あなたに贈る想い
初投稿「君に伝える想い」の美桜sideです。
そっち読まなくてもたぶんわかります。
私は春日美桜16歳、高校1年。私には同い年の幼なじみがいる。名前は冬崎樹、男の子だ。彼とはただの幼なじみだと思っている。
最近までは。
そう、最近までは。だから‘思っている’、ではなく‘思っていた’がふさわしいだろう。気がついたのだ。樹が私を女の子として好いてくれていることを。これから綴るのは、今まで気づかなかった私の長い長い言い訳である。
私と樹はそれはもう仲がよくて、生まれたときからずっと一緒だった。家が隣で、幼稚園も小学校も中学も一緒で、高校も同じところに進学した。流石に高校まで一緒なのはどうなの?と思われるかもしれないが、私も樹も頭はいい方で、公立に通いたいと言っていたから必然的に絞られる高校が同じだった。その中で家に近いというありがちな理由で志望校を決めたので、高校が同じになったことに違和感は感じ無かった。
樹は結構人見知りをするので、学校の中ではあまり話しかけてこない。たまに話しかけてくれることもあるけど、本当に必要最低限だった。そんな樹だったが、小学5年生くらいだっただろうか、私に「好きだ」と言ってくれた。そのとき私は幼なじみなんだから好きなの当たり前じゃん急にどうしたんだろ、と思ったが気持ちを言葉にされるのは嬉しいな、とも思ったので、「わたしも!」と素直に思ったまま返した。…………今思い返して気がついたがもしかしてこれが引き金じゃないだろうか。たぶん……いや確実にそうだな。それからほぼ毎日、もちろん現在も樹は私に「〇〇なところが好き」とか、「〇〇なとこがかわいい」と言ってきた。そのたび私は「ありがとう」や「樹のそうやって素直に褒めてくれるのは良いとこだよね」、と照れもせず返していた。高校生になってから思い出すとこれで何も思わなかった私やばいな。
でもまあ私の言い訳も聞いてください皆さん。小5だよ?恋愛感情なんて難しいことは当時の私にはわからないです。そんな10歳そこらの頃から習慣のように好意を伝えられてたら誰だって‘like’だと思うでしょ!?
……すみません最初の告白を流した私が全面的に悪いです。
さて、本題。
そんな激にぶだった私が、先に述べたように最近やっとこれらの言葉が告白だったと気づきました。きっかけは中学の時にできた親友で、私の通う高校よりも2ランクくらいレベルの高い私立に通っている葉上明日香、通称あっちゃんだ。
私と樹は基本的に学校では話さないが、登下校は一緒だ。小学校の時は集団登校だったし、中学の時は学校に着く時間を計算したらまあ大体出る時間がかぶる。高校も同じような理由で一緒に登校していた。ただ変わったことが、電車通学になったこと。それとクラスが同じになったこと。
中学の時は私と樹は同じクラスには一度もなれなかった。2~3年生に至っては棟も違った。なので樹と登校していることを知っている人はほぼいなかった。余裕を持ちたかったから早めに家を出ていたのもあるだろう。だから高校生になって家の最寄り駅で私と樹が一緒にいたことに驚いたのだろうあっちゃんが、『美桜って冬崎君と仲良かったっけ?』と連絡を取ってきた。私は、「そうだよ、幼なじみだからね」と返した。けれどあっちゃんは何か腑に落ちなかったのか、『本当にただの幼なじみなの?付き合ってるわけじゃないの?』と言ってきた。
そんなこと考えたこともなかった。何というか、私の中で樹は「樹」というカテゴリーだった。うまく伝えられないけど、そんな感じなの。と説明すると『でも、冬崎君はあんたのこと恋愛対象として好きなんじゃない?私冬崎君が友達と楽しそうに話してるとこ見たことあるけどあんなにわかりやすく顔に出てなかったよ』と返され、学校にいるときの樹の様子を思い出してみる。確かに私といるときほど感情が顔に出ていない。彼は人見知りはするが、仲良くなった人には普通に自然体だ。記憶をたどっていると、あっちゃんが追い打ちをかけるように『冬崎君に好きだとか言われたことないの?』
「…………………………」
私は混乱していた。もしかして、日頃のあれは告白なの???私は毎日告白されているの???訳がわからなくなってきた。ら、あっちゃんがしびれを切らして『ねぇ、心当たりあるんでしょ』と突っ込んできた。「小5の時からほぼ毎日」と私が言うと、数秒沈黙した後あっちゃんは大爆笑だ。流石にひどいと若干涙声で言うと、『あんたの方がよっぽどwww』と返されぐうの音も出ない。それから落ち着くために小一時間あっちゃんに話を聞いてもらった。そしてやっと落ち着いてきた頃に『まあ友達とか家族の枠の中に冬崎君がいないなら、あんたの中にも少なからず冬崎君への想いがあるんじゃない?』といって私に爆弾を投げつけ、『じゃーねー』と言って電話を切った。親友よ、一番最後に言うことじゃねぇだろぉぉぉぉ!!
嘆きながらベッドに入ったその日はろくに眠れる訳もなく私は一晩ずっと考えていた。明日どんな顔して樹に会えば良いの……とか、5年弱も気づかなかった私ってポンコツか??とか、私は樹が好きなんだろうか?とかそれはもういろんなことが頭の中をぐるぐる巡って、でもきっとこんなに悩んでも樹が隣にいない未来を想像できないってことは、そういうことなんだろう。だけど!いろいろなことに今一気に気づいたキャパオーバーな私の頭にもう少し状況と気持ちを整理する猶予を下さい!!!
もう少し落ち着いて、樹と私の気持ちをちゃんと受け入れることができたら、今度は私から、あなたに伝えるから。
あなたにこれまでもらってきた気持ちと言葉を、今度は私があなたに贈るから。
※補足
彼女たちの中学は一学年5クラス、1~3組が同じ棟、4,5組が違う棟です。
美桜は課題とかを朝早くに学校に行ってやる派なので、朝練ある組より少し遅く、ほかの生徒が来るより早く学校に着きます。樹はそれに合わせてます。
閲覧ありがとうございました。