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黒の皇子と七人の嫁  作者: 野良ねこ
第二章 愛する人
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23.魔法の扱い方

「んふぅ〜、もう食べられましぇんよぉ、レイしゃん……むにゃむにゃ」


 ソファに転がるエレナのお腹は肉が詰まりすぎて妊婦のようにポッコリと膨らんでいる。幸せそうな寝顔、口の端から涎を垂らす姿もエレナらしさをアピールしていて微笑ましいな。


 ユリアーネと並んで座り食べ過ぎたお腹を休めてまったりしていると、天井からぶら下がる蜘蛛のように皮袋がやって来た。

 何か分からないまま取り敢えず手に取れば、テーブルの向かいに回ったルミアが静かに席に着く。


「お待ちかねの物が出来たわよ」


 いつものように異空間からワイングラスを二つ取り出すと、視線だけで飲むか?と聞いてくる。

 しかし、お腹は良い具合にいっぱい。なので首を横に振って断ると、グラスにワインが注がれたタイミングで師匠がやって来てルミアの隣に座る。


 示し合わせたようグラスを合わせて同じように傾け始める二人。ホント、仲がよろしいことで。


 それはさておき『お待ちかねのモノ』とやらが気になり口を開けて手のひらにひっくり返せば、五センチぐらいの透明な玉が三つ、転がり出てくる。

 よく見ると玉の中心には、ルミアから借りている魔晶石と似たような感じで色の無い小さな炎が揺らめいていた。


「モノ的には見たまんま魔晶石、でもこれは《魔留丸(まとまる)くん》よ。前に話した通り魔法を留めておけるわ。

 ユリアーネ、それの中心に向けて魔法を使ってごらんなさい。魔留丸くんと重ねるように魔法で玉を作ればいいわ。 複数の魔法を入れられるけど、同じ属性の魔法はくっついてしまうから入れても意味がないから。

 使い方としてはレイが今、身体強化に使っている火風水の三つを入れておくってところかしらね。三個あるから三回分の魔法が使えることになる。取り出し方は魔法を自分のモノにするのと同じよ、分かるわね? 上手く使いなさい」


 言われた通りに魔留丸くんへと魔法を使うユリアーネ。中心にあった透明な炎に赤い色が付き、難なく成功した事が見て取れる。

 続いてその隣に現れる緑と青の炎。大きさは小さくとも力強く光を放つ三つの炎はとても綺麗で、いつまでも見ていられそうだ。


「これ綺麗ねぇ、わたしも一つ部屋に飾りたいなぁ」


 残りの二つにもあっという間に入れ終わると、俺と同じように中の炎を眺めて漏らす。


「三つしか無いわよ?欲しいならレイに貰うのね。

 魔晶石での訓練は続けてるわよね?それはそのまま続けなさい……で、次の課題よ」


 ルミアは両手の人差し指を立てると、その細い指先に現れる小さな炎。俺が見たのを確認すると二つともが消えて無くなった。


 すると今度は右手にだけ現れた五センチの炎。


 何をする気だ?と真剣に見つめていれば、その炎に左手の人差し指を近づけていく。程なくしてくっ付く二つの指、それが離れると二センチになった炎がそれぞれの指先に灯っていた。


『わかった?』と言わんばかりに無言で小首を傾げるルミア、燃え続ける二つの炎を見つめていればそんなに間を空けずとも答えが思い浮かぶ。


「一つの魔法を二つに分けたのか?」


 よく知っていないと分からないような僅かな微笑み、どうやら正解らしい。


 すると右手の炎が五センチに戻り、同じように左手が近付くと、今度は中指がくっ付き再び炎を二つに割る。全部で三つになった指先の炎、尚も俺を見つめ続けるルミアはまだ続きがある事を無言のままに物語る。


 右手の炎の大きさか元に戻り、また左手が近付くと二つに割れる炎。それを繰り返せば、左手の指先全てに炎が灯った。

 右手の炎が消えればおのずと視線は左手へと向かう。二センチの五つの炎はその大きさを徐々に増し、やがて一つとなり掌の上に浮かんだ。大きくなった炎は今度は段々と小さくなっていき、やがて消えて無くなる。


「魔法は分割することも、結合させる事も出来る、と……そういう事?」


 口の端を僅かに吊り上げると小さな炎を作って飛ばしてくる。

 キチンとキャッチ出来るようにやってきた炎を受け止め自分のモノとした──もしかして同じことをやれ、と?


「焚き火でも同じよね?薪に付けた火は幾らでも株分けできるわ。その炎も新たに薪を足せば幾らでも大きく出来る。

 魔法はイメージよ、無限の可能性があるわ。魔法だって二つにしたり、再び一つにしたり出来ることを認識なさい。

 でも普通の人はそんなことしないわ、魔力を消費してでも新たに魔法を作り直した方が遥かに簡単で楽ですもの。けど、貴方は違う。魔力はあっても魔法を生み出すことが出来ない貴方は魔法を分割することによって複数の使い方が可能になる、意義が分かるかしら?」


「身体強化以外にも魔法を使えということか?」


「良いわね。頭が回る子、好きよ」


 師匠の肩にもたれ掛かり小さく舌舐めずりして見せる。その姿は妖艶で、思わず身震いしてしまうような感覚が背中を走り抜けた──いかんいかん、ルミアに飲まれるな。ルミアは師匠のモノで、俺にはユリアーネがいる。


 気を取り直して渡された炎へと視線を移し、ルミアの真似をしてみようと試みるものの炎はただそこに在るのみで全く変化がなければ要領も分からない。


「もう一度言うわ、魔法はイメージよ。魔留丸くんの中の魔法は分割しても取り出さなければ勝手にくっ付くわ、心置きなく分けなさい。

 ただ、余り大きくし過ぎると魔留丸くん自体が壊れる可能性があるから、それだけは気をつけるのね」


 話しは終わりだとばかりに師匠と共に席を立つルミア。二人を見送り再び炎に集中するが、どれだけやっても一向に割れる感じがしない。


「そんな直ぐには出来ないのかもよぉ?今日はそのくらいにしてぇ明日またじっくりやればいいんじゃない?」


 俺の肩に手を置き思い通りに行かない事に焦り出した俺を止めてくれる。そんなユリアーネに感謝しつつエレナに布団をかけてやると、本日の修練は終わりにして二人で部屋へと戻っていった。



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