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万幾ら重ねて届かずとも。  作者: ナノマシン
第一章 Beginning of World impact
21/22

仙台ダンジョン攻略『其の五』

 どのくらいのスパンで更新できるか、それが自分の中でわからないんですよね、一週間に一本は少なくとも上げたいのですが。

まあ頑張りますが

 朱色の鎧はそれそのものから粒子が舞っていて武者は既に二の太刀の動作を始めている。

 斜め上から斜め下まで振り抜く圧倒的な筋力で押し通すような剛の太刀をセレドニオはまたもや肉薄して根元から抑えることで初動で潰す、武者もやられっぱなしではない、後ろに下がりつつ放つ巻き込むような薙ぎはセレドニオに回避を強要する、そして私は旗だけをその場に残していた。


 空を駆け、投げ落とす水晶の雨。

 威力重視の魔力弾で構成されたその水晶は武者を爆破し、地面を抉り、瞬間的にその場の魔力濃度を跳ね上げた。

 魔法は妥当性、魔法は魔力の多い場所でより強力に

 セレドニオの太陽魔法が空間内の魔力を圧縮して小さな太陽を創り出して、武者を焦がして溶かす。


 油断せずに太刀を武者に向けると霧が晴れるよりも早く武者の太刀が矢と成して私を穿ちにきた、反射で太刀を受け流すと武者が籠手で私に格闘を挑んできた、こちらに来る際に見せたあの跳躍力は健在で鎧は傷ついているものの動きに影響はないらしい。

太刀を放して大きめのナックルを装備して武者の攻撃を受け流しているとセレドニオが武者の背後を取る、だが武者はそれをものともしなかった。

 斬りつけても奴はひるまない、ただ私の命の輝き、それだけを狙っていた。

 圧力、受けたこともない衝撃の連続、どうしても足りないリーチ、速さ。

 私は重い一撃を腹部に受けた、吹き飛ぶ身体は地面を跳ねる、武者は容赦なく追撃を続け刀を構えた、だが位置関係が変わったことでセレドニオは私の落とした太刀を取り、大きくそれを振った。


 その太刀は、魔力刃の太刀、通常の魔剣としての力を抑える代わりに発動時の一撃が強力になる、一撃を追い求めただけの太刀。

 セレドニオが斬りつけて、武者は背中を取られていたというのに反応して片腕を犠牲にそれを耐えた。

 宙に舞う左腕、武者は残った右手で私に刀を投げる、腕でそれを受けたけど刃は深くまで刺さった。

 武者は無手になりその場から離脱しようとしていた、セレドニオはそこまで速くない、武者に、逃げられてしまう。


「暗く、わからず。 永く、わからず、導のないことを知るままであれ『無明』」


 リザの魔法だ、詠唱を必要とするほどの魔法、それは効果対象の視覚と平衡感覚を奪う。

 武者が足元を狂わせ転倒するとセレドニオが武技でレイピアを太陽のように鮮やかに発光させ、幾度も突き刺した。

 すると武者の肉体は朽ちていき、いくらかのドロップアイテムを残した。

 私の記憶はそこまでで。


 気づいた時にはベースキャンプの医療テントの中で横になっていた、ずいぶん大きな切傷だったはずだけどアンナの治癒とポーションによる治療のおかげで傷跡もなく治っていた、ただ血は回復していないようで、少しふらつく、これだと今日は難しいかもしれない。

 私が起きたことに気が付くと、アンナが私に気づいて軽く診察した後、ウィンを呼んでくるといってテントを出て行った。

 少しして、テントが開くとアンナがウィンを連れて戻ってきた、ウィンの表情はいつも通りで笑顔のままだった、でもベッドのそばの椅子に腰かけると私の手を両手で握って、よかったとだけ言った。

