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美味しいものの前では全てが無意味

作者: ☆☆☆

ただ少女が魚食ってるだけです。

「お嬢様〜!どこですか〜!」


メイドの声がするけど私はそれどころじゃない。

うん、多分、転生した。

ところどころ記憶がぶつぶつ途切れてないけど、ある程度覚えてる。

前は日本で生まれ育ったごく普通の人間だった。どんな人間関係だったのか、なんの仕事をしてたのか、はっきり覚えてるところもあれば、ぶつっと記憶がないところもある。趣味だったお菓子作りとか料理とかも朧気。ただ、「趣味だった」という記憶はある。うーん、普通こういうのってチートとか俺TUEEEEとかのためにはっきり覚えてたり、乙女ゲームの世界だったりするんじゃないの?私の中に一切そういう情報ないけど。


…まぁいっか。


別に今思い出したからといって目を回して寝込んだり、何か悲しい記憶が蘇ったり、転生の時にありがちな神様と出会ったという記憶もない。人格が混ざって〜とかいうこともない。なんか珍しい物語を見たなくらい。

うん、別になんの問題もないな。

そう頭の整理をつけて、レーベン・エステリーベ、3歳は隠れていたベッドの下から出る。


「お嬢様!」

「…おなかがへったわ。」

「お腹が減ったわじゃありません!そんなところに隠れないでください!」


ぐちゃぐちゃの髪の毛でベッドの下から出てきたこの娘、お転婆じゃじゃ馬娘と名高い由緒正しき公爵家の令嬢である。


「だって、じゅうたんがきもちよかったのよ。」

「だからってベッドの下に潜り込まなくても!」

「だっていごこちがよかったの。」

「…居心地なんてどこで覚えてきたんですか……」


はぁ…とため息をつくメイドは生まれた時から私についててくれるアリッサである。男爵家の令嬢で次女。下にたくさんの妹弟がいて、面倒見がいい。この間妹弟が何人いるのか聞いたが、多すぎて正直あまり覚えてない。そしてこの世界のこともあまりわかってない。わかるのはなんだか偉い貴族で、お母様とお父様とお兄様がいて、習い事が多くて、ご飯が美味しいことくらい。いくつ国があって、とか、この世界の成り立ちはこうで、とか全く知らん。ついでに興味もない。興味があるのは今日のご飯くらい。だって3歳児だもの。


「ありっさ、きょーのごはんなに?」

「お嬢様、動かないでください」


どこからか櫛を取り出して髪を整えてくれてるアリッサをぐるんと見ると、顔を前に直される。むぅ。


「今日の昼食は魚だと聞いております。」

「ふぅん。でざーとは?」

「プリンです。」

「ぷりん!」

「お嬢様!」


喜びに飛び跳ねようとしたらアリッサに肩を押さえつけられた。むぅ。


アリッサに髪とか服とか諸々を整えてもらって、お昼ご飯。


無駄に長い廊下を歩いていくつかの扉の前をすぎる。煌びやかな扉を開けると、10人は座れるだろう大きな机がある。見渡すと、お母様とお兄様、そして珍しくお父様がいる!


「おとうさま!」

「レーベン、今日も元気いっぱいだね」

「ふふ、淑女たる者、大声を出さないのよ」

「僕の妹は今日も可愛いね」


お父様はモノクルをかけている金髪の美丈夫。穏やかな笑みがとても似合う。今日も色気がすごい。

お母様はちょっとつり目の美人さんで、青髪をしてる。マナーとか口調とか厳しいけど、でもね、とっても優しいの。あとね、プロポーションがとってもいい。お父様と並ぶと、こう、見ちゃいけないものを見たというか、見ただけで顔が赤くなるというか、とにかくすごくお似合い。その子供のお兄様もとっても美少年。キラキラしてて、ふわふわで天使様みたい。お兄様は2歳年上で、勉強も剣術もすごいんですって!自慢のお兄様よ!…ちょっとシスコン気味だけども。


「レーベン、ご機嫌だね」

「おにいさま!だってきょうはおとうさまがいるんですもの。」

「今日は午前中だけお城だったんだよ。」

「おとうさま、じゃあこのあとはずっとおうちですか?」

「もちろん。」


その言葉に飛び跳ねそうになるほど嬉しい。


「レーベン、とりあえず席につきなさい。」

「はい、おかあさま。」


にこにこしながら席に着くとお兄様もにこにこしてる。


「かわいいな、天使みたいだ。」

「…?おにいさまのほうがきれいなのでてんしです。」

「レーベン…!」

「あぁ…っ!」

「リーベ、しっかり。」


お母様がなんだか上を向いて悶えてるけど、私はお腹が減りました。お昼ご飯まだかな?使用人さんに目を向けるといい匂いと共に扉が空いて料理が運ばれてくる。今日は焼き魚みたい。家族でご飯の前の祈りを捧げて頂く。ひとくち食べると、じゅわっと魚の旨みが口の中に広がる。

ん〜!おいしい!脂がたくさん乗ってる!

ぱくぱくと食べ進めるけど、半分くらい食べ進めたところでお口の中が重たくなってしまう。

うーん、柑橘系が欲しいなぁ。


「ねぇねぇ、ありっさ」

「はい」

「すっぱいかじつはなぁい?」

「…確認してまいります。」


近くにいたアリッサに声をかけると、何も言わずに厨房に行ってくれた。


「どうしたの、レーベン」

「おにいさま、すこしあじにあきてしまったの」

「…?…残してもいいんだよ?」

「いいえ、おなかはまだへってますの」


訝しげに尋ねるお兄様に自信満々に答える。3歳児の食欲を舐めないで欲しい。おいしくお腹いっぱい食べるんだ!

しばらくするとアリッサが戻ってきてくれる。どうやら何種類か持ってきてくれたようだ。


「ありっさ、どれがいちばんすっぱい?」

「…これですね」

「じゃあコップにしぼって!」

「…お嬢様、お言葉ですがそのまま飲むのはおすすめしません。」


自分の食べかけのお皿を突き出すのもどうかと思って、コップに絞ってもらおうとしたが、どうやら誤解させたらしい。


「ちがうの。これにかけるの。」

「…お魚に…ですか…?」

「そうなの!」


ふんす!と私が意気込んでアリッサにお願いすると、どうなっても知りませんよ。という顔をしながら少し離れたところで果物を切ると、言う通りにかけてくれる。


「それくらいでいいわ。ありがとう。」

「…いえ。」


なんだか半分諦めた顔をしながらお皿を出してくれる。前世で言うレモンに似た香りを堪能しながらひと口食べてみる。

うん!大正解!最初は脂のってて美味しかったんだけも、味に飽きちゃった。ちょうどよくさっぱりしておいしい!


「…レーベン、それ美味しいの?」

「はい!」

「……僕のにも頼む。」


静かに見守っててくれたお兄様もレモンをかけてもらうことにしたらしい。


「…なるほど、さっぱりして美味しいね。」


でしょでしょ〜!お魚とレモン美味しいよね!

にっこにっこしながら返事をしてしまう。


「…レーベンは本当に美味しいものが好きだよね。」


少し呆れた視線をお兄様から感じるけど、美味しいものの前にはなんでも無力なのです!

最近始まった地理のお勉強は苦手だけど、お野菜とかお肉とかチーズとかの産地は覚えたよ!


お母様とお父様は顔を見合わせていて、アリッサからは呆れた視線が飛んできてるような気がするけど知らな〜い。


お魚美味しい!


初投稿です。

もし皆様の評価が良いのであれば連載にします…。

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