桜色の想い
性急すぎますかね? ちょっと加減がよくわかりません、今回も視点が変わります、次回は結和に帰ってきます。
なんと今回二回も視点が変わります、序盤のうちはあんまりダンジョンの探索を書くつもりはないです、最低限の人物紹介を進めてあと数話したら本格的にダンジョン攻略するかな?って感じです。
今回の主役は丸岡遥斗です
身長は170cmくらい、髪型は普通の男の人って感じで特徴のない顔の人です、ただ自衛官なので筋肉はありますし近接戦闘も銃も扱えます、チームのメトロノーム的な立ち位置。
スクーターで向かった現場は俺が付いたころにはしっかりと封鎖がされていて早期に対処が完了したらしい、俺は現場に着いてからあれこれと指示を出し終えると飲物を飲みながら考える。
これで封鎖は万全だと思う、祠の前にパトカーを無理矢理止めてもらったから強行突破されてもある程度はどうにかなるだろう、だけどもう入った人がいるかもしれない、そこの調査をしないことにはどうにもならないかな、とりあえず急いで終わらせないと面倒なことになるかもしれない。
祠に男女別々の警官二人を連れて祠に入り入口であろう黒い何かの前で警棒を抜くように指示して確認をする。
「封鎖はあの人たちに任せて私たちは既に一般人が侵入した可能性を考慮しダンジョンに突入します、何が待ち受けているかわかりません、ステータスを開いてジョブを設定しておくようにお願いします」
「了解しました、私が戦士、鈴木が魔法使いですね」
「それでお願いします、気に入らなければまたジョブを再設定してくださいね」
「了解しました」
「了解しました」
ステータスと念じるとジョブを決める欄が出てきた、色々と聞き取ってみた結果誰でも最初に選べるのがおそらく戦士、狩人、魔法使い、職人で恐らくこれは固定だ二人にも聞いたけどこれは三人ともでていた、人によっては違いが出るようだけどまだ何とも言えない、偶然ここにその素養がある人間がいただけかもしれないからもっとデータを集める必要があるね。
とりあえず狩人は使おうにも弓が必要だろうと思い戦士二人魔法使い一人の構成でいくことにした。
そして戦士を獲得するとステータスの画面に情報が追記がされた
《Name 丸岡 遥斗 加護:アレキサンダーの寵愛
job:戦士 Lv1
Lv1:闘気を取得
闘気:体内の魔力を身体能力向上に充てる》
闘気がどの程度のものなのかが気になるな、少し試しておこうかな。
「武内さん闘気は手に入れてますね?」
「はい取得済みです」
「試すためにも無い状態と闘気を発動した状態で少し試合をしましょう、これは私たちの生命線ですから」
戦士に転職した武内さんと軽く組み合っていると武内さんがかなりの腕前であることがわかった、かなりの有段者に思えるほどしっかりとした構えと技だった。
「武内さんすごくお強いですね、次は闘気ありでいきましょう」
「はい」
闘気は力も速さも劇的に上がるお互い上がっていて少し俺の方が上昇率が高そうであることがわかったけれど理由ははっきりとしない、そして闘気はあまり長くは続かないようで使ってる間自分の何かを消費しているような感覚があって数分も使えばそれが空っぽになる気がした。
「よし、そろそろ大丈夫ですね鈴木さんはどうですか?」
「私は水魔法ですね、自分で設定とかは出来ませんでした、魔力の感知能力が上がってるみたいでしてお二人が戦ってる間体内で魔力みたいなのが動いているのがわかりました」
「やっぱりあれは魔力だったんですね」
「自力で感知できるようになれば魔法使いでも闘気が扱えるかもしれません、このダンジョンを抜けたら試してみても面白いかもしれませんね」
その場で少し休憩すると俺が先頭、鈴木さんが真ん中、武内さんが後方で陣形を組みダンジョンに入る、黒いゲートのようなものを潜った先は一言で表すなら樹海と言った様相で空は青く空気は湿っぽかった。
