旅立ちとは
さらば、生まれた街よ。
さらば、全ての世界は此処である事。
それは変わらずに、俺は街を出て行く。
ねぇ、楽しかったよね。あの魚屋の親父さんはいつも元気で。
そういえば、そんな事もあったっけ? もう大分、前の話
俺が家出してさ迷ってる時、商店街の人達はちゃんと話聞いてくれて
本当に嬉しかったんだよ。まぁ、そんな事件は三回くらいで止んだね。
いろいろ、思い出は溢れるくらいで
今、居ろ。そんな父の言葉を越えて
俺は街を背負って行く。
さらば、生まれた街よ。
そこには愛があって、繋がりがあった。
さらば、育った故郷よ。
あの商店街を走り抜けて、始発の電車を目指す。
なぁ、皆は俺がいなくなってどう思う? 寂しいかな? 哀しいかな?
その他、いろいろな感情があるけどさ、どうか「嬉しい」でありませんように。
母さん、父さん、今回の家出はちょっと違うけどさ、まぁ、聴いてよ。
こんな詩で、へっぽこなメロディーで、それでも想いが乗った唄が
今、此処に有るからさ。
あぁ、こんな時がくる事は分かっていたけど……
あぁ、どんな時だってこの時の事を思い出して。
さらば、生まれた街よ。
そこには愛があって、繋がりがあった。
さらば、育った故郷よ。
今日はこの街の為に、商店街の為に、住民の為に
歌われる唄が流れているよ。
さらば、生まれた街よ。
さらば、全ての世界は此処である事。
それは変わらずに、俺は街を出て行く。