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黒の皇子と七人の嫁  作者: 野良ねこ
第二章 愛する人
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30.反論は許しません

ギィィンッ!


 他とは違う音が響き、顔を見合わせた。


 灰色だった壁からは銀色が覗き、似たような色ではあるものの明らかに輝きが違う。落ちた岩を拾い上げ、それが何かを確かめたスクヮーレさんは興奮した顔を向けてくる。


「こりゃぁミスリル銀だぞ。やったな兄ちゃんっお宝だよっ!」


 慎重になりながらも更に掘り進むと壁一面を銀色が覆い尽くす。これは全て『ミスリル銀』という希少な鉱物らしい。

 ミスリル銀はメジャーな希少金属で、魔法との相性が良い事と加工が簡単な事で有名、なんでも王宮の騎士団の装備は全てこれで作られているんだとか。つまり、金になるって事だな。


「おいっ、なんだこりゃ!まさかずっと繋がる鉱脈はコイツってんじゃないだろうな?

 こりゃ……とんでもねぇぞっ」


 様子を見にきた親方が度肝を抜かれたように驚愕する姿はなかなか見ものだった。自信家のような親方だけど、こんな顔もするんだな。



 ミスリル銀を回収しつつ掘り進めてみると、一メートルぐらいでまた元の岩盤が顔を出した。コレだけでもかなりの儲けだとホクホク顔で見守る親方、ユリアーネの探索だと残り三メートルほどで目標地点だ。


 何日も同じ作業をやっていると流石に慣れてくるもので、ツルハシの土魔法の付与もほぼスクヮーレさん達と同じ形、つまり先端だけの付与に近くなってきていた。

 しかし未だに魔法を手から切り離すことが出来ずにいる。ツルハシ全体を茶色の魔力がうっすらと覆い、先端部分はしっかりと魔力の塊が鋭い刃となり付いている、そんな状態だ。


 最初に比べたら格段に魔力消費は抑えられ掘るのもかなり楽になった。おまけに身体強化も、魔力を抑えるための強弱を付ける練習にもなり、だいぶ小慣れた感じになってきた。



カーーンッ



 ユリアーネの作ったスープを飲みつつまったりしていれば、一際大きな音が響いてくる。

 今までに無い甲高い音に二人顔を見合わせていると、親方もやって来て一緒に奥へと向かう。


「親方、コレですわ。とんでもなくデカイ塊ですぜ」


 ミスリル銀のトンネルを潜ると、掘っていた二人が見るからに嬉しそうな笑顔でのお出迎え。手に持っていたのは掌より少し大きい位の鈍い金色の鉱物、まさにそれが俺達が探し求めた金力石そのものだ。


 さらに、二センチほどの燃えるように赤い石を見せてくると親方の目の色が変わる。


「お、おい……そりゃまさか緋緋色金か!?なんでここにあるんだ!」


「金力石のすぐ隣から出てきたんですわ、こんな事ってあるんですね。俺はもぉ、腰が抜けるかと思うほどビックリしましたぜ」


 親方は〈緋緋色金〉と呼ばれた真っ赤な石を震える手で取りまじまじと見つめる。

 なんでも伝説的に希少な金属らしく、親方ですら実際に見たのは初めてなのだそうだ。ただ、この世で最高の硬さを持つと言われる緋緋色金は加工することが難しいので、扱える人がいるのかどうかも分からないとのこと。


「あぁ、それのせいでぇ変な感じがしたのねぇ」


 あまりにも近くに二種類の金属があったのでユリアーネも探知を疑い、何度も慎重に繰り返していたのだとか。


「残念、もぅ無いみたいよぉ?」


 振り返り採掘の終わりを告げるが、親方達の笑顔が曇ることはなかった。



 俺達にとっては金力石が見つかった事の方が重要なのでそれほど気にならなかったが、親方達は緋緋色金に夢中の様子。一先ず休憩をしてから外へ向かうと言っていたのに、真っ赤な石をかわるがわる手に取り大盛り上がりだ。


 目的を達したという開放感があり足取りは軽い筈だったが、帰り道は登り坂というのもあって疲れた身体には少々しんどかった。

 一日近く歩いていた感覚があったが、実際のところ、ずっと暗い坑道なのでさっぱり分からない。出口が見えるとそこから差し込む光が眩しく、サンサンと照りつける太陽に目が眩む。


 お天道さまはほぼ真上、どうやらお昼寝どきのようだ。坑道の奥とは違い埃っぽくない新鮮な森の空気は気持ちよく、空気が美味いと始めて感じる。


「お風呂入りたいねぇ、気持ち悪いわぁ」


 一体どれ程の時間を鉱山で過ごしたのか分からない。浄化の魔法で汚れを落とし、濡らしたタオルで身体を拭いていたとはいえ、何日も水を浴びていないというのが不快感をもたらしていた。

 だが汗を流すには最低でも川まで行かなくてはならない、残念ながら後一日はこのままだ。


 今日はこのままここに留まり、明日の朝から町に向けて出発することに決まった。

 一日分だけを残し全ての食材を投入してのお疲れ様会、その席で神妙な顔をした親方が相談を持ちかけてくる。


「お前達は金力石を求めて来た、そうだったな?それでだな……金力石は全て持っていけ、緋緋色金もルミア嬢ならなんとかしてくれるだろう。あと、紅玉も全部だ。 そのかわりミスリル銀の鉱脈から出る取り分は預けておいてくれないか?俺の予測だとミスリル銀のほうが遥かに金額がデカイ。それは分かっているが掘ってみないとどの程度の金額になるのか検討もつかんのだ。

 今は坊主達の分がかなり悪くなっちまってすまねぇが、またアングヒルに来た時に俺達を訪ねてくれ。その時までに渡せるものを用意しておく、そんなところで手を打ってくれんか?」


 俺達はルミアに言われて金力石を採りに来ただけ。緋緋色金という超レア鉱石と、綺麗な紅玉のお土産までもらえた。


「何の文句もないよ。寧ろそんなに貰って行っていいのか?ルミアに頼まれたのは金力石だけだ、それさえあればいい。あ、紅玉は少しだけ分け欲しいかなぁ」


「馬鹿言うんじゃない!」と親方からの提案通り金力石に加えて緋緋色金と紅玉の全てを持たされると、反論を許さぬ頑とした態度に、良いのかなぁと思いつつも有難く鞄にしまったのだった。




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