「ごめんね、二人とも、どうなったのか聞かせてもらってもいい?」

「結和さん、今日は三日目のお昼です」

「探索はどうなってる?」

「探索は第一部隊ギガントから二人引き抜いて昨日のメンバーで4階層だけ探索してもらってる、無理をしなければ問題なく探索できると思う」

「そう、よかった」

「全然良くないよ、結和、君は友人としてみても、能力としてみても大事な存在なんだ、本当に気を付けてほしい」


 指揮官が一番に倒れるなんて、確かにあり得ないよくない行為だろう。

「あれが最善だったの、でも反省はしてる、もっといい手段もあったかもしれない」

「結和は温存しすぎだったんじゃないの? 特殊武技を使えば結和があんなになる必要はなかったかもしれないよね、正直失血がひどすぎて最悪の場合、もう目覚めないほどだったんだ、アンナがあそこにいなかったらまず助かってないよ」

「プレッシャーに飲まれてたのかも、似たような敵に会った時のために最適な動きは考えておかないとね」


 ウィンは私を仕方のない奴を見るような目で見ると、頭を軽く撫でてから話題を切り出した、寄こしてきたのはUSBで中に入っているのは今回の研究成果だろうかよくわからない検証データなりを弾いて結果のまとめを見てみると中々面白いことが分かったようだった。


 そもそもちょっとした魔道具があったところでそこまで解析ができるわけでもなし、でも一部の職業には解析やそれに準じるスキルがあるためそれを上手く使ったのだと思う。


 特に火縄銃を使う魔物が落とした火薬のようなドロップアイテムを解析していたようで、その結果これは性質的には当時の火薬として妥当程度の性能しかないもののこれを構成する概念的な元素が面白い、爆発や火、土はわかるだがこれは死、もしくは冥、或いは輪廻だろうかそのような元素が内包されていたと検証結果にはある。

「んとつまりどゆこと?」

「全部見てくれ、全部のドロップアイテムにその属性が乗ってる、つまりこれはこのダンジョンとしての性質もしくは魔物の特性だ」


 そういえば職人系と思えないような職業名の日本人が職人班に加わっていたことを思い出した、実家が神職で本人もそれに携わり補佐してるから発現したんだろう、その職業の名前は『陰陽士』、素材を組み合わせて式紙を生み出すことが出来るので職人系と分類されているその職は素材の自然的な属性を基に式を作る、そのためそれらを視る目も備わっておりどうやらそれが死を検知したらしい。


「彼女しか生や死みたいな特殊な属性を拾ってくることはできないからデータが足りてないけど簡単な式紙を作ってもらったけど納得したよ、もう式紙に戻っているようだから今は見せられないけどね。」

「ダンジョンの生物全部が死の属性を持ってるってことはないの?」

「多分ない、いや微量にはあるだろうけど素材として利用できるだけのエネルギーは特定の素材しか持ち合わせてないと思うよ、話には聞いたことあるしね死属性は、死を研究することで寿命をなくすとか死者を無くすとか大層なことを言ってるカルトとか研究者がね結構な量居るよ、でも死を扱える職業は少ないからあんまり進んでないんだけどね」



 既知の属性ではあるけどそれなりに希少なのね、というか属性として発現するレベルってことはもしかしてここの魔物って……。

「もしかしてあいつらゾンビなの?」


 私が恐る恐る聞くとウィンは瞳を丸くしてから笑いながら言い聞かせるように言う。

「いやいや、見ただろう? あいつらはゾンビじゃないしアンデッドでもないよ、まあなんで死属性が着いてるかはわかってないけどとりあえずそれは気にしないでおこう、それより大事なことがあるんだ、次の資料を見て」


 二つ目の『言われてから見るようにね』という題名のフォルダを開いて中身を見るとそこには設計図が乗っていた、これは銃弾だ、それも素材は全てこのダンジョン製。

 予想される威力、仮に量産するのであれば必要になるアイテムの量や施設の数々なりが書いてあり量産するのは現時点では難しいと言わざるを得ない。

「これを使って倒してそれで弾を量産とかは難しそうね」

「うん、ちょっと微妙だよね、じゃあ次のを見て」


 ページをめくるように画面をフリックすると強装弾という名目で一つの弾丸の設計図が書かれていた、必要になる素材の量がそれなりに多い、まず金属製の素材と火薬系の素材を別で混ぜて死属性の濃度を高めた死属性が濃縮された素材で弾を作るのだそれにかかる設備と費用は凄まじい、だが予想される威力とその効果には目を見張る、そこらの魔物なら一撃で魔力を削り切れるだろうし撃ち込まれると撃ち込まれた箇所から細胞が壊死していくらしい。