「ワープするんですね、何があるかわかりませんし植物などにも極力触らないようにしましょう」
「そうですね、毒でもあったら大変ですし」
「特に異世界とか地球の外みたいな感じじゃないんですね」
「確かに似たような景色ならアマゾン辺りにありそうです」
後ろをみてもゲートはなく出口を探さなければ出られないことが考えられた、全員がランダムワープじゃないのだけが救いか。
「ゲートが消えてますね、ゲートと人を探しましょう」
三人で人の痕跡を探しつつ樹海を進んでいると大きな蛇が木の上で待ち構えてるいるのが見えた、色は森林に溶け込むような茶色と緑の迷彩みたいな色で気づけた自分をほめてやりたいくらいだ。
「蛇です、三本先の木の上かなり大きいですね」
「本当だ、警棒でなんとかなるでしょうか」
「毒があるかもしれませんしできれば無視したいですね」
「そうですね無視しましょう、我々の目的は捜索ですし」
蛇はこちらを見ているものの動く様子はなかった、恐らく下にきたやつに飛び付いて噛むか絞めるかして殺すのだろう、あれが不意に降ってきて締めてきたら俺も死にかねないな、気を付けておこう。
位置関係と進んだ道を見てわかるようにそこらの石で木に目印をつけていると武内さんが話しかけてきた。
「丸岡さん、なにかおかしいと思いませんか?」
「何がですか?」
「あの蛇は恐らく落ちて獲物を狙う種類なんですよね、でもそれにしてはここらに獣の気配もなければ獣道もありませんし……」
「確かにそれもそうですね、不安ですし早くここを離れましょう、目印もつけ終わりました、長くここをさまようことになるかもしれませんしそうなると休息がとれる場所くらいは用意しておきたいところですね」
確かにそれはそうだ、遠目にでも動物を見てないし、糞とかの痕跡もないからかなり不自然と言える、それに思ったよりダンジョンが広い、これじゃあ三人で捜索なんてできるはずもないだろう、出口を探すのを目的に切り替えたほうがいいかもしれない、簡単な捜索任務と考えていたから食料もあまり持っていない、切羽詰まる前にあの蛇が食べられるか試しておいた方がいいだろう、いつ倒せるほどの余力がなくなるかわからないのだから。
丸岡達が入ったダンジョンは三海の窟という名前だった、樹海、砂の海、溶岩の海のフィールドが支配するそのダンジョンは非常に凶悪な構成となっていて魔物のみならず地形が探索者を蝕む、そしてこのダンジョンを別の名前で表すのであればそこは試練の窟であった、五大陸から外れる日本にあるこの試練の窟は生半可では攻略できない、なぜなら試練の窟にはダンジョンマスターが存在していてそれが殺されないようにと必死に抵抗するからだ。
そしてその最深部には一人の少女が居た、時はアレキサンダーが喋り終わった時まで遡ることとなる。
ダンジョンの最深部の広間にある玉座の裏に隠れるように扉がありとある少女はその扉の奥の寝室で目覚めた。
黒を基調とした桜の柄がかわいらしい着物に赤い帯を結んだものを着ている少女は寝間着に着替えないまま寝てしまったのか寝相のせいで彼女の絹のような黒髪は乱れ着物はややはだけてしまっていた。
「んんっ」
少しだけ開いた瞼からは意志の強い黒の瞳が顔をのぞかせ少し苦しげに彼女は目覚めた、彼女は起き上がると首を振って呟く。
「何処ここ知らないんだけど……」
何もわからない様子の少女は溜め息を吐き出してからベッドを出ると何故か温かいままのベーコンエッグとパン切れがかわいい丸机に置かれていた、料理を横目に彼女は鏡を見ながら櫛で簡単に髪を整えて着物をちゃんと着直してから簪で髪を留めた。
「また師匠がなんかやったのかなそれともアレクさんかな」
彼女はとりあえずとでも言うように机に着いて朝食を食べ始めた、上品な所作で食べるそれは彼女の品位を飾り立てるものでベーコンの脂で唇を光らせる彼女はいつものように皿を片付けようと食器をまとめて持ち上げると皿の下に手紙が置かれているのを見つけた。
