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黒の皇子と七人の嫁  作者: 野良ねこ
第十章 嬉しい悲鳴をあげた大森林
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38.魅力ある女性

 手のひらほどの短い棒を口元に近付ければ、王宮前広場に集まる全ての者達へと声が届く。

 彼が握るのはサルグレッドの御前試合の時にも使われていた魔導具 〈マイク〉で、恐らくドワーフ達を介して人間の造った物が流れ流れて来たのだろう。



⦅我が獣人王国の王座は代々国王の指名で受け継がれて来た。しかし二十七年前、皆の知る通り私の娘であるアリシアは、人間達の暮らす世界へと駆け落ちをし消息を絶っていた……⦆



 演説を始めたセルジルは日常的に目にするエロジジィではなく、風竜の社で見せたような国王らしい姿。いつもこの感じでいてくれたら好感が持てるのに実に残念な人だ。

 出されたお茶を飲みながら、俺達客人用に特別に用意された広場の見渡せるバルコニー席でのんびり聞いていれば今更ながらに疑問が湧いてくる。


「なぁ、フラルツは殆ど味方みたいなもんなんだろ?でもアルミロって相当な権力を持ってるって話だったけど、そんな奴相手にアリシアは勝てるの?」


「姫様は聡明な方です。私には分かりかねますが、きっと何か策がお有りなのかと思います」


 すかさず答えをくれたのは、アリシアが呼び寄せた族長達の世話を統括するメイド長のメアリさん。


 アリシアの事を聡明とは言うが、彼女自身もやり手のようで “オイタ” をする可能性のあるドワーフの二人とエルフの族長のところには、色香をムンムンと漂わす明らかに毛色の違うメイドさんを配置し対策は万全の様子。

 自分の仕事だとばかりにメイドとして動くコレットさんを受け入れ手駒に加えるなど、他所では見たことのない光景に、要所要所でその手腕が見受けられる凄い人だ。


「改めてこうしてみると、ラブリヴァとは大きな国なのですね」


 かけられた声に振り返れば、柔らかそうな双丘に付けられた白い貝殻の胸当てが目に入る。

 いかんいかんと慌てて視線を上げると、そんな事は気にもしないとばかりの笑顔で、青い髪を掻き上げるセイレーン族族長マルティーアさんの姿があった。


「人数は多いが、その分食料のやり繰りが大変らしいよ?俺も客として贅沢させてもらえているが、それを聞くとなんだか申し訳なく感じる」


「まぁ、なんと心優しいっ。人の上に立つ者とは、常に下の者の事を考えなくてはなりません。それは人数が多くなればなるほど目が行き届かなくなり難易度を増します。

 私はアリシア様の事を良く存じ上げませんが、レイシュア様のような方がお側にいらっしゃればラブリヴァも安泰ですね」


 急がず、それでもすかさず椅子を用意したラブリヴァのメイドさん達は優秀だ。

 これもメアリさんの為せる技なのかと改めて感心したのだが、彼女の隣に座った娘レオノーラの背後に立ち、せっかく用意してくれた椅子をわぞわざ断った護衛隊長チェルシアと付き人リオネッサを不思議に思う。

 それぞれの立ち位置というものがあるのだと理解はすれど、改めて “立場” という堅苦しいものは嫌いだなと感じた。



 リオネッサとチェルシアとは湖で話したが、他種族に比べたら交流の機会が少なかったセイレーン族。

 彼女達と会話を始めれば、ここぞとばかりにセレステルが椅子持参で俺の隣に陣取り、それを真似てリュエーヴとミルドレッドまでやって来たかと思えば、今度はノンニーナとファナが俺の肩に座り込む。


 そんな事をしてる間にセルジルの話しは終わっており、入れ替わりでアルミロが喋り始めていた。

 しかし耳に入って来るのは、伝統がどうのとか、今までどんな功績を挙げただとか、これから国民の為に努力して行くだとか……俺のイメージする政治家らしい物言いだったので苛々しそうで聞く気になれず、関係のない事だと意識を切った。


 それに対して、ひどく興味を唆られたのは、彼女達の住処が大森林フェルニア最大の湖 〈シュルトワ湖〉 に浮かぶ浮島である所から始まったセイレーンの姫君レオノーラの話。

 普段は半人半魚のいわゆる人魚の姿で生活している事や、シュルトワ湖の底には海へと続く洞窟があるなど、俺だけではなく、聞き耳を立てていたのはいいが我慢しきれなくなって飛び入り参加して来た嫁達の心を鷲掴みにした。


 何より驚いたのはセイレーン族の子孫の残し方。


 エルフ、ドワーフ、獣人は人間と同じ生殖形態で、それぞれに男性と女性がおり、夫婦となって子を儲ける。


 しかし、亜人達の生態系が人間の常識には当てはまらないものがある事は、サラマンダー族とレッドドラゴン族の関係を聞けば分かる事。

 セイレーン族はサラマンダー族より更に偏りが有り、生まれて来る子供の全てが女児で、しかもセイレーン族なのだと言う。


 そこで湧いてくる一つの疑問。種族全てが女性であるのに、どうやって子を成すのか。


「獣人王国ラブリヴァとセイレーン族の住うシュルトワ湖とは地下水脈で繋がっております。

 彼女達の泳力を持ってしても三日はかかると言う道のりを登って来たセイレーン達は《ハラムシェル》と言うこの国の管理するある屋敷の地下に辿り着き、しばらくの間そこで生活をする事となります。


 その屋敷というのがお金を払い性欲を満たす場所、いわゆる娼館と同じシステムとなっており、お金を支払った獣人の子種を肉体を差し出したセイレーンの娘が貰い受ける交換の場となっているのです。


 そうして何度かの性交渉を持ち妊娠が確認されると、今度は地下水脈を下ってシュルトワ湖へと帰り、子を生み育てる、というのが何百年と続く獣人とセイレーン族との関係なのです」


 結局俺の物言いで全員着席させ、いくつものテーブルを適当に寄せ合って原型を留めぬ大きな円となったテラス席。その一つに座る俺の両肩に手を置き、隣から顔を出したメアリさんが俺達の疑問に答え終わると、何事かを含めた意味深な視線を向けて来る。



 会話の空白地帯でふと耳に入って来たのはフラルツの演説。少しだけ興味があった彼の話は、嫌な予感に塗り潰され、どうやら聞いている余裕が無さそうだ。


「私共も出来る事ならば自分の好みでお相手を決めたいところなのですが、そうも言っていられないのが現実。 ですが幸いな事に、私はお相手を選ぶ事が出来る立場にあります」


 真っ直ぐ見つめてくるレオノーラのはにかむ笑顔は破壊力抜群だ。


 以前、アルに聞かれた女性の好みを答えるのであれば、彼女のように大人の魅力を持ちつつ少女の可愛らしさの残る娘が好みだと、今なら言える。それは正しく俺の愛する妻達が全員そうであり、見た目は大人寄りだったユリアーネも中身は子供のように無邪気な人だった。

 でも決して大人の女性が嫌いとかではなく、大人の魅力満載のコレットさんやアリサの事ももちろん大好きだ。


 結局、俺って八方美人なんだな……。




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