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万幾ら重ねて届かずとも。  作者: ナノマシン
第一章 Beginning of World impact
10/22

赤色動き白炎を描く

 私たちは無事に拠点に戻ることができ少し長めの会議を終えてから解散することになった、会議の内容は主に扉の先のことで蜘蛛のような大型の魔物の事や十階層の先はどうするか、それに補給が足りない問題の解決法を模索した、その結果明日から拠点に残している三十人から十人を補給班として連れまわすことになった、これで弾薬も増えるし重量なりの問題も楽になる。

 明日着いてくるのは須藤さんの第七部隊で十時間程度の探索を予定している、流石に十時間もあれば階層を探索しきれるはずだ。


 解散してストレスを解消するように頭を掻くけど全然収まらない、任務もあったしそのあとすぐ会議だったからタバコも吸えてないのだ二人を誘ってすぐに吸いに行こう。


 二人を探して共用で扱う多目的スペースに向かうけどそこに二人はおらず私は近くにいた隊員に聞いてみた。

「ねえ島田と丸岡がどこに居るか知らない?」


 話しかけられた隊員はびっくりしたような感じで驚きながらも返事をしてくれた。

「島田さんと丸岡さんですか? 私は見ていませんね、私は帰還してすぐこっちにきたので来ていたら覚えてるはずですが」

「ありがとう、助かったわ」

「いえ、またなにかあれば!」


 ご飯かタバコかあの二人はどっちだろう仕方ないから一人で吸ってこよう、運が良ければばったりってこともあるだろうしそっちの方が面白いと思う、でもあの二人がいくところなんてその二つ以外に考えが付かない、タバコなら声はかけてくるだろうしご飯にしても共用エリアに顔くらいは出すだろう、本当にどうしたんだろう?


 少し寂しさを感じながら喫煙所に向かうと入口の辺りで騒がしそうにしているのが見えた、なにかあったのかな? 嫌な予感がするしパパっと一服だけしてしまおう流石に一本も吸わずにトラブルに対処なんてしたくない。

 嫌な予感と面倒ごとが起きてそうな現状にもやもやを抱えつつもタバコは私の心を満たしてくれる、メンソールは頭が冴えていく感じがして私的にはすごくいい……ああやっぱりだ無線機から私を呼ぶ声が聞こえてくる、やっぱりなにかあったのだろうちょっとは吸えたしもういいかな。

 吸殻を携帯灰皿に捨てて私は無線に出る。

「こちら11(ヒトヒト)どうした? 送れ」

「こちら47(ヨンナナ)より11(ヒトヒト)すぐに指揮所に来てください基地から伝令とのこと、送れ」

11(ヒトヒト)了解した、すぐに向かう、通信終了」


 不気味すぎる、民間人とかの反感なりゴシップなりを警戒して補給もなしにして警備の配置も最小限にしてるのにわざわざ伝令を走らせるの? どう考えてもおかしい、どっかのバカが戦争でもおっぱじめた? いやそれよりはダンジョンの新しい情報とかかもしれないこちらも送りたい情報があるからついでに持ち帰ってもらおう。

 考えながら歩いているとすぐに指揮所に到着した。

「群青一尉だ入るぞ」


 返事も聞かずにテントに入ると六人の見慣れない隊員がそこにはいた、他にも加藤さんと第一部隊の全員だ、島田も丸岡もこれの対応をしてたからいなかったのね。

「私が群青です、伝令と伺いましたが内容は?」

「はっ、自分は上中一曹であります、目黒より派遣されてきたものです、これをお受け取りください」

 

 上中さんが取り出したものはUSBドライブだった、私はUSBを受け取ると彼に聞いた。

「一曹、貴方の部隊は六人だけですか?」

「はい、帰還の際は群青一尉の部隊に追従するよう言われています」

「わかりました、では端末を読み取りますので全員外に出ていてください」


 全員が指揮所を出て行った後私はUSBを自分の端末に差し込みロックを解除した、情報を横から盗み取ることを防止するためにAR表示されていく情報を読んでいくと相当まずい事態に陥っていことがわかった、これはダンジョンで遊んでる場合ではない。

 私は指揮所を出て成幸と遥斗をテントに入れた。

「この情報は二人にも開示していいものだったの、大変よ、『赤色』が行方不明になった」


 赤色というのは異世界人のセキセイのことだ、日本が確保する唯一の異世界人でダンジョンや魔法などの情報の多くはこの異世界人がもたらしたものだった、そしてそのセキセイが行方不明になったと書かれていたのだ、しかも自分から。


 二人は驚いた顔をしながらも成幸は落ち着いた声で聞いてきた。

「どっちだ?」

「自分でよ」

「それで僕たちはどうすればいいの?」

「そう続きね、赤色は南極に行くと自分から言ってたらしいわ」

「南極にどうやって行くんだ」

「いやまって、南極だよねそれは不味いよ」

「そう、南極は五大陸なの」


 そうなのだ、セキセイがわざわざ南極に行くとすれば試練の窟しかありえない、セキセイは地球の神になろうとしてるのかもしれないのだ、流石にそれは許容できないとして私たちに情報が回ってきた。

