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万幾ら重ねて届かずとも。  作者: ナノマシン
第一章 Beginning of World impact
20/22

仙台ダンジョン攻略『其の四』

2023に作成してストップさせていた作品をなぜ今更投稿再開させることになったかというと、まずこの作品を書くのに必要な技能の習得が少しずつできてきたというのと、この作品が好きだからです。

読者の皆様にも好きになってもらえるよう、今後も頑張ってまいりますので応援お願いします。


 翌日私はリザとセレドニオに第六の支援職を入れて指揮分隊を編成し第二部隊アトラス第三部隊イロハ第五部隊マギアの合計18人の構成で第三層から第四層へと降りた、通路は依然変わりなく城下町みたいな感じだ。

 とりあえず偵察用の機材を使うべきかな、手綱は支援職の二人に担当してもらおう。

「アンナ、スカウトボールで偵察をルベルトはその補助、戦闘の際も頼ると思うけど二人ともよろしくね」


 白人の二人に自走するボール型の偵察機材を渡すとアンナはそれを地面に置いた、するとアンナは腕に着けている小型ディスプレイ付きのデバイスのキーパッドを操作するとキャリードッグに掛けてある箱から引っ張られるようにケーブルが伸びていくこのケーブルは200mほどの大きさだったはずだ。

「任せて、一応機材の使い方はわかってるから」

「俺は知らねえけどな」

「だからアンナに任せたの」


 気分を盛り上げつつ前進しているとアンナが映像を私に見せてきた。

「どうしたの?」

「新しい奴ね、今見える限りでは一人だけどどうする?」


 そこに映っていたのを一言で表すなら武者だろうか? 豪奢な朱色の鎧に顔は黒い布のようなものが当てられていてよくわからないよく光る紅い眼が不気味すぎる。 身長は2mを越してる腰には太刀みたいなのが一振りに刀が一振りで交差するように挿している。

「強そうね、でも戦っておかないと脅威判定もできないし」


 少しだけ悩んでいるとセレドニオが割り込んできて恐怖を煽るようないつも通りの怖い顔をして私に言う。

「俺がやる、いいな?」

「いや護衛が動くのはダメでしょ」

「相手は一人だ、なら一番強い俺がやるべきだろ、第二を残しておけば何かあっても対応できるしな罠じゃない保証がない」


 まあ一理はあるかも知れない、ウィンに聞いた限りでは魔物に食いついたら挟み込むように一気に寄ってくる迷惑な魔物もいるというし。

「わかった、じゃあお願いね、一応バフはつけておくから」

「助かる」


 私の旗の効果とルベルトの魔法でバフが掛けられた、アンナは治癒系の職業だからバフはあまりないけどルベルトは違う、ルベルトはかなり有用なバフを使うことが出来て、その内容は因果を誘引するというもので今回は回避、命中を手繰り寄せるバフを付けたらしい。

「相変わらずルベルトのバフは実感がわかないな」

「さっさといけよ、バフが切れるぞ」

「だな、じゃあ後ろには気をつけろ撤収の準備もしておけよ」

「あいあい、じゃあ頑張って」


 セレドニオを見送ると私は周囲の警戒を指示してアンナの小さな画面を頼りに戦闘を見届けることにした。


 男が武者と向き合った、距離は10歩分ほどと遠い距離に見えるが二人には一歩分の時間があれば優に届く距離。

 男の身長は成幸と同じ程度だが武者は2mと半分ほどと差は大きい、その上武者の武器はその身に大きさを合わせられていてこれまた男には不利な点になるだろう、その上、男の武器はレイピアが一振りと腰に挿してある短剣のみどちらも攻撃受けるのには適さず受け流すのも難しいだろう、だが男はそんなことは気にもしていないとばかりに冷淡な表情を浮かべている、仕事中はまるで感情を見せない黒の戦士は脱力したようにも見える状態で短剣の切っ先を武者へと向け……。


 武者が踏み込む、右足から左足と風が遅く感じるほどの速度で踏み込みそれと同時に太刀を思いきり振り切る乱暴にも見える太刀の居合切り。

 風より速い疾速の居合、だが男のその眼は剣筋を確かに見切っていた


 男が胸中で叫ぶその武技は居合と重なりお互いを弾く結果となった。



 弾かれる刀に対して男は即座に態勢を整えて肉薄する、腕の筋を狙って捉える裂くような斬撃を畳みかける、武者は太刀を乱暴に振りぬいて男を振り払う、再び距離が開くと武者は太刀を鞘に納め刀を引き抜いた。

 それは見事な刀だった。

 妖しい紫の光が淡く照らすその刃は無骨ながらその名高さは見てとれる、鉄さえ絶つのではと思わされるほどに鋭い刃、しかしてそれを見せびらかすつもりはないとばかりに飾りの類は一つもなかった。

 

