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指輪

作者: 芥屋 葵


-男-

左手薬指の指輪は心臓に直結する血管がなんとか…と昔話をきいたことがある。


結婚とは実に重たいものだ


最近は“婚外恋愛”という上手な表現がされているようだが、僕はまさしく婚外恋愛中の身だ。


いや、自信を持っていうわけではないが、毎日同じことの繰り返しという生活にいわばスパイス的な存在に出会った。

男というものは単純なもので掴めそうで掴めない、そんな自由気ままな女に弱いらしい。

おまけに比較対象からしたら若いので余計にそうだ。

言い訳がましいがこれが狩猟本能と思っている。

彼女の術中かどうかは知らないが、まんまと渦中にいる。


僕のルールとして彼女といるときは指輪は外し、妻の元へ帰るときにはつけるようにしている。

これが気持ちのスイッチになるのだ。

ついでにいうと彼女への配慮と妻への配慮

そもそも彼女は僕の事を独身と思っているだろうし、その方が傷付けずに済む。


僕は二重生活を謳歌している。


一度たりともこのルーティンワークを忘れたことはない。


仕事も家庭も恋も何一つ不自由なく上手くいっているのだ。


妻が嫌いとかでもないし、離婚なんて考えたことなどない、そもそもそんな労力はない。


でもこれからも僕は完璧であるつもりだ。



-彼女-

指輪の逸話は幼い頃に聞いて希望にみえたけど、大人になって思った。


相手を縛る鎖だと。


取り残された独身女の戯言だと思えるが、結婚というものに価値を見いだせないいわば不適合者というわけだ。


恋愛は楽しい、相手しかみなくていいから。

結婚は苦痛だ、相手の親・親戚が付き纏うから。


そんな不適合者でも寂しくもなるし、人肌恋しくもなるので相応な恋愛は嗜む。


相手は少し年上の独身…だというが。

私といる時には指輪外している。


気付かないとでも思った?

指のサイズに合っているそいつも暫くつけていたら薄っすらでも跡になる、微かに浮腫むの。


だから言ったでしょう、それは鎖にしかならないと。


知らないふりして付き合うのもまだ暫くは楽しんであげる。



-妻-

健やかなる時もとか、病めるときもとか誓いを形にした給料3か月分だとか言う指輪は幸せの象徴だった。

くすまない輝きに永遠をみていた。


くすまない…と思っていただけで現実は見えていなかった、気づいていなかった“くすみ”を。


何月何日かなんてはっきり覚えていないが、ある頃を境に夫の変化に気づいた。


これといった出来事はないが、女の勘というものだろうか、私だってこれでも女の端くれだ。


不自然な程完璧に家庭を支える夫に、不自然な指輪の跡

一度外し再びつけると心臓側の方に気づくか気づかないかのズレが生じる。


見てないとでも思った?

カマかけて「洗い物してくれる時くらい指輪外したら?」って声かけた時になんて返事した?

「一度も外したことない大事な指輪」って答えたけどその外したことのない大事なものを外す理由…上手に答えられる?



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