14.学園生活の始まり
毎日の日課として、レジーと一緒に合気道、空手、テコンドー、カンフー、柔術など、あらゆる体術の基礎を学んでいる。ただ、レジーとは体格が違うため、対戦するのは難しく、休みの日にはパピーと一緒に訓練を行っているが、これもなかなか容易ではない。
やっと3歳になり、少しずつ体が大きくなってきているが、女の子のせいか、それほど成長した感じはしない。むしろ、普通より少し小さいように感じる。一方で、パピーはこの間9歳になり、ますます体格に差が出てきたようだ。日に日に成長し、背も伸びているので、最近は対等な相手になれていない気がする。でも、体術で女子の世界一を目指しているわけじゃない。自分より体格の大きな相手でも太刀打ちできるようになれればいい。これからは、大人でも投げ飛ばせるだけの技術を身につけることが目標かもしれない。
それから、剣道なんかもこれから取り入れてもらおうと思っている。この世界では、剣道や他の武術がそれぞれ独立したものとして存在しているわけではなく、体術も含めて、さまざまな手法が混ざり合ったものが主流らしい。大会のようなものは男子には存在するが、女子は守られるべき存在とされているため、鍛錬するという常識はほとんどないようだ。
来年には学園のテストを受けるつもりだ。合格すれば、寮に入ることになる。幸い家が近いので、週末はパピーと一緒に自宅に帰るつもりだ。そういえば、私が学園に行くことになれば、パピーも寮生活に移るらしい。同じ敷地内のほうが安心だということだ。私もそのほうが助かる。両親や兄と離れて寮で生活するのは、やっぱり寂しいから…。
最近、パピーからグレンの話をあまり聞かなくなったが、相変わらず放課後には一緒に訓練をしているようだ。アントニオも加わり、三人で頑張っているらしい。
以前はまったく話が通じないと思っていたグレンだが、最近は三人とも仲がいいとエミリーから聞いている。あの二人がそんなに親しくなるなんて、正直驚いた。
グレンが突然うちにやって来た後から急に変わったようだ。男の子って本当にわからない。仲が悪そうだったのに、いつの間にか友達になっているし・・・
まあ、仲がいいことはいいことだけれど・・・
私はというと、あれ以来グレンには一度も会っていない。きっともう私のことなんて忘れているだろう。彼らは彼らで忙しそうだし、思い出しもしないのかもしれない。
エミリーはたまに遊びに来てくれるけど、それも2、3か月に一度くらい。頻繁には来られないみたいだ。エミリーの家も過保護そうだから、いろいろと難しいのかもしれない。私も相変わらず外に出たことがないし、どこの家も女の子は似たような状況なのかもしれない。
そして、私はとうとう学園の試験を受け、合格を勝ち取った。
パパんはとても心配そうにしていたけれど、ママんは「やってみなさい」と応援してくれた。ママんは割と前向きに背中を押してくれるタイプだが、パパんは心配性で、何事にも一度は反対する生き物みたいだ。
学園でも私の年齢での入学が認められていたし、ママんの応援と私の『あざと攻撃』で、最終的にパパんも折れてしまうんだ。最後の『パパん、大好き』で結局、最後はデレデレになってしまう。いつも女性には弱いパパんなのだ…。
♢♢♢
明日から始まる学園生活が楽しみで仕方ない。本当は寮で相部屋がよかったのだが、パパんとパピーがどうしても個室にしろと主張したため、結局、個室にせざるを得なかった。場所は最上階で、5LDKの部屋になる。リビング以外に4部屋あるので、一番広い部屋が私のものになり、小さい2部屋のうち1つはカレン、もう1つはダンとレジーの部屋。4つ目の部屋はパピーが使い、最後の部屋は客室にする予定だ。これならたまにパパんやママんも泊まれる。これじゃ、家とあまり変わらない気がするけど・・・
防犯上の理由で相部屋にはできないらしい。