「まあ強いけどコストがね、それに銃は日本じゃね……」

「でもさ、これが散弾銃になったら凄くない?」


 近距離から飛来してくる大量の死の弾丸、一発でも身体にめり込もうものならそこから壊死していき内蔵の近くでそれが起きれば死は必定。

「いやまあ確かに凄いけど……」


 実用性には少し欠けるだろう、でもこれが研究が進み低コストで量産できるようになったらどうだろうか、それはきっと凄まじい武器になる。

「これだけでも日本に来たかいがあったと思う、この成果があればもっと人員を引っ張ってくることもできるだろうしそうなると日本に支部を置くことも考えたほうがいいかも、いや、作るよ僕たちの会社の支部をここに」


 流石に驚きを隠せない、死という属性が何やら凄そうなのは資料を見ればある程度はわかる、でも支部を作るほどなのだろうか、いや多分そうじゃないダンジョン市場が空白地帯になっている日本の現状に目を付けたのだろう、でもそんなのは多くの人間が気づいているだろうしタイミングを間違えるとただの泥船になってしまうだろう。

「本気? 海外の市場も全然埋まり切ってない上に人員も別に大量ってわけじゃないんでしょ?」

「うん、それを考えてもかな、政治的なコネも使ってでも他の企業に先を行きたい、日本にはPMCみたいな企業が存在少ないしねそれに眠ってる人員を発掘すれば社員数をかなり伸ばせると思うんだ」


「……もしかして最初から狙ってた?」


 ウィンはいたずらっ子のような笑顔を見せた。

「まあね、だって市場を大きくしないとこのままじゃダンジョンの攻略なんかできない、米軍がダンジョンを無理やり攻略した話は知ってるでしょ? あれでさえ何百人って規模で編成したフル装備の軍人が必要だったんだ、もちろん今ではもっと少人数で行けると思う当時はjobの分析が甘かったしね、でもそれからアメリカはそれと同じことをしてない、なんでかわかる?」

「知ってるわよ、死んだんでしょ100人以上が」

「うん、ボスが強すぎてね勿論得られたデータや魔道具の類にこれは秘密だけどボスドロップこれらは本当に魅力的なものだった、でも毎回そんな犠牲者は出せないしPMCもそんな依頼は受けない、唯一ボスの傾向とか情報を手に入れられたそのダンジョンも崩壊しちゃったしほんと散々だったみたいだよ」


 それはよく知ってる、当時ニュースでもほんとに話題になったのだから、ていうかまだ事態は終着してない大統領が必死に火消しをしている最中だ、まあ頑張ってるけどあれだけ犠牲を出してしまえば次の選挙に勝つことはないだろう、日本なら不信任決議が発生してもおかしくない、戦争でもなく情報を秘匿した上でいきなりそれだけの被害を出したというのだから。

「まあそれはともかくこれ返すわね、あんまりやりすぎないでよ?」

「わかってる、轟さんは怒ると怖いからね」

「そんなこと思ってもいない癖に」


 結果的にみると、ダンジョンの探索は大成功、みんなが帰ってくるとたいそう心配と説教はされたけど私以外に大けがした人はいなくて本当によかったと思う。

 私は怪我人だからとウィンと轟さんの交渉の場には呼んでもらえなかったけど、お見舞いに来たウィンの顔と轟さんの顔を見たらその結果は一目瞭然で私たちの夢が近づきつつあることを直感した。




評価とコメントくれたら喜びます、多分投稿頻度も多少なり上がります。

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