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義弘、ぼこぼこです。

大口城へと向かう途中の山道で俺は一瞬、足を止めた。


微かに血のにおいがする…


すぐにまた足を進めるがその動きに気づいた日向 源藤斎が血のにおいは先行した配下が排除した盗賊の名残だと耳打ちしてきた。


源藤斎には配下の働きは褒美の事もあるのでしっかり報告するようにと言っておいた。


ちゃんと文官である百々 安行に報告するようにとも付け加えた。


聞いたところによると配下の者たちはかすり傷一つ無いようでホッとした。


そんな俺を見た源藤斎は嬉しそうにしていた。


途中、村が盗賊に襲われているのを助け、盗賊を返り討ちにしたぐらいで特に何の問題も無く大口城に向かっていると九州に潜入している、みけねこ隊の【望月 鴨】が接触して来た。


鴨は望月 出雲の一族で俺も何度か修練場で戦った事がある。


大口城へ島津が兵300で進軍しているとの事だ。

大将は【島津 義弘】で島津の重臣である【川上 久朗】の姿も見えるそうだ。


これはいわゆる【堂ヶ崎の戦い】かな?

時期は微妙に違うけど義弘を守る為に久朗は深手の傷を負い後日、亡くなる筈だ。


なぜ、寡兵で大口城へと向かったか今まで疑問だった…

大口城には兵4000から5000がいたと言われているのに。


興味を持った俺は鴨に義弘の元に案内してもらう。

鬼島津と呼ばれた漢!!

会って話をしたい!!

しっかりと鴨には近くまで案内したら通常業務に戻るようにと告げ、他の皆には用事が出来たから先に大口城へ行っててもよいと告げた。


周りの者たちは諦めた表情で俺の後をついて来る。


伝林坊 頼慶が源藤斎に島津の兵と遭遇して大丈夫か?と聞いているが殿があの表情になるともう何を言ってもどうにもならないので諦めるしか無いとボヤいている…


皆もそうだ、そうだと頷いているがそんな事は当の本人の耳には届いていない…


ウキウキしている俺に皆が笑いながら付いて義弘の元へと向かう。


緊張しているのは鴨と頼慶とその部下ぐらいだ。


島津の兵たちはすぐに発見した。

いきなり皆で出て行ったらすぐに戦いになると思い俺1人で島津兵の進行路に立ちはだかる。


俺は武芸者、浅井 長政と名乗り、義弘と話がしたいと告げると兵たちをかき分け1人の漢が現れた。


義弘とはイメージが違うと思ったので川上 久朗か?と尋ねたら久朗だった。


よく見たら奥の方で義弘らしき人物が羽交い締めにされ胴体には何人もの男がしがみついて前に出るのをおさえていた。


そんな義弘の姿を見て俺は思いっきり笑ってしまった。


それを見た義弘は怒ったのだろう、男たちを振り解いて俺の目の前までやって来た。


横では久朗がため息をついていたので久朗に苦労しているんだねと同情した。


すると後ろから我々も同じ苦労をしているのですが…との声。

皆が出て来たので警戒する島津兵。


この場において60人対兵300が向かい合ってしまったが俺は皆、武芸者仲間と伝えると義弘は皆をよく観察し、満面の笑みでここで戦ったら俺らは全滅だなと言い放った。


それを聞いた島津兵たちが怒り出したが義弘は島津兵に対して事実を言っただけだと諭した。


島津兵はピリピリしているがそんな中、俺と義弘の話は弾んでいる。


旅行中で大口城へ向かう途中で近くに義弘がいると聞いて会いに来たと告げたがそうか、そうかと自分に会いに来てくれた事を喜んでいた。


横で源助と久朗が苦労話で盛り上がっていたが久朗の動きが一瞬止まる…


大口城に向かう途中??

私たちの行動が把握されていた??


そんな久朗に対して源助は敵意は無いから心配しないように小声で言う。


しばらく義弘と話していると300の兵で大口城を力押しで落とすつもりだと言い出した。


それを聞いて俺は大口城には赤池 長任や岡本 頼氏という中々の漢もいるらしいからまず無理だと言い、止めるように告げた。


敗走すると久朗も含め島津兵300は義弘を守る為に自分の命を投げ出して義弘を逃がそうとするぞと告げるが義弘は俺は負けないと言い張る。


そうか…

俺は荷物から竹刀を取り出した。

義弘に刀術と槍術どちらが得意かと問うたら刀術との事なのでそのまま竹刀を渡し俺にぼこぼこにされたら大人しく引き返すように告げる。


義弘は竹刀を何回か振り、確認しながらもしぼこぼこにされたなら考えると答えた。


結局、30戦したが義弘は1勝も出来ずぼっこぼっこされた。

しかし義弘が弱い訳では無い、むしろ強者に入る。

その証拠に武芸者、親衛衆、側近の一部が竹刀を用意して準備をしている…


ぼっこぼっこにされ、へこんでいる義弘に皆が準備して待っているから申し訳無いけど相手をお願いした。


笑顔でそう言う長政に対して義弘は心の中で鬼だ!!鬼がいる…と絶句している。


勝てないまでも良い戦いが出来ると思っていたのに何も出来ずにへこんでいる俺にさらに戦えと…


鬼だ!!鬼がいる…


義弘は顔を引きつらせながらヤケになり竹刀を片手に順番に挑んで行く…


久朗は挑んではぼこぼこにされていく義弘を見て驚いている…

まさか島津最強と思っていた義弘が多くの者たちに一方的にぼこぼこにされるとは思っていなかった。


確かにこの集団の者たちの強さは異様であったがここまでとは…


そう思っている内に徐々に義弘殿が互角に戦える者が出て来るようになった。

どうやらこの集団では強者から戦う権利があるらしい…


気がつくと久朗も竹刀を持たされていた…


あれっ?と思いながらも戦い始める。

相手は中村 一氏と言う文官だそうだ!!

私も腕にはそこそこ自信があったのだがこの漢、めちゃくちゃ強いぞ!!


結局10本中7本取られてしまった…

話を聞くと小姓を除くとこの中で2番目に弱いそうだ…


私はこれでも島津の重臣で島津の中でも強者の部類に入るのだが…


兵の中からも腕に自信がある者は竹刀、修練用の槍を持ち相手に挑んでいるが兵の中からは相手から1本も取れる者はいないようだ…


大口城へ攻め込んだ時にこの集団が相手にいたらと思うと恐ろしい…


この集団が大口城に入らず、こちらに興味を持ってこちらに来てくれたのは運が良かった…


命拾いをしたな…本当に…




























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