さらに、ヒューマノイドは最高で3人まで連れて行けるそうだ。普通の家は女性のヒューマノイド1人が一般的だけど、うちは過保護だから護衛も2人常駐している。学園の防犯体制は十分すぎるほど整っていて、護衛なんて必要ないくらいらしいけど、うちの家はとにかく過保護だから仕方ない。
パピーも一緒に生活することになったし、兄妹は同じ部屋でも問題ないということだ。ほんとに家と変わらない感じだ・・・
この最上階はワンフロアを一家族のみが使用できるので、他の家族は下の階を使うらしい。どうやら私たちの生活はここでも特別扱いされているみたいだ。
シャルル・ドット家だから仕方ないのかもしれないけど…。
私の部屋には、外に繋がるバルコニーがあるらしい。
初めてのお外だよ!嬉しすぎる。お庭に出れば外の空気と変わらないかもしれないし、夜になれば星空が広がって、景色も大して変わらないかもしれない。でも、本物と偽物じゃ気分が全然違うんだよね。
荷物の準備はほとんどカレンがやってくれたけど、運ぶのはダンとレジーの仕事になっている。私は身一つで学園に行けばいいだけだから、本当に楽をさせてもらっている。入学式の間に部屋も整えてくれるそうだから、至れり尽くせりって感じだ。
《ああぁーーー、明日が楽しみだ!》
とうとう、この日がやってきた。朝食の席で、パパんとママんは少し寂しそうな顔をしていた。
「パパんは、すぐに面会に行くからな」
「私はすぐには行けないけど、週末には会えるのを楽しみにしているわ」
「ママん、今日1日はこれからなんだから、お別れを言うのはまだ早いよ!」私は、抑えきれないワクワクした気持ちを言葉にしてしまった。
「ローズは俺と一緒なんだから、大丈夫だよ。心配しないで」
「そうね。でも、パトリの顔もしばらく見れないのよ。寂しくなるわ」とママんは泣きそうな顔をしている。
私は、ぎゅっとママんに抱きついてから言った。
「ママん、何かあったら連絡してね。ローズが助けに行くから。パパんと喧嘩したら、すぐにローズのところに来ていいからね」
「わかったわ。そうするわ」とママんが答えると、パパんが急に割り込んできた。
「ママんとは絶対に喧嘩しないから、ママんはパパんといるの」と言って、パパんはママんに覆いかぶさるように抱きついた。それを見て、負けじとパピーが私の上から抱きついてくる。
《仲のいい家族だ。今世の私は幸せでいっぱいだよ!》
前世の私の両親は、よくお酒を飲み過ぎて喧嘩をしていたし、『出ていけ』なんて言葉を言って母が本当に出て行こうとしたこともあった。
あの頃は、子供心にとても辛い思いをしたことを思い出す。今の私は、この両親に育てられて、本当に幸せを感じられている。
「私は、パパんとママんに育ててもらって幸せだよ。ありがとう」
すると、パパんが慌てて言った。
「嫁に行くみたいじゃないか、やめてくれ。まだまだ嫁には行かせないぞ」
「いくらなんでも、お嫁に行く話は早すぎるでしょ!パパん」
「当たり前だろ、嫁になんか行かせないから大丈夫だ」と言って、パパんは泣き笑いした。
そうして、私たちは支度を終え、学園へと向かったのだった。
学園は重厚な石壁で囲まれており、入口の扉は頑丈な鉄格子のような大きなものだ。今は開いているが、閉まると一人の力では絶対に開けられそうにない。ロータリーには次々とリフトバスが発着しており、生徒たちが順番に降りてくる。その中で目に入るのはほとんどが男の子で、女の子は数えるほどしかいないように思える。
みんな揃って会場へ向かっていく中、入口付近の重厚な扉のそばにとても背の高い人影が見えた。
その人影はどうやらこちらへ向かってくるようだ。私は思わずパパんの手を強く握った。近くに来ると、その人はパパんに挨拶を始めた。