「今赤色は何処に?」

「何時間も前の情報だけど渋谷らしいわ、喫茶店でケーキを食べてるみたい……画像見る?」

「いやいい、もうどうなるかは知ってるからな」


 セキセイはとびきりかっこいいのだ、しかもそれがコスプレのような黒い軍服を着て街中を歩くものだから目立って仕方がない、外を出歩けばたちまち写真をねだられるし女の子に連れていかれそうになる、ただセキセイはそういうのに興味がないのか写真やお茶など遊びには付き合っても夜の遊びに精を出す様子はないらしい、まあだからハニートラップの類も効かなくて困ったことになってもいるけれど。

「そう、まさにいつも通りの様子らしいわ、だからこそ面識のある私たちの部隊が近寄って目的を探るようにって書かれてる、ただ日本に留めようとはしなくていいらしいの」

「それはなんでだ?」

「やりたいようにやらせてれば好感も稼げるだろうし仮に南極の試練の窟を突破できたらそれはそれで収穫だってことらしいわよ」

「なんだそれ」

「いやもうこの際そこらへんはいいでしょ、問題は今の作戦だ、作戦は中止になるの?」

「そうなるみたいよ、全部隊はすぐに帰投するようにって書かれてたわ」

「じゃあ僕は加藤一尉と撤収の準備を進めてもらうよ、残念だけど寝ずに今すぐ帰ろう」

「そうね、こうなるなら十階層の奥を見ておけばよかったわね」


 それから私たちは撤収の準備をすぐに終わらせて出発した、伝令の六人はかなり強くて第一と肩を並べられるほどだ、多分私と同程度のレベルだと思う、特殊な職業を持っているのかもしれない。

 順調に上がっていきダンジョンを出ると外はもう真っ暗で見張りの歩哨と侵入防止用のライトが私たちを照らした。

「もう23時ね、急いだだけあって早い帰還ではあるけど目標は何処にいるのかしら」

「おい結和、あの車だろ」


 成幸に言われるまま少し遠くを見るとそこには私たちにとっては見慣れたハイエースによく似た車が止められていて私たちは四人で車に向かった。

 私たちが向かってくるのがわかったのか車の後部のドアがスライドするように開いていき私たちを迎えた、それからすぐに特に挨拶もなく車は走りだしそれと同時に運転をしている男が声をかけてきた。

「とりあえずお前ら服を着替えろ隊服は脱げ、ここからは私服装備でいい」


 両隣には男が一人と女が一人、だけど前にも男が二人……いやまあ仕事だから仕方ないんだけどなんか納得いかない、いうてもまあ仕方ないから座席の後ろからスーツケースを引っ張り出して私は着替えながら言う。

「そこはすまないがくらいの言葉はあってもいいんじゃないですかねえ、轟さん」


 私に言われて気が付いたのか轟さんは言い直してくれた。

「そうだな、急にすまない、知っての通り問題が発生した隊服の端末はここに置いていけ今回の作戦に必要な情報がつめこまれた端末をスーツケースに入れてある」

「いやそこじゃないんですけどね……まあいいんですけど」


 私たちは着替え終わると普通の大人のような格好になった、成幸は少しチャラそう、遥斗は好青年、私と田上さんは二十代辺りのギャルかな、いやまあ若い女の子なんてこんなもんでしょ、だからそれはいいとして端末の中の情報に問題があった。

「ちょっと轟さん、これどういうことですか!?」


 私は驚きながら端末の情報を見ながら言うと轟さんはため息を吐いてから言った。

「声が大きいぞ俺も詳しくはわからない、だがこれが対象の目的だったのかもしれん」


 私が驚いたもの、それは青色のきらめく水晶に覆われた国立の自然公園だった、多分これは衛星写真とドローンの画像だと思う、上から見る限りでは青色の水晶が柱のようになっていたり木を象ったりしている、そしてその中でも飛び切り目立つのは真ん中の大きな深い青色の水晶で造られた神殿のような構造物で神殿の階段の一番上にはセキセイと白い髪と白いワンピースに黄色い目の少女がいて少女が笑顔になっているのがわかった。

「この少女は?」

「わからん、そもそもこの神殿ができたの自体がついさっきだ、少女自体は四時間ほど前から確認している。」


 追加で添付されているファイルの名前はwhite girlとなっていてそのファイルには先ほどの少女の監視カメラの切り抜きの映像や盗撮なりの画像が入っている。

 少女は中学生くらいに見えるほどの身長で長い白い髪と蜂蜜の海のような眼が特徴的、青色の水晶が付いたネックレスをしていて黒いシャツブラウスと黒い帽子、ピンクのショルダーバッグに黒のブーツとスカートを着ている、この時点では白尽くめというわけでもないらしい。

「かわいいじゃないですか」

「そんなことは問題じゃない、次の画像だ」


 次の画像は喫茶店で少女とセキセイが出会い、談笑しながらお茶を嗜む画像なりだった、これだけだと特に問題はないけどなんとなくわかった。

「このためだったんですね」

「ああそうだ、おそらく対象はわざと目立つように行動して自分の居場所を知らせていた、そして次の画像だ、これはかなり前の画像だが白色の少女とセキセイが街を歩いている写真だ調査員はいつものことと考えて写真は提出したものの特に気は留めていなかったみたいだ」


 私が唸りながら考えていると遥斗が何かを聞くようだ。

「やはり異世界人でしょうか? これは桜さんにももう一度話を聞いてみなければならないのでは?」

「その通りだ、その任務は別の部隊が穏便に進める予定になっている、とりあえず我々はなぜ国立公園にこんなことをしたのかその理由と少女の正体を確かめなければならない、ちなみに君たちは私服だ、発砲は固く禁じる」

「「了解」」

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