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シリウスが直々に取ってきてくれたドレスに着替え軽めの食事を取ったマリーネは、促されるがまま、服を買うために出掛けることとなった。

マリーネはシリウスから差し出された手を取って馬車に乗り込む。

この時のシリウスの顔を覗き込んでマリーネは注意深く様子を伺っていた。

目を逸らしてばかりで良く見ていなかったシリウスの顔は絵本から出てきたような色白で美しく、改めてマリーネは気後れしてしまう。

でも…嫌がって…は無いみたい。

言った通り、シリウスはマリーネが手を重ねても気にしていない様だった。

それなら良かったと、マリーネは安心して馬車に乗り込む。


「何かこだわりはあるか?」


シリウスに問われ、マリーネは考えた。

今までは母や妹の購入したものしか着てこなかったマリーネにとって、服屋というものは未知の世界である。

これほど美しい容姿をしているシリウスならば潔癖であっても恋の一つや二つはあるだろうし、女性にドレスの一着や二着プレゼントしたことくらいはあるだろう。

もしかしたら、マリーネよりも詳しいかもしれない。

自身の特徴を考えると注文は沢山あったが、最低限要望を伝えてシリウスにお任せすることにした。


「できれば大きめのサイズが置いてある、安価な所が良いです。」


相場の分からない買い物に、マリーネは頭の中で持参金と今まで貯めておいた金貨を数える。


「値段は気にするな。」

「引きこもりですのでお小遣いはある程度貯まってはいますが、限りがありますので。…」


シリウスはそう言うが、頭で計算した金額は増えることなく今後減っていくものである。

遣り繰りは必要だ。


「ドレスはこちらが出す。もちろん、今日は既製品を買うが、後日オーダーした物も買う。伯爵家の妻が見窄らしい姿ではいけないからな。」


援助してもらえることは嬉しいが、マリーネはある疑問が浮かぶ。

けれど、伯爵家の妻は娼婦の様な容貌なのは大丈夫なのかしら?

マリーネはそうも思ったが、言うとそもそもの話になってしまうので黙っていた。

マリーネの連れてこられた店には沢山のドレスがあり、普段使い用から、夜会用、今朝まで着ていた透け透けのネグリジェまであった。

思ったよりも沢山の種類があることに、マリーネは安心する。

何せ、マリーネは似合うドレスが少ないのだ。

定員からオススメされるドレスをやんわりと断り、自分の手で数着、多目に選ぶ。

良さそうだと思っても着ることができないこともある。

既製品ならば尚更のこと。

試着室に向かう、その前にマリーネはシリウスに一言声を掛けた。


「申し訳ありません、少しお時間がかかりますが、大丈夫ですか?」

「いや、大丈夫だが、選ぶの早くないか?女性は長いと聞くが、それにしても早いだろう?もっとゆっくり選んでいいのだぞ?」


早い…のかしら?

シリウスを待たせているので急いではいるのだが、胸が出るドレス、胸元に余裕の無いドレスは着れないと初めから分かっていたので事実これくらいしか選べなかったのだ。


「…私はこれからが長いのです…」


マリーネはアイルや母よりも着替えに時間がかかった。

それは慣れてないドレスだと胸を押し込んだ拍子に破ってしまうため、慎重に脱ぎ着しなければならないからだ。


「気にするな。そうだな…できたら…着た姿というのも見せて欲しい…」

「はい、もちろん。シリウス様には伯爵家の名に恥じないような服かどうかをチェックしていただきたいです。」

「…うん…まぁ…それでいいが…」

「それでは行ってきますわ。」


そう言って数着を試着したマリーネだったが、実際にマリーネが着ることのできたドレスは一着だけだった。

そのドレスを見せるためにマリーネは試着室から出る。


「シリウス様…こちらはどうでしょうか?」


マリーネとしては貞淑な装いを心掛け、これなら大丈夫なはずだったが、マリーネのドレス姿を一目見たシリウスの顔は曇っていた。


「…他にはないのか?」


シリウスに問われて、もう一枚まい着れるドレスがあることを思い出したが、それには少し問題がある。


「お連れ様はお胸が大きくていらっしゃいますので、既製品ならば自由が利く胸の空いたドレスの方がよろしいかと。」

「…もう一着着てみますわ。」


タイミング悪く店員が口を開き、シリウスに何かを言われる前にマリーネは即座に試着室へと戻った。


「…いかがでしょうか。」


そのドレスは露出は無いものの胸の下に切り替えが付いていて、そのせいで凄く胸が強調されてしまっていた。

決してドレスが悪いわけではないが、マリーネが着るとどうしても変な色気が追加されてしまう。

今着ているドレスも見えないからこその色気というものが漂っていた。


「これは…」


その姿にシリウスも唖然としたのか言葉を失い、固まってしまっていた。

1枚めの野暮ったい服よりは似合ってはいるが、張り詰めた胸の布は暴力的に男性を誘う。


「やはり、前の服の方が…」


自信なさげにマリーネがそう言うと、シリウスは座っていたソファーから立ち上がった。


「それにしよう。」

「いや…でも…」

「似合うならばいい。屋敷の中ならば問題有るまい。」


屋敷内なら大丈夫と言うことは、シリウスはマリーネの風貌に慣れてきているということだろうか。

至らないマリーネだが、シリウスから少しは許容されたことに嬉しさを感じた。


「…では、これを。」

「他には無いのか?」


マリーネが着替えて試着していたドレスを店員に渡すが、シリウスはまだ足りないのではとマリーネにたずねる。


「サイズが無いので…」

「では今日のところはそれしておこう。次は宝飾品だ。」


シリウスは何か勢いづいたように、またマリーネの買い物するという。

しかし、宝飾品はサイズはあまり関係ないので今持っているもので充分事足りる。


「嬉しいのですが、宝飾品は大丈夫でごさいます。」

「ドレスに合わせて宝飾品を買わねばなるまい。」


もしかしてお洒落とはそういうものなの?

何も知らないマリーネは意図も簡単に丸め込まれて、シリウスから宝石店へと連れ込まれた。

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