「アレンニード様、シャイニーブラン様、お久しぶりでございます。グレン・カエサル・アスランでございます。この度はローズマリー様のご入学、大変おめでとうございます。私も楽しみにしておりました。ぜひ、私にローズマリー様のエスコートをさせて頂けませんか?」
《ええっーー?グレンさんですか?》私は驚いて、パパんの足にぎゅっとしがみついた。
グレンさんは、大人と変わらないほど背が高く、スラっとしていて、その体はとても引き締まっている。どう見ても、11歳には見えない・・・
老けているわけではないが、体格が良すぎてびっくりしてしまった。パピーも最近大きくなったが、グレンは年上なだけあって、さらに大きく成長している。しかも悔しいことに、その立ち居振る舞いも洗練されていて、ちょっとカッコイイと思ってしまった。
パピーはまだあどけなさが残っていて可愛らしい感じだけれど、グレンはもう『大人の男性』と言ってもいいくらいだった。
「・・・嫌・・・結構だ」と言って、私を抱っこした。
グレンはとても残念そうな顔を一瞬したがすぐに元に戻った。
「それはとても残念です。また、機会もあるでしょうから次回を楽しみにお待ちします」と一例をし颯爽と中に入ってしまった。
「ふぅーー、びっくりした。また、絡まれると思ったけど、グレンさんってとても大人になったのね?」と私は呟いた。
「見た目だけだよ、見た目だけ」とパピーが答えた。
「ホント、びっくりよね。子供っぽさが抜けて、洗練されたわね。パトリもうかうかしてられないわね」とママんも感心していた。
「俺は、いつも洗練されているから、大丈夫だ。ローズ、あいつには近寄るんじゃないぞ」とパピーに忠告された。
とても変わってしまった、彼にホントびっくりしたよ。人ってあんなに変わるんだ・・・
しかも私のこと、覚えてたよ!私の方が忘れてたくらいだよ・・・
パパんが私のことをぎゅっとしてきた。そして、私は「じぬ、じぬ」と言ってパパんの手をバンバンと叩いたら、手をやっと緩めてくれた。そして・・・
「あいつには絶対ローズはあげないぞ!!」と力強く言った。
「私は物じゃないよ!!あげるとかあげないとかないから・・・」パパんの方が大人げないと思うんだけど・・・
「早くしないと式が始まっちゃうわよ。行きましょう」ママの一声で、みんなで講堂に向かった。
パピーもグレンも今年は、初等部の最終学年だ。
私とは、1年しか一緒にはいられない。来年からは高等部になるから、寮は同じでも行事とか初等部で活動できるのは最後のこの1年だけなのだ。
《目一杯楽しまないとね》。一緒に活動できる時間は高学年と低学年では少ないだろうから、悔いのないように頑張ろう!!
モンテ・ディヴィヌス学園――その名は『神聖な高い山』を意味し、近くにそびえるマッターホルンにちなんでいる。しかし、長い名前は口にしづらいので、みんな『モンテ』や『モンテ学園』と略して呼ぶことが多いらしい。
1学年の定員はおよそ300人。男女比は年によってまちまちだが、今年は特に女子の入学者が少なく、たった15人しかいないという。これには驚きだ。《女子、少なすぎじゃない?》
この学園には初等部と高等部がそれぞれ6年間ずつ設けられている。中等部という区分はなく、高等部に統合されているようだ。昔の日本でいう高校卒業にあたるのが、この学園での高等部卒業らしい。興味深いことに、女子生徒の多くは高等部卒業と同時に結婚するという。こちらの世界では、女子の成人は16歳、男子は18歳とされている。だから、16歳になったばかりの女子が結婚することも珍しくないのだとか。でも、人生150年の時代にしては、早すぎる気がするけどね・・・
女子に限り、16歳以上であれば産休が認められている。産休を取っても退学にはならず、出産後に復学することができるというわけだ。前時代の日本では、高校生の妊娠は即退学という厳しい現実があったが、この世界では少子化の影響で、そうした制約は適用されないらしい。