 あまりに自然すぎる所作は人の眼に留まることもなくただ風のように動き、男を斬りつけた。

 男でさえも反応がやや遅れるその歩法に驚愕している暇もなく両者のやり取りは男が劣勢になる形で展開されていく男はレイピアを構えると唱えはじめた、それは武技だ。

 特殊武技の詠唱は言語の差を飛び越えて脳に語り掛けるように意味を届けてくる。

「朱く照らす、白く燃える、総てより偉大の一つをこの時に『白輪』」


 レイピアの先が強く、ただ白く発光する、セレドニオのジョブ『太陽戦士』の特殊武技が放たれる、極光を借り受けたその熱波と衝撃が通路を揺らすと武士はその跡形さえ残すことはなく、欠けた紫の刃のみが残された。

 セレドニオが戻ってくると彼は難しい顔をして私に聞いてくる。

「結和はあれに勝てるか?」


 あの武士は身体能力が高く、耐久力もある、検証できてないけど刃も相当なものに見えた。

「難しいわ、少なくとも余裕はない、魔力も温存できないと思う」

「じゃあどうする、あの武士が出てくる度に武技や魔術で吹き飛ばすのか?」


 それは魔力が足りない、あの武士が出てくる頻度にもよるけど戦ってるときにあれと挟まれたら窮地に陥ることになる、とりあえずあの武士がよく出てくる魔物なのかとか調べることは山ほどもある。

「探索は続行しますが、武士が出てきたらセレドニオと第二部隊アトラスで撃退します、挟撃された場合は私とセレドニオで武士を抑えてリザと第二、第五で片方を撃退します。では前進」


 それからも接敵自体はしたけどその多くが第三層と大して変わらず弓槍刀銃などの編成だった、ただ数自体は増していて、50人単位の部隊なども散見される、武士とは一回だけ接敵した、絶対数が少ないようでこの頻度なら致命的な問題にはならないと思う

 そのまま二時間ほど進んでいたら大部屋があったためそこで昼休憩を取ることにした、人数が少ないうえに敵の数も増えたためみんなの負担のかかり方が大きい、魔力も予定より大目に消耗してしまっているように見える。

 アンナに頼んで魔力と体力の回復を促進する魔方陣を展開してもらう、アンナは儀式的な手順を踏んで魔術を行使する職業で珍しく魔力の回復まで行える職業だ、彼女がいるだけでかなり楽に探索が行える。

「リザ、セレドニオ相談があるから来てくれる?」


 二人を人のいない場所まで誘導すると私は電子タバコを吸いながら今後の行動予定を相談していく、階層自体はもうじき次に行けそうだ、時間もまだ余裕がある、第四階層の地図を埋め終わったら第五まで進行するほうがいいだろう。

「このまま地図を埋めて時間があれば降りたいんだけど大丈夫かな?」

「俺は今回地図を埋めきれなくても五階層には立ち入るべきだと思う、他の時間はこの階層に使うべきだが」

「私もセレドニオに賛成よ、それと私はあの武士の魔物のデータをもっと集めるべきだと思うわね、深くなったら二人とか三人同時に出てくるということもあるかもしれないし」

「安定して倒せるようにってこと?」

「そう、例えば土魔法で通路の幅を狭めてやれば武器を振るうのに苦労しそうでしょ?」

「そうだね、攻撃パターンの記録も必要だし、四階層の地図を完成させる傍ら、武士からはデータを大目に取ろう、最後の一時間は何にしろ五階層の探索に充てる事、これでどう?」

「問題ない」

「いい方針よ」


 それから時間が経って休止を終えると私たちは三時間を四階層の探索に充てて残りの一時間を五階層に充てることにした、武士との戦い方の研究はいくらかできたけど、それでも魔力を使ってしまうことに違いはなく、安定した処理方法はセレドニオと私で対応することしかなかった、第二部隊アトラスの面々なら武士を倒すこともできるのだがそうなると集団への備えがなくなってしまい窮地に陥ってしまう可能性が高い。

「これから第五階層ね、次はどうなるのかしら」

「戦国の兵士がモチーフなのだから刀槍弓銃ときたら馬とか? 役職で言うなら部隊長や将軍っていうのもありそうね」

「敵の数が60を超えるようならこの部隊だと魔力を節約すると対応できないな、怪我人が出るぞ」


 ここで怪我人を出す必要なんてない、今は連携を確かにしてレベルアップを目指す段階だ、消耗を気にする必要なんてない。

「帰りの魔力は残すとして全力で交戦するべきね、交戦したら常に旗を使うわ」

「それなら火力は足りてるから耐久と速度を底上げするべきだな」

「緑3青7で配ろうかな」

「それがいいな、防御面は強化しておいたほうがいい。」


 旗を展開して突入するとダンジョンはその顔を少し変えた、匂いが違う。

「アンナ、魔力計を」

「はいっ」


 アンナが魔力計を起動するとやはり濃度が高いようで上の階層と比べて五分ほど濃度が高いことがわかった。

「結構急に上がるわね、どう思う?」


 セレドニオとリザに共有すると二人は難しい顔をして私に聞いてくる。

「なんでわかったんだ?特に何も感じないが」

「なんで急に?」

「なんだか匂いが違うような気がして、私のジョブのおかげなのかも」


 そう聞くとセレドニオが第五マギアの面々に聞き取りを始めた、違和感を感じたかどうかを聞いているようだがほかの面々は何も感じなかったらしい。これも恩恵の一つなのだろうか。