「今度はなんだろ転移したんだろうしとなるとラグエル様も加担してるよね」
手紙にはこう書かれていた。
『おはよう、桜。 今私は日本語で手紙を書いているんだがね大分上手くなったものだろう? さてこれを読んでいるということは今君はベーコンエッグを食べ終わった直後だろうその皿には保温の魔方陣が刻まれているから大事にしたまえ私とアレク特製のアイテムボックスのポーチはちゃんとそこにあるから安心するといい。 さて本題に移るとしようか、今君は地球にいるんだご両親に会いたいだろう? 会いに行くといい、そこから出られたならね。 そこはアレクが君用にデザインしたダンジョンでね、君を叩き上げるために作ったと言っていた、そしてもう一つ。 ダンジョンは氾濫を起こす危険性がある、君はこれを世の中に伝える必要がある。 大丈夫だ桜なら問題なく脱出し家族の元に帰ることが出来る。 あとアレクは世界に新たな力を注ぐと言っていた、力を表示する、そのように念じてみるといい』
「ここが地球? そっか戻れたんだ私」
そう呟くと桜は涙を押し殺しながら泣き始めた、実に何年かぶりの地球に帰ってきたのだと実感した桜は小声で何かを呟きつつしばらく涙を流していたがそのうちに多少は落ち着いたのか涙をハンカチで拭ってから立ち上がり皿をきちんと洗ってからポーチにいれてから刀を左の腰に携えた、刀の鞘には桜の花弁のようなデザインが施されていて着物から刀の何から何まで桜用の物だと見てわかるようになっており刀は桜の高校生準拠の体格に併せて刀身が調整されている。
何回か素振りをしてから桜が部屋を出ると目の前に広がるのは玉座の裏面で部屋の中央に立つとこの部屋が格式高いものだとわかる、よく観察してみるとタペストリーやカーペットに細かい意匠が加えられており赤が目立つように部屋が彩られているのがわかる。
しばらく部屋を観察していた桜が部屋の大きな扉を押すと錆びたような音を鳴らしながら扉は開き桜の目の前には火山の麓のような、溶岩が溢れてやまない奇妙な光景が目の前に広がっていた。
陸路はしっかりと確保されているが巨鬼のような魔物や骸骨のような大きな鳥がその空間を舞っている、上を見上げても暗くて天井がどこまで続いているのかそもそも天井はあるのかすらもわからない。
そこまで見てから桜は一回部屋に引き返した、異常な熱気で肌が焼かれそうだったからだ。
「どうしよ流石に我慢とか出来るようなレベルじゃないんだけど……あ、そうだステータスとかあるんだっけ熱耐性とかあるかな? 『ステータス』」
唱えると桜の前に発光した文字のようなものが並び始めた。
《Name 藤宮 桜 加護:ミラの寵愛、ミカエルの祝福
概念属性【桜】job:blank》
桜がblankと書かれているところをタッチするとそこには幾つかの職業が現れた、戦士狩人魔法使い職人は定番として他にも時空魔法使いや剣士、魔法剣士など様々な職業が桜の目の前に羅列される。
桜は刀の鍔を弄りながら目を瞑ったこれは思考の海に耽っている時の癖だ。
職業を決めたのか桜は職業を時空魔法使いに設定した。
《Name 藤宮 桜 加護:ミラの寵愛、ミカエルの祝福
概念属性【桜】 job:時空魔法使い Lv1
Lv1:時空魔法を取得
時空魔法:時や空間を一時的に操る》
桜は満足したような表情をして魔法を行使しようと慣れた様子で右手を前に掲げた、すると青白い魔方陣が宙に現れてそれは桜を包み込むと桜の手の甲に貼り付いた。
「空間隔膜完了、ラグエル様が使ってるの見ててよかった」
桜はもう一度身だしなみを整えて熱気の蔓延る溶岩の洞窟に踏み込んだ、今度は桜を熱気が襲うことはなく快適な様子で大胆に歩みを進める桜だったが赤熱した金棒を手にした巨人が桜の目の前に立ち塞がる、盛り上がるような赤く照らされているような筋肉と口から湧き出る炎はその巨人の強さを如実に伝えているかのようで桜はそれと相対するも特に気にした様子すら見せなかった。