《私たち、絶滅危惧種だものね・・・》
医学の進歩により、16歳でも安全に出産できる時代になっているそうだ。それにしても、なんという世の中だろう。ほとんどの女子は家庭に入り、男性が一生懸命に働いて家族を養う。女性はより強く優秀な遺伝子を求めるため、18歳になると卵子の凍結が義務づけられている。最低5つの卵子を凍結し、頭脳や運動神経、健康、容姿などの遺伝子配列に基づいてランク付けされるそうだ。その卵子は厳重に管理され、子供を望んでも持てない夫婦や男性カップルに提供されることもある。《なんだか…その全てがランク付けされるなんて、複雑な気持ちだわ・・・》
代理母制度も存在し、専用のヒューマノイドがその役割を担う。ただし、倫理上の制限があり、人間の女性が代理母となることは絶対に許されない。70歳以上で子供がいない夫婦、男性カップル、跡取りがいない家系の独身男性などに限られて適用されるらしい。この制度も、女子は例外で、名家の出身でなくても義務があるという。独身男性も増えてるみたいだし、跡取りが欲しい名家も多いんだろうね。いつの時代も、こうした問題はつきまとうものだけど・・・
一方で、卵子や精子の違法取引を行う極悪非道な者たちもいる。この世界も、犯罪から逃れられないということだ。アスラン家が撲滅に力を入れてくれるといいんだけど・・・
他の学年でも4歳での入学は稀だそうで、今回私の学年では、4歳で入学したのは私だけらしい。
けれど、同じ学年に5歳で入学してきた男の子がいると聞いた。歳が近いもの同士、ぜひ友達になりたい。何しろ、この年齢だと他の人から下に見られがちだから…。
以前、グレンもその一人だったように思う。彼の場合は普通のライバル心から来たものみたいだけど、女子の場合はもっと複雑だ。女の妬みというのは、何ともやっかいなものだしね。でも、私もこの精神年齢で乗り切っていこうと思う。仲のいい友達がいれば、きっと大丈夫。早く友達を作らないと…
この年でボッチはさすがに辛いものがあるから。まあ、私の場合、慣れている部分もあるけれど、気の合う友達はいたほうが良いに決まっている。
入学式は順調に進んだ。この学園の入学式は独特で、家族ごとにテーブルが設けられている。みんな家族と一緒にお茶を飲みながら、式を楽しむのだ。
舞台上では先生方の紹介や学園長の挨拶が行われているが、それを気にすることなく、みな思い思いに過ごしている。入学式が終わると、子供たちは教室へ向かい、親たちは帰宅となる。寮生活を始める子供たちと親との別れの挨拶も、この場で交わされる。笑顔で見送る家族もいれば、涙ぐむ家族もいて、それぞれの風景がある。
そして我が家・・・パパんは大泣きしていた。ママんは寂しそうな表情を浮かべつつも、パパんを慰めている。
そんな私も、別れ際にどうしても寂しくなってしまい、少し涙がこぼれてしまった。でも、パピーがそばにいてくれたおかげで、なんとか耐えることができた。私には担当のカレンやダン、レジーもいる。
だから、パパんほど大泣きせずに済んだ。週末には自宅に帰る約束をして、パピーと一緒に新しい教室へと向かうことにした。
教室に入ると、ほとんどの生徒がすでに席に座り、どうやら私が最後の生徒だったようだ。パピーの授業は明日からということで、彼は寮に戻って荷物の整理をすると言っていた。
「じゃあ、またあとでね」と手をヒラヒラさせて去っていくパピーの後ろ姿を見送った。
《私の席はどこだろう?》
教室を見渡すと、一番後ろの一番端の席だった。ここじゃ、小さい私は先生の書いた文字が絶対に見えない…。先生が来たら、席を変えてもらおうと決意する。あと5分ほどで先生が来るだろうと思い、時間を待っていると、突然、前の席の子がくるりと振り向いた。
「あなたと一緒に来た人、誰?…私、決めた!あの人にする。私に紹介しなさいよ。知り合いでしょ?」と、まるで命令するような口調で話しかけてきた。
