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黒の皇子と七人の嫁  作者: 野良ねこ
第四章 海まで行こう
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14.ブラックパンサー

 盗賊団のテリトリー、つまり岩山に差し掛かる手前で馬車をしまった。そう、鞄に入れたのだ。


 俺の鞄はカミーノ家で作ってもらった特別製。その上、ルミアという魔法の天才の手にかかるとあ〜ら不思議、収納スペースが無限に広がる鞄へと大変身っ!

 それでも生き物は入れられないというルールは変わらないらしいので、お馬さんは入れられない。


 馬車が鞄に入るという驚きに目を丸くしていたモニカとサラは、コレットさんが引くお馬さんに揺られている。二人は魔法による遠距離戦闘をするのでこれでいいのだ。


「モニカ、水蛇は一匹で良い。多くても二匹までにしておけ。矢ぐらいは飛んで来るだろうし、もしかしたら魔法も飛んでくるかもしれない。馬とサラを守ってやってくれ。

 矢が飛んで来るようなら普通に張っただけの水幕では弱いだろうから水に流れを付けてやるんだ。そうしておけば矢ぐらいじゃあ突き抜けるなんて事はない筈だ。


 サラ、君は攻撃に専念すればいい。遠距離から攻撃してくる奴を片付けるんだ。おそらく上の方から石を投げたり矢を放ったりしてくるだろう。もちろん上の方だけじゃなく注意深く周りを見てくれ。


 それと二人共、魔力は使い過ぎるなよ?基本的には俺がカタを付ける。自分の身を守る事を優先するんだ。

 コレットさんは守りを優先で二人のフォローをしてやってくれるか?」


 モニカ、サラ、コレットさんの顔を順番に見ると力強く頷きを返してくれた。やる気に満ちた眼差しだが初めての盗賊討伐戦、怖くない筈はない。

 経験はなくとも実力的に言えば、盗賊ごときに遅れを取るような俺たちじゃない。しかし昨晩コレットさんが言ったように、何が起こるか分からないのが世の常。ならば彼女達を信じて覚悟を決め、全員が無事でいられるように全力で叩き潰すまでだ。



 朔羅に左手を乗せると勾玉を摘み指で弄りながら馬から少し離れた先頭を歩き出す。すると、程なくして感ずいた盗賊供が慌ただしく動き始める。その場に感じるだけでも二十は居るだろう。最前線にこれだけ居るということは百は余裕で超える数の野盗が巣食っているのだろうな。

 モニカ達が怪我なくやり過ごせるか心配になるが、俺が頑張ればいいだけの話だ。


「止まれ!お前達、ココがどういう場所か分かっているのか?ここはブラックパンサーの領地だ、死にたくなかったら金と女を置いていけ!」


 いやいや、うち、女三人もいるんですけど?君の話だと俺しか助からないじゃん?馬鹿なの?こいつら馬鹿なのか?


 目を瞑ると脳裏にモニカの顔が、コレットさんの顔が、そしてサラの顔が思い浮かぶ。あれ?サラは俺の女じゃないぞ?……まぁいいか。一応婚約者だし、なにより仲間だ!



──皆の無事を祈り終えると目を開けた。



「お前達こそ俺が誰だか知らないようだな。俺こそがお前達を冥土に送る死神だ。大人しく逝っとけよ、ドブネズミども!」


「何を寝ぼけたこと言ってやがる!この数の差が見えないのか?こっちは二百人は居るんだぞ!たった四人で何が出来る!お前を殺してその女は俺達で楽しむとするよ。ケケケケッ!だからお前は安心して死ねよっ。殺れ!」


 こうして俺達、冒険者パーティー〈ヴァルトファータ〉と、盗賊団 〈ブラックパンサー〉の戦いの火蓋が切って落とされた。




 岩山の間を縫うようにして伸びる街道、そこには矢と岩の雨が降り注ぐ。

 始めこそ宣言通りに先行する俺にだけ集中していたものの、サラとモニカの魔法にヤバイと感じたらしく今は彼女達の方に移ってしまった。


 それとは入れ違いにやって来たのは、奥から湧いて出た剣や槍を持ったギラつく視線の男達。

 しかし誰かさんの悪戯とはいえギルドランクSの冒険者である俺、魔法すら碌に使えない有象無象が相手では手応えなど感じられるはずもない。実力差は歴然であれど怯む事なく襲ってくるのはある意味立派ではあったが、それだけでは負けてやるやるには至らずただ淡々と斬り捨てていく。


 一方、サラとモニカの連携は上手く取れている様子。俺の教えた通り水流を起こした水幕を上手く活用して矢を防ぎ、地味でも侮れない威力を誇る落石を反らしながらも崖の上に上がった水蛇が逃げ惑う男達を肉塊へと変えていく。

 そのフォローをするのが火魔法を撃ち込むサラ。モニカが取り溢した奴を一人、また一人と確実に仕留めて上方からの攻撃を削いでいた。


 モニカがあまりにも優秀で、完璧に相手の攻撃を防いでいるのでコレットさんはやることがないようだ。暇つぶしにと魔法を放ち、飛んで来る矢を撃ち落として遊んでいる。

 いつも一人で働いているんだから、たまには楽してもらえば良いさ。


 それにしても水魔法がここまで優秀だとは知らなかった。それを扱うモニカの力量も相当なモノになってきている。最早ギルドランクAと言ったところで普通に信じてしまうようなレベルだな。


「サラ、火魔法は当たったら爆発するように出来るか?風の玉を核にして火球を作るんだ。二属性を同時に使う練習はして来たろ?ただ、あんまり派手に爆発すると自分達に岩が降ってくるから加減はしろよ」


 頷いたサラの行動は早かった。一呼吸後には言われた通りの新しい火球を作り出すと崖の上へと解き放つ。しかし初めての試みとあって加減が難しかったのか爆発が成功したまでは良かったのだが案の定、その規模までは予測出来なかったらしく凄まじい爆発が起こり砕けた岩がゴロゴロと降り注ぐ。


「ちょっとっ、サラッ!?キャーーーッ!!」


 不味いと感じて向かいかけた矢先、悲鳴をあげならがも二重に展開した水幕が転がり落ちてきた巨大な岩までも防ぎ切り事無きを得た。


「バカタレっ、加減が分からない時は最小の威力で試すもんだ。ちゃんと調整はしろよ?」


 指でカリカリと頬を掻きながら「ごめーん」と申し訳なさそうな顔をしてるサラだが、やれと言われてすぐ出来ること自体は凄いことだ。何度かやれば爆発の規模もコントロール出来るようになるだろうが、早く慣れてやらないとまたモニカに負担をかけるぞ?


 サラの暴走で無数の岩が落ちてくれば『やっと仕事!』と言わんばかりに張り切って飛び出そうとしたところ、モニカの水幕が完璧に処理してしまったようだ。俺が見てるのを良いことに口を尖らせて拗ねたような仕草をしているコレットさん。

 その顔、可愛いけどモニカには見せないでくれよ?せっかく頑張ったんだから!




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