うん、機会があったら今度聞いてみる」ライラが決心した様子で頷いた。

「ローズはどうするの?サリーは?」

「どうだろう…特に誘いたい人もいないし。パピーが誰かと行かなかったら一緒に行こうかなって思ってるけど、サリーはどう?行く人いなかったら一緒に行かない?」と私はサリーに提案した。

「よかった〜!私も一緒に行く人がいなくてどうしようか悩んでたんだ。ご一緒していい?」とサリーが少しほっとした表情で返してくれた。

「でもさ、当日まで相手がいないってこと、絶対ないわよ。だって、ただでさえ女子の数が少ないんだから、誰からも誘われないなんてありえないと思うよ。サリーもすごく可愛いし、ローズなんかもう目をつけてる人、一人いるじゃない!」とライラが冗談っぽく笑う。

「ただ、シスコンのパトリ先輩がどう出るかよね・・・機会があれば当たって砕けろって感じで誘ってみるつもりだけど、競争率高そうだから難しいかも・・・でも、もし二人とも行く人いなかったら私も一緒にいい?」

「私、誘われても、みんなより小さいし、踊れるか自信ないんだよね。それに、知らない人から誘われても・・・」と私は言った。

そもそも、グレン以外の男子は名前すら知らないし、全然話したこともない人に誘われても一緒には行けないよ…

「しゃべったことない人から、誘われても難しいよね。性格が合わないかもだし・・・」サリーが私の意見に同意してくれた。

「とにかく、お互いに相手が見つかったら、申告しましょう?行く人がいなかったら、一緒に行きましょうか!」

「二人とも相手が見つかって、一人になったらどうするの?」

「そうしたら、相手の人も含めて、一緒に行ったらどう?どうしても二人で行きたいって思ったら、その時相談しましょうよ」とライラが提案する。

「そうねぇ~そうしましょうか!」と話をしているとケーキと飲み物を運んできてくれた。なんと、運んできてくれたのがヒューマノイドのお姉さんではなく、前回、少しだけ話をしたクライム・ロック・バルジャンだった。

「ど、どうしてあなたが運んできたの?」私はびっくりして聞いた。

「ここ、ぼくんちの店だから・・・ローズマリーさんを見かけたから、持ってきたんだ」

「ローズでいいよ。同級生でしょ?」

「でも、パトリ先輩が・・・」とクライムがケーキと飲み物を置いてくれる。

「今日はいないし・・・私は男の子のお友達もいてもいいと思うし・・・」

「ホント?これ僕が考えた季節のデザートなんだ!どうぞ」私たちみんなで、一口食べてみた。

「「「おいしい!!」」」声をそろえて言ってしまった。

「よかったぁ~さっき、ちょっと話聞こえちゃったんだけど、僕も行く人いなくって、クラスのみんなは女の子誘うって言ってたからどうしようかと思ってたんだ。みんなで行くんだったら、僕も一緒にいいかな?あっ・・・僕、クライム・ロック・バルジャンよろしくね。クライムでいいよ。ローズと同じ1年生だけど、お二人よりも一つ年下かも・・・」とクライムが二人に挨拶した。

「あなたが2位の人?」ライラが大きな声で言った。

「ローズもクライムも、すごいわね~」サリーが感心したように呟いた。

「そんなことないよ。うちには3年生の双子の兄たちがいて、勉強教えてもらったんだ。だから、ちょっとだけ得したってだけ」クライムは謙虚に答える。

「うちも6年生の兄がいるけど、あいつは教えるのが下手で、体ばっかり鍛えてる脳筋だから、自分でやるしかなかったんだよね」と、ライラがぼやく。

「クライムは誰か誘いたい人、いなかったの?」サリーが問いかけると、クライムは少し照れたように笑顔を浮かべた。

「みんな年上ばかりだし、女子も先輩ばっかりでどうしようかと思ってたんけど、丁度、ローズを見つけたんだ。それに、パトリ先輩にはああ言われちゃったし、迷ったけど、思い切って話しかけてみて良かったな」クライムの笑顔が眩しくて、思わずこちらもつられて微笑んでしまった。

その笑顔が、なんだか可愛い。だけど、私は精神的にかなり大人だから、小さな子供みたいにみんなが可愛く見えてしまう。でも、いつまでもこんな風に感じてばかりじゃダメよね…。そのうち外見も成長すれば、少しは違和感も薄れるのかしら・・・

「男子はいいわよね。女子はみんな参加できないんでしょ?」私は残念そうに呟いた。

「…うん、女子は人数少ないし、男子に混ざってスポーツするのは難しいから、こうなったみたい。それに、女子で参加したい人もいなかったらしいよ。僕だって参加したくない。スポーツあんまり得意じゃないし、体も小さいし…」クライムは少し俯きながら答えた。

「でも、ローズは参加したいの?」

「うん…見てるだけじゃつまんないし、参加できる競技があればいいのに」私はため息をつく。

「たしか、一番最後の競技で、女子でも参加できるものがあったような…?」クライムが思い出したように呟く。

「本当?どんな競技なの?」私は少し期待を込めて問いかける。

「うーん、あんまり覚えてないんだ。今度、兄さんたちに聞いてみるよ」

「私も兄に聞いてみるわ」ライラが力強く言ってくれた。

その後、私たちはカフェを出て、寮へと帰った。



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