憂理ver
ずっと一緒にいよう。
うん。
ずっと、
微笑む二人が同時に目を閉じた。
一一永遠に…
二人の思い出話を語る声がかすれては赤い鳥居の下、小さな笑い声となって消えた。
チリィーン…
鈴が呼び声となって、まだ紅葉していない葉を二つだけ赤く染め上げた。
*
チリィーン…
赤い紐が揺れる。
鈴のついたお守りを握り締めたまま、これは夢なんだ。夢に違いないと赤い糸より長く深く川のように流れる赤い血を見ながら、僕は手を伸ばしていた。
哀理…
哀理はピクリともしない。
いつもの愛らしい笑みはなく、壊れた車の瓦礫に下敷きになったその姿は、とても深い眠りに落ちたような安らかな表情をしていた。
暗い影の下、死神の吐息を感じさせる青白い顔。
哀理!!
そんな…
僕の言葉一つ一つに、一喜一憂する哀理の姿が思い浮かぶ。
笑う哀理。怒る哀理。少し悲しそうな顔をする哀理。すぐにはにかむ癖はいつ頃からのものだろう…。でも、
そのどれもが今は遠くて…
哀理の額に流れる赤い血が記憶の中の哀理さえ遮るように、赤く染めていく。
体の全身が痛むが、その強烈な痛みより今の現実を受け入れる方が辛い。
嘘だろ…
僕は思わず思いっきり、稲荷神社で買ったお揃いの御守りを握り締めた。
記憶の二人が笑いながら、この御守り可愛いと狐様がピョコンと刺繍された御守りを手に取る。僕は水色が主体で哀理は赤色の御守り…。二人並べた御守りの狐様がこちらをじっと見てる。懐かしい神社の銀杏の木の香りがした気がした。
チリィーーン…
鈴が少し乱暴に揺れた。
少し怒ったようにこちらを見上げる狐様の御守りが何故か、どくどくと血が流れる手を介して、微かに熱を持っているように感じられた。
僕の鼓動が早くなる。
この願いさえ、叶うなら…何もいらない。僕は…どうなってもいい。
神様…
僕は息を切らしながら、強く強く一一強く…祈り願った。
お願い…
目を閉じて、姿の見えない神様にただひたすら懇願する。
"哀理を…哀理だけは助けて"
御守りの狐様が目を細めて一一
確かに小さくペコリとお辞儀した。