長親は頑張るんです。
【河田 長親】
父上の河田 元親が観音寺城にて役職をいただいた。
父上はその挨拶の為に石田 正継様の力添えで浅井 久政様の御嫡男の浅井 長政様にお目通りの機会を得た。
観音寺城を居城にしているのは長政様だから長政様に挨拶をとの事だけど顔を合わせた時に挨拶すれば良いのでは?と思うのだが…
良い仕事をしていれば長政様からお声がかかるはずだ。
父上は私を連れて行くつもりのようだ。
私を長政様と会わせたら近くて仕えさる機会が訪れるかもという確率にかけているようだ…
いつもの父上では無いな…
完全に浮かれて自分を見失っている…
一室に通されしばらくすると足音が近づいて来た。
入室した人物は正継様に待たせてごめんと謝っておられた。
浅井 長政様だ。
すぐに平伏したが堅苦しいのは嫌いだと楽にしてくれと申された。
私より年下と言うのに私より身体は大きく、鍛えられている。さらに纏っている空気が違う!!
背後に控えている2人の少年もまた身体は鍛えられている。
正継様が父上を長政様に紹介したところ父上に対し
「働き、期待しているぞ。正継、俺を支えてくれ」
と肩に手を添えてお言葉を下さった。
長政様が私に気付き名を聞かれたので名乗ったところ、一瞬驚いた顔をしてしばし、考える素振りを見せ、父上に対し
「長親を俺の小姓の1人として仕えさせてみる気はないか?」
とのお言葉…
父上は感激しながら
「名誉な事です…」
と言葉を震わせながら返事をしていた。
長政様は背後にいる2人に声をかけ私の教育を任せるらしい。2人の名前は沼田 上野之助殿と竹中 半兵衛殿と言うらしい。
私も部屋を貰えるらしく案内される。
両人から【殿】は付けなくて結構。歳も近いし、同僚な訳だし。との申し出があったのでいきなりは無理なので慣れるまでご容赦をと言っておいた。
半兵衛殿が申すには長政様は人を見る目に長けていて私に対して思う事が有ったのだろうとの事。
まず、武芸の才が無い者は小姓、側近には採用されないそうだ。
上野之助殿が申すには長政様のもとに、我が子、一族の者を小姓、側近として送り込もうとする者が後を絶たないが長政様はほとんど相手にされないそうだ。
両人はそんな私に期待しているそうだ。
嬉しい事です。
両人から長政様について知っている事は?と質問され噂では【鬼人】とか【百鬼夜行の主】とかの異名を聞いた事が有ると言うと半兵衛殿が
「では部屋に案内した後にちょっと修練場に行きましようか。ひょっとしたら百鬼夜行に会えるかもしれませんよ。」
と不吉な事を言っていた…
部屋に案内された後に修練場にやって来た。
何か物凄い者たちがたくさんいる…
私も自分の武芸に自信を持っていたがここにいる者たちは私より強いのがわかる。
竹刀という物を渡された。竹で作られた刀の様な物でこれで打ち合っても怪我がしにくいらしい。
しばらく素振りをして竹刀に慣れておくように言われた。
もうすぐ来ると思いますので…
との一言に嫌な予感がしている。
しばらくすると長政様がやって来て私と立ち合うみたいだ。
はっきり言って何も出来なかった…
2回防いだだけだか、何故か周りからどよめきが起きていた。
他の者たちとも立ち合ったが全く歯が立たない…
悔しいが、楽しかった!!
後で聞いた話によると初の打ち合いで長政様の攻撃を防ぐとかめったにいないそうだ。
皆の身体がとても鍛えられているのもここの修練もあるけど食生活によるものが大きいそうだ。
牛の乳を飲み、獣の肉を食べる。
食べ物をバランス良く食べるそうだが【バランス】って言葉の意味がわからない…
でもそれによって身体が作られるそうだ。
牛の乳とか獣の肉とか私に食べれるだろうか…
皆が食べているのなら私も必死に我慢して食べなくてはならない。
父上は上機嫌で帰って行き、私の荷物は今日中に届けてくれるそうだ。有難い。
夕食に牛の乳、獣の肉が出されたので必死に食べた。
こんな美味い物が有ったなんて!!
しかもおかわりも大丈夫?
皆もおかわりしているから、私もおかわりして良いよね?
こんなに満腹になるまで食べたのは初めてだ!!
これほどに食べたいと思うとは…
自分をおさえられなかった。
同僚たちも俺たちも最初はそうだった!!
長政様からも若いんだから食えるだけ食えと言われている。
食べ物がかなり消化されて来て動けるようになった。
長政様に何かあった時に動けないと困るからこれからは食べる量を調整しなくては。
気をつけよう。
長政様に毎日、風呂に入るようにと言われていたから風呂へ向かうか…
気持ち良かった…しっかり石鹸とやらを使って汚れを落とせと言われたがスッキリした。
ヘチマと言う植物で身体を擦ると気持ち良かった。
長政様が明貿易で入手したらしく元々は違う名前らしいが長政様がヘチマ、ヘチマと喜んだ事からヘチマと言う名前になったそうだ。
風呂上がりに飲む牛の乳は最高だ!!
今日はぐっすり寝れそうだ。
朝、私は地獄を見た…
なんだここは…誰にも勝てない!!
昨日より人が多かったから1人ぐらいは…と思ったがさらに上の化け物がゴロゴロしている。
昨日の修練場には百鬼夜行と呼ばれる者は居なかったそうだ。
浅井ではある基準に技術が達すると【百鬼夜行】の一員と認められ、上位9人を【浅井九本刀】と呼び、さらにその中の上位4人を【浅井四鬼衆】と呼んでいるとの事だ。
ちなみに長政様は自分が【百鬼夜行の主】と呼ばれている事も知らないし、【百鬼夜行】の制度も知らないそうだ。だから長政様の、前では百鬼夜行の名は出さないようにと忠告された。
忠告??間違えて長政様の前で言ってしまったら何か起きるのかな?怖いなぁ…
長政様に尾張に遊びに行くから付いてこい!!と言われたので旅行の準備をしますか…