「とりあえずすすみましょ、似たようなことなら後で聞けるでしょ?」

「魔力濃度が高いと魔物が強くなる傾向にあるのと通路に罠ができる可能性も発生する、気を付けていくぞ、俺は第一の補助に当たる、第三の成幸をこっちの護衛に回そう」

「必要ないわ、指揮分隊の護衛は私でもできる、リザに全体の指揮権を譲渡しましょ」

「わかった」

「いいわよ、安定重視で敵の構成を見ることに注力を向けましょう」


 ダンジョンをさらに進むとざっと数えて50人以上の敵集団を見つけた、構成は盾と短い槍を構えたものが前に十五ほどその後ろに長槍が10そして弓が20、銃が10ほどだ、盾の耐久力次第ではこちらにも被害が出るかもしれない。

 広めの盾を展開しながら旗を有効化するとリザが私の後ろから指示を飛ばした。

第五マギアは多重障壁を展開し前線の面々に防護膜、ルベルトは鷹の眼と回避を第一アトラス第三イロハに付与、第一と第三の成幸は身体強化と武技を使用。 遥人は魔石旋風を敵前衛に、公安の二人は遥人の護衛。レベル5での魔力使用を許可。 各員奮闘せよ。」


 指示を受けるなりそれは筋肉が反射するようになめらかに各隊は動いていく、訓練通りの美しいと感じるほどの多重障壁は条件付けによって一定以上の速度を持つものだけを阻む仕様だ。 そして近接職が敵に向かっていくと遥人の魔石を含ませた暴風が敵の前衛を襲った。


 前からの衝撃には強かったのだろうその盾は後、上、横、前の全方向から肉を抉る。 その盾を恩恵を得られると思っていた槍の魔物らも悲惨だ。

 しかしそう思ったのも束の間、盾の面々が盾を光らせ衝撃波を生み出すと遥人の魔術が崩壊し、空間中を魔石の粉が幻想的に舞った。

 それを境にしてセレドニオがいの一番に飛び出した、繰り出される武技は素手によるもので拳が盾を穿つと一拍遅れて衝撃波が兵を吹き飛ばしその後方にいた長槍まで転倒させた。その次は成幸と第二アトラスの面々で彼らは範囲が広めの武技で兵を圧倒していく、鉄砲と弓の雨は第五とルベルㇳの守りによって抑えることができていた。

 次第に敵の数は減っていき、私たちは第五の敵の編成さえも打倒することができた。

「これは難しいわね」

「ええ、魔力の消耗を抑えながらだと危険ね、障壁も無傷じゃないし、今まで通りなら次の階層まで5回は接敵するわ、階層を隅々まで行くなら10は超すわね、それにあの武士のことも気になるわ、この階層だと強くなってるかもしれないし、そうなったら火力が足りない」

「でも今後のためにもここでは止まれない、いきましょう」


 それから三回似たようなグループと接敵してから帰路につこうと踵を返したら、それは通路の真ん中で存在感を放っていた。

 カメラ越しに見るだけでもその重圧は凄まじいもので、先ほどの武士とはまるで違う存在ということがわかった、感じる魔力の気配が段違いで、既に抜かれているその太刀は私たちを待ち構えていたことを如実に伝えているようだった。

 揺らぐその先から朱い残滓が宙を走り、朱の残像を残しながら武者はこちらに向かってくる、不味いと思った時には逃げることなど許されない、カメラボールを踏みつぶされ第二アトラスが守りを固めるがその守りが意味をなすことはなく。

 セレドニオが短剣を太刀の軌道上に添えてその流れを僅かにずらすことに成功した、その結果武者の初撃は空振ることとなり私はセレドニオと前に出た。

「これは私とセレドニオ、ルベルㇳで倒します! リザ!後方警戒!」


 リザはわかっているとばかりに部隊を動かしてもし武者が突貫してきた場合に備えて第三イロハの面々を私たちの援護兼武者の警戒に当てた。


 ルベルㇳのバフを全力で掛けてもらい私は魔力の短剣をいくつか創ってセレドニオに渡しておく。

「いきましょ、大変そうだけど」

「合わせろ」

この作品を再開させるにあたって、まず作品を読み直したんですが、それでもっと書きたいと思いました。

最初は再開させるつもりはなかったんですが、できるなと思って、それで始めました、書きたいものは色々あってそのどれもがイチオシです。

 だからこれから、長くお付き合いいただければ幸いです。

評価やコメントなどお待ちしてます。

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