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マリーネは何故か夜会に居た。

煌びやかな世界で自分だけ浮いているような気がしてならないが、シリウスはマリーネが夜会に参加することが大切だという。

それならばとマリーネも参加したのだが、一向に参加した意味を分からずにいた。

マリーネとしては世間を知る為に良い事かも知れないが、こんな見た目のマリーネを妻だと言わなければならないシリウスのデメリットの方が大きいとしか思えない。

しかも、マリーネが世間の御婦人方と上手くやって行けそうもない。

見る限り、マリーネは御婦人方から警戒されていた。

愛人顔の所為かしら。

マリーネがふぅとため息を吐くと、アンニュイな色気が撒き散らかされて、場が荒れる。


「大丈夫か?」


心配するシリウスがマリーネに声をかけると、マリーネは潤んだ瞳でシリウスを見つめた。

最近のマリーネは無駄に色気を漂わせている。

それはシリウスを意識して恥じらいを持ったことで、むせ返るほどの色気を作り出していた。

マリーネ自身は色気のことに関しては気づいてはいないが、周りのよそよそしさから違和感は感じ取っている。


「本当に大丈夫なのでしょうか?」


シリウスはマリーネの色気に一番困惑している人間でもあるが、それが自分に対して意識しているからこそだと分かっていて何も言えなかった。


「大丈夫だ。でも、今日は逃げたりしないでくれ。」

「…はい。」


前回の失態にマリーネはシュンとして下を向く。

よく考えたら、シリウス様には想い人がいるのよね。

マリーネは思い出してまたため息を吐いた。

それでも自分と関係を築きたいと言ってくれたシリウスを信じて、マリーネは口を噤んだ。

シリウスが知り合いと話すたびにマリーネは隣で微笑む。

その度に色々な反応をされて、真実に近い邪推をしては、少しずつ傷ついていった。

マリーネでさえ傷ついているのだから、当然シリウスも不名誉な視線を不快に思っているだろう。


「気持ち悪い奴らばかりだったな。」


シリウスの言葉はマリーネの罪悪感を刺激する。


「けれど、君は私の妻だと宣言することはできたな。」


その言葉にマリーネは思わずシリウスの顔を見た。


「君は私の妻だ。妻は夫の側にいるのが仕事だ。それに君がいることでよかったこともある。」


シリウスがにやりと笑う。


「…良かったこと?」

「ああ。君が居てくれてよかった。」


マリーネの顔に熱が帯びていくのがわかる。

その笑顔…反則だわ。今絶対に顔が赤いわ。

顔色が分かりにくい色黒でよかったとマリーネは思いながら、シリウスの笑顔を見ていた。


「お姉様!」


聞き覚えのある声にマリーネが振り向く。

妹のアイルの声だった。


「アイル!」


マリーネは思わずアイルにハグをする。

シリウスの手前、会うことを自重していたため久々の再会だった。


「お姉様、また痩せました?」

「…ええ少し。」


アイルの言葉にマリーネは困った顔で微笑みながらそう返す。

マリーネは自身の気持ちについては分からなかったが、シリウスに対しては少しでも自身に対しての不満が無いようにと、まずは元凶である胸を小さくすることから始めていた。

その為にかなりの無理のダイエットをしている。

アイルは鋭い目付きで夫であるシリウスを睨みつけた。


「お姉様は前くらいが魅力的で丁度良いのです。今は痩せすぎですわ。ねぇ、シリウス、様。」


アイルに言われて、漸くマリーネがダイエットしていることに気づいたシリウスが慌てて首を縦に振った。


「…無理はして欲しくない…」

「ですって。お姉様。」


アイルはマリーネの方を見ると、いつものように無邪気に笑った。


「それよりも…いいのかしら?」


マリーネが辺りを見渡す。

それまでアイルを囲んで賑やかに談笑していたご令嬢方は少し距離を置いてマリーネ達を見つめていた。


「ご紹介遅れましたわ。姉のマリーネお姉様よ。」


アイルはマリーネをご令嬢方に紹介する。

マリーネは紹介を促したかった訳では無かったのたが、ニコリと笑顔で会釈した。

しかし、ご令嬢方は自己紹介することなく、言い訳をしながらその場を去っていく。

その光景にマリーネはやっぱりだと思いながら、小さく肩を落として下を向いた。


「…ごめんない。」


マリーネが呟く。


「いいのよ、お姉様。アレは友達モドキだから。」


それでも残ってくれた三人の友達がマリーネの元に近寄ってきてくれて、自己紹介をしてくれた。

マリーネは嬉しさのあまり、少し涙ぐんでしまう。


「ほら、私のお姉様は可愛いでしょう?」


アイルが自慢気にそう言うとお友達の方も笑顔でそれを肯定する。

マリーネは気恥ずかしくも思ったが、生まれて来て一番嬉しい日となったこの日を笑顔で喜んだ。

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