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話が終わるとマリーネは一人、部屋ので枕を抱きしめて考えていた。

友人という存在を知らないので悲しさは全く感じていなかったのだが、その言葉を言った時のシリウスの顔でなんとなく友人が一人もいない自分が憐れな存在であるとわかった。

あの後すぐにシリウスが手を取ってまずは友人になろうと宣言してくれたことは困惑と同時に僅かに嬉しさもある。

そもそも夫婦とは?

家族になるのだから、歳や異性であることを考えてガイルのような存在が一人増えるものだと思っていた。

確かに両親はまた違う、互いの間に所謂恋人同士の様な恋情があるような気はする。

果たしてマリーネとシリウスの間にその様な情が必要なのか、否か。

そして望んだとしてその恋情は生まれてくるのか。

シリウスがマリーネに好意…

それだけはないな、とマリーネは頭を振った。

あれ程拒絶したシリウスがマリーネを女性として見ることはないだろう。

今現在、友人として友好的に思ってもらえていること自体が奇跡なのだ。

そのまま友人として仲良く…お家を、シリウス様を支えて行ければいいけれど…

その上で考えるべきことは沢山あったが、マリーネは難しくて考えるのをやめてしまった。



「今日は何をしていた?」

「今日は…屋敷の中を見て回っていました。」


シリウスから問われ、マリーネが答えた。


「屋敷内か…何処を回ったのだ?」

「シリウス様の書斎や私室など行ってはいけなさそうなところは回っていません。客室や広間、厨房などは見ましたが、ただ戴いた屋敷の図面と場所の確認が主で…」


何か不都合でもあったのだろうか、とマリーネはまるで報告するかのように事務的に、かつ事細かに話す。


「いや、咎めているつもりではない。庭の方は回ってないようだな。花畑程は広くないが行ってみるといい。君は花が好きそうだから。」


怒られると思っていたマリーネの予想とは反対に、シリウスは諭すような優しい口調だった。

以前花畑で浮かれてしまったせいだろうか、そのシリウスの気遣いにマリーネは恥ずかしく目を伏せる。


「ええ…好きです…」

「それならよかった。きっと気に入ってもらえるだろう。」


今、シリウス様はどんな顔をしているのだろうか?

その口調のように優しく微笑んでいるのだろうか?

恥ずかしさと共にこんな自分に対して優しくしてもらえるという恐れ多さに気後れして顔を上げられずにいた。

なんでこんなにも私に対して甘いのだろう…

マリーネはこの状態のシリウスのことを兄がいるのならばこの様な感じなのかな、と思う。

毎日の晩餐や時折一緒にするお茶会の間、何を話せばいいのか分からないマリーネに優しく話を振ってくれる。

ほとんどがマリーネの屋敷の中で何をしているのか、と言う話だ。

それは監視する目的でもあるのかも知れないが、シリウスの様子も口調も優しく、拙いマリーネの話を真摯に聞いてくれる。

その柔らかな雰囲気に飲み込まれて本当の家族になれる様な気がしないでもないが、シリウスはそれを望んではいないだろうことはマリーネは知っていた。

しかし、日に日にマリーネがガイルやアイルに接する様に甘くなってくるシリウスに戸惑いは隠せなかった。

これは何かの罠なのでは、とマリーネは疑ってしまう。

シリウスの家で、シリウスと過ごす日々は引きこもりマリーネにとって刺激が強すぎて、心が落ち着かない。

甘くして頂けなくてもいいので、明日も何事も起こりませんように。

その願いは叶わないのだけれども。

優しく甘くなるシリウスと対照的に使用人のマリーネに対する処遇は日に日に厳しくなってきていた。

湯浴みが終わって、マリーネに用意されていた寝間着は初夜で着たネグリジェだった。


「これは?」


それを手に取り、近くにいたメイドにマリーネが尋ねる。


「すみませんが、他の衣服は洗濯しておりますので、こちらをご着用ください。」


メイドはにこやかにそう言って、足早に部屋を出て行ってしまった。

マリーネを湯浴み場に一人置いて行くこと自体、考えられない事だが、マリーネはあまり気にしていない。

それが嫌がらせだと分かっていたが、マリーネは逆に安心する材料になっていた。

シリウスが甘い分、この家の使用人が厳しいとバランスが取れた様な気がするのだ。

夜なら誰も見ることは無いし、大丈夫でしょう。

ガウンを上から羽織り、マリーネは一人部屋へ戻る。

初夜から誰も訪ねてこないマリーネの部屋はいつしか安心できる場所になっていた。

少しぐらいの嫌がらせならば、実家でもあったので慣れている部分もある。

朝になれば一枚くらいは用意してもらえるだろう。

マリーネは呑気にそんなことを考えながら眠りについた。

入院中暇なので更新します。

手術受けて大丈夫そうだったらまた更新します。

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