誰だこの子は?まず自分の名前を名乗るのが礼儀だろうと内心思ったが、ここは私が大人になるべきかと考え、あえて何も答えなかった。しかし、彼女は怒鳴り声をあげた。
「なんとか言いなさいよ。失礼ね!」その瞬間、私の中で何かが切れた。
「どっちが失礼なのかしら?名前も名乗らない人に教えたくないわ」と冷静に言い返した。そして、彼女は鼻で笑ってこう言った。
「あなた、私が誰だか知らないの?名前持ちなのよ?偉そうに言わないでくれる?」
「どっちが偉そうなのよ…。そんな人に教える義理はないわ。」
すると彼女は私を睨みつけ、肩をすくめて前を向き直した。
「まあ、いいわ。勝手に話しかけて聞くから。私から話しかければ、誰でも靡くから、あなたに頼む必要はないわね。」
失礼極まりない。私は思わず彼女の背中を睨みつけた。
《ずいぶん失礼な人ね。パピーは、こんな女、見向きもしないわよ》と思ったが、口には出さなかった。
胸の奥で何かがふつふつと湧き上がる感情があったがを必死に押さえ込んだ。
やがて、先生が教室に到着した。先生は前に立ち、黒板に自分の名前を書いているようだったが、私は背が小さいため、まったく見えない。困ったなと思い、思い切って手を挙げた。
「先生、私、背が小さいので字が見えません。前の人と席を交換してもらえませんか?」
先生は状況を察して、一番前の真ん中の席に座っていた子に目を向けた。
「そうだな。サリー、席を交換してあげてもらえますか?」
サリーという子は、少し困った顔をして言った。
「でも、私も視力があまりよくないので、後ろには行きたくないんですけど…」
仕方なく、先ほどの失礼な態度の子に話を振ることにしたようだ。
「じゃあ、そこの…えーっと…」と名簿に素早く目を通し、名前を確認する。
「ライラです」
「ライラ…後ろの席に移動してもらえますか?」
ライラは一瞬、表情を固くしたが・・・
「はい、わかりました」と言って席を立った。その瞬間、彼女は私を鋭く睨みつけてきた。私はその視線を受け止めつつ、静かに席を移動した。先ほどのサリーも横に移動してくれ、ほっと胸をなで下ろす。
「ありがとうございます」と私は小さな声で感謝の気持ちを伝えた。
サリーは優しく微笑んで、「いいえ、どういたしまして」と答えてくれた。
その笑顔に、私は少し安心した。サリーとは仲良くなれそうな気がする。
その後、先生は挨拶を終え、明日の予定について話し始めた。
「最後に、明日の朝一番で自己紹介をしてもらいます。何を言うか、考えておいてくださいね。」こうして、その日の授業は終了となった。
教室を出ると、廊下でレジーが待っていてくれた。私はほっとして彼と一緒に寮へと戻った。
新しい環境にまだ緊張が残っているけれど、こうして誰かがそばにいてくれるのはとても安心する。
私は廊下を歩きながら、そっとレジーにさっきの意地悪な子の名前を聞いてみた。彼は少し考えた後、静かに教えてくれた。
「ライラ・バレン・アスランだよ。」グレンの所の子か・・・
レジーが教えてくれたことに、少し驚きながらも感謝の気持ちを伝えた。彼はどうやら、学園に通う生徒やその親、さらには先生の名前まですべて把握しているようだ。それだけでなく、危険人物の名前や顔も心得ているらしい。
「ダンやカレンも同じくらい詳しいの?」と尋ねると、レジーは軽くうなずいた。
「うん。僕たちはそれが仕事だからね。何かあったら、いつでも聞いてくれていいよ。」
頼りになる3人がそばにいるというのは、なんて心強いんだろう。学園生活はまだ始まったばかりだけど、彼らの存在が私に安心感を与えてくれる。これから何か困ったことや不安なことがあったら、パピーや彼らに言えばいい。きっとなんとか解決策を出してくれると思う。胸の中に少しずつ不安が消え、安心感が広がっていくのを感じた。