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黒の皇子と七人の嫁  作者: 野良ねこ
第十章 嬉しい悲鳴をあげた大森林
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35.集まった欠片と込められた願い

「ここにララの魂が入ったの?」


 上質な袋の上に置かれた大きな紅玉を手に取り、光に透かして中を見ようと試みるが、ゆったりと流動する銀の粉が見えるのみで魂など肉眼では見る事が出来るはずもない。


「私にも見せてください」


 ティナから紅玉を受け取ると同じように覗き込むが、エレナのよく見える目をもってしても魂などという不確かなモノは目にする事が出来なかったようだ。


「悔しい……見えませんっ!」


 絶対の自信が打ち砕かれたように長い耳がへたり込み見るのを諦めると、伸ばされたアリサの手の上に溜息と共に紅玉を置いた。


「肉眼では少し難しいわね。ゴーストの存在は知ってるわよね?アレは向こうの意思がない限りわたくし達の目に見える事のない特別な存在なの。それと同じ原理なんだけど “次元” って言って分かるかしら?


 貴女達も使ってる空間魔法のかかった鞄があるわよね?その空間魔法とは此処とは違う次元、言うなれば別の世界への扉を開く為の魔法なの。

 その世界とは、わたくし達が住むこの世界とは物理法則が異なる全く違う場所。だから熱い物を入れておけば、どれだけ時間が経とうとも取り出した時には熱いままだし、野菜の腐食速度だってかなり遅いのよ?」


 ゴーストと言われて ビクリ としたのは、それが苦手なモニカとリリィ。


 モニカは雪を抱きしめ、リリィは俺の服を掴んだが、実際に現れたのならまだしもキーワードを聞いただけで怖がられても困ってしまうぞ?


「鞄を覗いても中が見えないように、別次元に存在するゴーストや、更にその上の次元に存在すると言われる魂は肉眼で見るのには無理があるのよ。

 それと同じ事が言えるのが女神と呼ばれる更に特別な存在。別次元にいる彼女を殺すには特別にあしらえた武器が必要になる、だから問題を起こした女神チェレッタは封印という措置が取られたのよ」



⦅チェレッタを殺すのはどうか思いとどまって⦆



 聞いた事の無い美しい声で誰かにそう言われた気がした。だがいくら考えても心当たりには辿り着かない。

 声の雰囲気が似ていると言えば王都に居る胡散臭い占い師なのだが、アイツとはそんな話しをした覚えは無い。


「見えなくても、その中にはララさんの魂が入ってるんですよね?」


「そうねぇ……」


 目を瞑るアリサの手の上、銀の砂をうねらすコアが僅かばかりの黒い光に包まれれば、光の消失と共に彼女が目を開く。


「誰の、とは分からないけど、誰かの魂のカケラみたいなものは入ってるみたいよ?

 専門家じゃないから断定は出来ないけど、これが時間をかけてゆっくり馴染めば、晴れてゴーレムのコアとして機能するのではないかしら」




 リリィの背中から入り込んだ俺の魔力は彼女の全身を隈なく捜索した。

 その過程で、リリィの身体に在ってリリィの魂とは微妙に色の違う、米粒大の魂のカケラのようなモノを見つけることとなった。


 残念ながらそれがララだと断定する事は出来なかったのだが、二つ目の同じカケラを見つけたとき、俺の直感が『やっぱりこれがララだ!』と告げたので、それを信じてリリィの内を隅から隅まで片っ端から探して回ったのだ。


 そうして気の済むまで探し尽くして、見つけた全てをゴーレムのコアへと移し終えたところでリリィに「お疲れ様」と言えば「はぁぁ!?」と、こんな時に冗談はやめろと言わんばかりの顔で振り向かれる。

 聞けば、俺の体感で何時間もかかったと思っていた魂の探索は、リリィへと闇の魔力を流し始めた途端に終わったのだと言うではないか。


 俺の方こそ『はぁぁ!?』と言ってやりたかったのだが、魂の遊離作業はキチンと終わっているとのアリサのお墨付きが貰えたので、あとはアレがララである事を祈るばかりだ。



▲▼▲▼



 一応の平穏を装い始まった夕食会は、予想通りに方向を捻じ曲げた。そのきっかけはやはりあの人、獣人王国国王セルジル。


 ホストとして客を楽しませる事が目的ですか?いやいや、そんなに知った仲ではないのだが、少し見ていれば彼の性格など把握出来よう。あの人に限ってそのような計算があったとは、とてもではないが考えられない。



──あいつ、本当に国王なのか?



 裕福ではないはずのラブリヴァにおいて人間の貴族達が食べるような豪華な食事が提供される中、途中から食事ですら飽きてしまわれた国王陛下は、事もあろうに顔合わせの場での悪戯を再現したのだ。



──つまり、給仕をしてくれるメイドさんの尻を触った、と言うことだ



 狙っていたのか、はたまた彼の好みが一貫しているのか、尻を触られた娘はあの時のトラの獣人。

 我慢ならずか、反射なのか、はたまたその両方なのか、持っていた銀のお盆が変形するほどの力でセルジルの顔を思い切りぶっ叩き、泣きながら走り去る姿に時が止まったのは仕方のないこと。


 そんな事にはめげずにすぐに復活したセルジルへと勝手知ったる旧友の如く茶々を入れるエルフの族長を皮切りにドワーフ二人も加わり再燃した “女の魅力論争” は結論を出すこと叶わず、体裁を保つためにとどうにか止めようとした騎士団長アーミオンとエルフの次期族長イェレンツをも巻き込み、場所を変えての二次会に突入したようだ。


 呆れる女性陣を他所に、いまいち意見が合わないながらも酔っ払いの如く意気揚々と部屋を出て行く男達に連行されるようにひきずられていくアーミオンの悲痛な目は、皆の哀れみを買うのに十分な印象を残して行った。




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