発端
中学卒業式の日、僕は美晴に告白した。
僕は度胸が無かったから、悩みに悩み抜いて、告白を決意するのに時間がかかってしまった。
美晴はとてもうれしそうに、僕の告白を受け入れてくれた。
卒業前に和人が言っていた。
「卒業したら逢坂に会えなくなるかもしれないぞ!!」
この和人の言葉は、実は美晴の親友である灯が、和人と手を組んで、僕から告白する様に仕向けるための言葉だった。
そして彼らの策略にまんまと騙された僕達は、おかげでとても幸せな日々を送ることとなった。
美晴が僕と同じ高校だと知った時は驚いた。
運命かと思い舞い上がったが、後に和人と灯によって、あらかじめ仕組まれていた事を明かされる。
半ば騙された形ではあったが、和人が悩んでいた僕の背を押してくれた。
それから毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかった。美晴との思い出の日々は、今でも心の中で、まばゆい光を放っている。
『あの日』が来るまでは。
20XX年8月1日、高校2年生の夏、地球規模の大災害が起きた。
突然、地球上の全ての人間の身体的性別が真逆になった。
男性は女性の身体に、女性は男性の身体に。
一人二人が変化した程度なら、到底信じがたいおとぎ話の様な話だが、地球上全ての人間がそうなってしまったのだから納得するしかない。
言葉だけ聞けばギャグの様なユニークな天変地異だが、後に『大量離婚問題』『解離性障害患者の異常増加』『離職者、自殺者の増加』など、数多の深刻な社会問題の引き金となった。
身体的特徴が変化しても、心や記憶、感性など、精神面は一切変わっていない。
女性の体になっても、心は女性を求める。
今まで大好きだった美晴は、事実上完全な男性になってしまった。
身体的な特徴でしかないと割り切ろうとしても、目に映るのはどう見ても男性。
友人としてならまだしも、恋人としての目を向けるのは到底難しい。
時々していたキスは、その日を境に全くしなくなった。
美晴が好きで仕方がないのに。頭では分かっていても、割り切れない感覚が苦しくて、辛くて仕方がなかった。