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黒の皇子と七人の嫁  作者: 野良ねこ
第三章 騎士伯の称号
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30.出会い

 ここは……夢の世界か?


 気が付いたときには真っ暗な空間にいた──また俺はここに来たんだな。


 眠りから覚めると忘れてしまう、だが、ここに来ると再び思い出す。夢とはこういうものなのだろうか?


 さて、ここはどっちの少女がいるところかな?

それともまた別の夢?


 見回しても何も無いただ闇だけが広がる世界。

まぁ、また歩いてみよう。


 何も見えないのに不思議と怖くない、真っ暗な闇の世界。只ひたすらに歩いていると、思った通り光る大きな木が見えてきた。そのまま更に近寄って行くと仁王立ちする人影が見えて来る。

 歩きながら見ていると真っ暗な闇の中、立っていたのは陽に当たったことが無いのではないかというぐらい白い肌をした黒い少女だった。


「レイシュア、僕に何か言うことは無い?」


 黒い髪の間から見える眉間に頑張って皺を寄せている姿が微笑ましい。黒い瞳で俺を見つめる黒服の少女はこの間会った子だ。


「何かって……お久しぶり?」


 頭を抱えて『違う違う』と言わんばかりに首を横に振る少女。心なしか、この間会った時よりも大きくなっている気がする。こんな短時間でそんなに成長するなんて事があるのか?

 あぁ、ここは夢の中だからなんでも有りなのか。


「僕だって日毎に成長しているんだっ、大きくなってあたりまえだろ?それより謝罪とか無いの!?浮気だよっ、う・わ・きっ!酷くない?

 レイシュア、御免なさいが言えない人は駄目な人なんだぞ?」


 浮気ってなんだよ。そりゃ俺はユリアーネを心の隅に退けてモニカを受け入れたよ?それは駄目なのか?いけないことだったのか?

 それともモニカが居るのにティナを受け入れようというのが駄目なのか?エレナも駄目なのか?


「外での女性関係は僕は気にしないって言わなかった?ここに来た時にちゃんと僕を愛してくれるなら、どれだけ女性が居ても僕は構わない。

 でも今はそんな話じゃないよ。

レイシュア、僕の事まだ解ってないの?それはそれでショックなんですけど?」


 この子の事?前も言ってたな。俺はここでしか会った事ないのに一番近くに居るとか。

 今、俺の一番近くにいるのはモニカなんだけど、どういう事だかサッパリ分からん。


「もぉため息しか出ないよ……鈍チンなレイシュアに大、大、大ヒント!この間、僕のお母さんに何て言われたんだい?」


 は?お母さん?……はぁぁ?


「もぉぉぉおっ!ほらっ、僕と同じくらいの背丈で大きな眼鏡かけてるでしょっ!」


 そ、それって……シャロの事か?シャロがお母さん……お母さん!?



“この刀と呼ばれる剣は特に力が強いのよ”



 シャロが言った言葉が思い浮かんだ。



“凄い子になると具現化したりするわ”



 具現化?シャロがお母さんって……まさか、朔羅!?


「はぁ……やっと分かったの?怒ってた僕が馬鹿らしく思えてきたよ。それで、何か言う事は?」


 朔羅は怒ってた?シャロの言っていた様に……使ってあげなかったから?なら浮気って……浮気?

 朔羅を使わないで白結氣を使った事か……はぁ、長かったよ。やっと納得いった。


「あーその、あれだ。その事については謝る。ゴメン、俺が悪かった。でもさ……本当に朔羅なのか?」


「なーーによそれっ!ぜんっぜん反省してないじないっ!?もう知らないっ、レイシュアなんてしーらないっ!」


 腰に手を当てプイッと横を向く朔羅、これはマズイ……。


「ごめんごめん。疑って悪かったよ。だってさぁ、意志が在るのは分からなくはないよ?でも人の姿になるなんて思ってもみなかったんだよ、仕方ないだろ?

 なぁ機嫌直してくれよぉ、なっ?なんでもするからさぁ」


 俺の言葉など聞かず、尚も横を向いて膨れる朔羅。瞑っていた目を片方だけ開けてチラリと俺を見るが、すぐにまた目を瞑ってしまう。


「本当に反省してるの?」

「してますしてますっ、この通りです」


 両手を合わせて拝む様にして頭を下げた。すると、腰に手を当てたままに向き直り、腰を折って顔を近付けると本意を確かめる様に覗き込んでくる。


「なんでもするって言ったよね?本当になんでもするの?口から出まかせじゃないの?」

「するする、何したら許してくれるんだ?」

「ふぅ〜〜んっ……じゃあ……」

「じゃあ?」

「キスして」


 ん?キス?オマセさんだなぁ。

微笑みながら抱き寄せるとそっとオデコにキスをする。

 しかしその途端に突き出される両手。勢いよく押し退けられ、転ばないようにと思わずたたらを踏んでしまった。


「ちっがーーうっ!キスって言ったら口にするものでしょ!?馬鹿にしてるの?ねぇ、僕の事馬鹿にしてるの?

 そりゃぁさっ、まだ身体はこんなだよ?それはレイシュアにだって責任あるんだからね!ちゃんと使ってくれないと僕だって成長出来ないんだよ?分かってるの!?

 ちゃんと反省して悪いと思ってるのなら口にキスして!!短いチュッじゃ駄目だからねっ。ながぁ〜いやつねっ!」


 分かったよ、俺が悪かったんだもんな。そうか使えば使うほど成長するのか。だからこの間会った時よりも少しだけ大きくなった気がしたんだな。


 まだ十歳そこそこの朔羅の身体、その小さくて軽い身体をお姫様抱っこで抱き上げれば怒りの気配など消え去り、塩らしくなった彼女はうっすらと頬を染めてはにかむ。

 お望みのままに唇を合わせればそれだけじゃ飽き足らず、小さな舌が俺の唇をチロチロと舐め『門を開けろ』と催促してくる。それに応えれば当然のように互いの舌が絡み合い、それと共に唾液も混ざり合う──なんで俺はこんな幼い少女に興奮しているんだろう?


 間近で見る真っ白な頬は桃色に染まっており、うっとりとした表情で余韻に浸りながらも、闇よりも黒い瞳が俺を見つめていた。


「早く続きが出来るようにレイシュアが頑張るんだぞ?僕はレイシュアの為だけに存在する。だから僕の事、大事にしてね……ちゃんと愛してね?向こうに戻っても忘れちゃ駄目だからね」


 己の両足で立ち、小さき女の子を抱っこしているにも関わらず薄れゆく意識。不思議な感覚に『夢の中だった』と思い出しながらも聞こえる心地よい朔羅の声は心に染み入るようだった。




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