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空に浮かぶ雲が早く流れ、時ごとに模様を変えていく空を見つめながらマリーネは今日もお茶を啜る。

穏やかだわ…こんな空の下でお茶が飲める日が来るなんて、考えもしなかった…

結婚して数ヶ月経ち、季節も移り変ろうとしている中、今日のようにボケっとしながらお茶を飲む以外のことをマリーネはしていない。

というか、シリウスに与えられていない。

結婚後に変わってしまった生活はとても幸せそのものだが、そこがもどかしく思うところである。

自発的にと考えても、本当にシリウスの妻としていていいのか、自分が出しゃばることでシリウスに迷惑をかけてしまうのではないかと臆病になってしまっていた。

そして、シリウスがマリーネに対して仕事を与えないことも、その思い込みを強くさせる。

私はどうなるのかしら?

シリウスは相変わらず、甘く優しい。

でもそれだけである。

これからは恋人と言われても、恋人らしいことは何一つもされていない。

夜に部屋を訪れるにしてもドアを開けたまま、素晴らしく紳士な振る舞いで家族同士でするような軽いハグをさえも無いのだ。

マリーネはそのシリウスが去っていく後ろ姿を見るといつも切なくなって、呼び止めたい気持ちに駆られてはグッと我慢する。

はしたない、そう言って軽蔑されるのを知っているからだ。

口づけの一つもしない恋人を、ましてや愛の一つも囁かな恋人を、果たして恋人と言っていいのだろうか。

マリーネとシリウスは互いに気持ちが通じ合えるように努力している最中で、決して惹かれあっている訳ではない。

一歩も踏み出さない関係は、まだ彼の中でそれなりの考えと高まらない気持ち故だとマリーネは納得しながらも不安になる。

気持ちはどうにもできない。

それが恋であれば尚更のこと。

本にも書いてあったように、抑えなられない気持ちが爆発して駆け落ちや決闘など何でもあり得るのが恋愛…現にアイルから聞いた噂の類は愛憎溢れるものばかりだった。

二人でも向き合って頑張ろうとしてもうまくいかなかった、そんな時に運命的な人に出会えた、と言う未来を想像することは簡単だ。

容姿端麗で優しく、真面目、しかも良家の伯爵様、そんなシリウスの相手などいくらでもいる。

その時は…諦めなくちゃ…ね…

マリーネは静かに目を閉じて、滲みそうになる涙を堪えた。

しがみつきたかった結婚、なのにシリウスに嫌われるのはもっと嫌だと思うようになってる。

自分が…私が…シリウス様の傷を治せる唯一の女性でありたい。

そんな身分不相応な願いが湧いきては、マリーネは頭の中で打ち消す。

王子様はお姫様と恋をする様に、いつかシリウスは相応しい人と恋に落ちる、そんな妄想をマリーネは信じていた。


「マリーネ!」


マリーネが物思いに耽っていると、仕事のはずのシリウスがマリーネを呼んで足早にこちらに向かってくる。


「な、何か…ご用件が…」


もしかしたら、たった今想像していた未来かもしれない、などとマリーネは緊張していた。

シリウスの顔もそれを思わせるように強張っている。


「…すまない…王室主催のお茶会に呼ばれた…君も一緒にと。」

「…わかりました。」


シリウスが言わなくてもマリーネは察した。

この前の夜会は本の気まぐれで、シリウスの本心はマリーネを連れて歩きたくはないのだと。

嫌々だった妻から、マリーネは今ようやく妻見習いになったというところだろうか。

しかし仮の妻ということには変わりない。

別れるかもしれない妻を連れて王室でご挨拶なんてしたくも無いわよね。

マリーネは唇を噛み締めて、シリウスをじっと見つめた。


「不安がることはない。気苦労はするだろうが、私がずっと側にいる。」


シリウスの甘い言葉もマリーネの耳に入ってはいなかった。

何も無ければいいのだけれど…

目立たず、ひっそりと、まるで侍女のようにシリウスの背後に控えていればきっと…

しかし、マリーネのそんな考えはお茶会が始まってすぐに砕かれた。

ストックをば。

最近不幸続きでまだまだ書けない日が続きます。

申し訳ないのですが、ご感想の返信ももう少しお待ちください。

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