「まあいいや、【剪定】」
桜はわざわざそう口で発してから地を跳ねつつ抜刀した、不思議と刀の軌跡を桃色の残滓がなぞっていき容易に巨人の首まで跳躍した桜は一息に巨人の首を跳ねた、跳ねたら今度は巨人の胸板を蹴って宙を回ってから花弁が地面に落ちるように柔らかく地面に着地する。
技名を言うのは概念属性の特性を活かすためであり、桜は特段厨二病ではない。
【桜】を象徴する彼女の属性は桜と関係が存在する事象に対する補正を大きなものにする、魔力とは世界を誤認させる力であり世界を騙すための供物として魔力を差し出す、一般的な属性は事象に対して世界が固定の式を用いて必要な魔力を算出するが概念属性はその式が変則的であることが特徴とされておりそれは世界の認知度から魔力の必要量が変化する。
倒れた巨人は溶けて紫色の水晶のようなものだけを残して消えていった、ゴブリンのそれとは異なり拳ほどもあるその紫水晶はその魔物がどれほどの魔力を内包していたかを明確に表している、桜はそれを観察してから魔石をポーチに収めた
「んーあんま強くないかな? この感じだと30も階層を上がれば地上に付きそうではあるけど何日かかるかなあ」
それからも順調に探索を進めていく桜だったがあることに気づいて足を止めた。
「そういえばさっきの部屋ってボス部屋のはずなのになんでボスがいなかったんだろう」
何かに気づいたような表情をした桜は手を前にかざして言った。
「『マスター権限を行使、ダンジョンコントロール』」
桜がそう呟くと桜の前に三面モニターのような三枚の画面が現れてそこには『ダンジョンマスターインターフェース』と書かれていた。
「やっぱり……」
桜がインターフェースの画面をタッチすると画面に文字が浮き出てきた
『桜へ、アレキサンダーだ、ミラと仲良くしてくれてうれしく思う、それとお前を振り回してしまって悪かったとも思っている。 この画面に気づいたのならもうお前がダンジョンマスターになったことは理解していることだろう、仕様は俺があっちで作った人工ダンジョンと変わらない、急で悪いが俺から桜への最後の頼みがある、三年の間そのダンジョンを突破されないように守ってほしいやり方はわかってるはずだ、常にダンジョンにいる必要はない、だが攻略はさせないでくれ、受け入れてくれるなら玉座の間で名乗りを挙げてくれ、言霊を世界に刻み込む魔方陣が組み込まれている。 受け入れてくれないのであればここの守りは自然に任せるためダンジョンをこのまま出て行ってくれ』
目を落として桜はため息を吐くと来た道を振り返って苛立ちを見せながら歩みを進めた、桜はアレキサンダーの性分もミラの性分も詳しく知っている、二人と楽しく過ごした時間が桜の家族のもとに帰りたいと願う気持ちを一時的に抑え込んだ。
桜は玉座の間の扉を開いて玉座の前まで早足で向かうと座るには邪魔となるため刀を腰から外し右手で持つと玉座に着いた。
落ち着くためなのか刀を抱え眼を閉じる、空が晴れるような速度で桜が瞼を開けると目の色が桜色に染まっており瞳の中に桜の花が見えるようだった。
『宣言する、我は世界が代行者、選別する者なり、我が名を此の城に刻み人類が終焉を防ぐを導こう、ここに管理者たる権限を継承し名を刻む、我が名は藤宮桜である』
桜が名乗りを終えると玉座の間が一度だけ淡く光を放った、この瞬間にダンジョンは文字通り桜の手足となり世界で初めて試練の窟のダンジョンマスターが誕生した、そしてこれを機にこのダンジョンは大きく変化していくことになる。
イチオシのヒロイン、時雨桜ちゃんです、異世界帰りの地球人、
アレクさんという人と面識がある様子、いったい誰なんでしょう。
実は物語の構成としては万幾ら重ねて届かずともは三部目のような感じです。
ちなみに桜ちゃん激強です