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短めです…。

意識があった最後の場面から考えて、あいつの仕業以外に考えられないだろう。他の可能性…例えば、意識を失った私を他の見知らぬ誰かさんが誘拐したとかか?翔にがっちりホールドされていたあの状態から?


いや、そんな突拍子もないことは起こらない、と思う。今の私が置かれている状況が「突拍子もない」としか言い様がないので何とも微妙な感じだが。


でも、でも他の見知らぬ誰かさんが突然私を誘拐して連れて来たと考えていたい気もするのだ… 翔がこんなトチ狂ったことをしでかすようなやつだったと思いたくないから。女子を裸に剥いて転がしておくなんて大概下衆な話だと思う。


だって今まであいつは、告白してくる前から、それこそ出会った時から優しかったから。




「あの色見えにくいよね。良かったら僕のノート見て写して?」

ある講義で板書された言葉の羅列が、赤のチョークで書かれていて私にはよく見えなかった。色盲ではないが黒板に白のチョークで書かれたものに比べると見にくいし上手く読み取れなくて、でも近くに知り合いもいなかったから聞けなくて困っていた。


そんな時、初対面の私にわざわざ声をかけてくれたのが翔だった。隣に座っていた翔は、私が何のアクションも起こしていなかったにも関わらず、困っていることに気付いてくれたのだ。そのノートのお陰で私は講義についていくことができた。


ただ私は、人の顔を覚えるのが苦手だ。直ぐに忘れてしまう。だから、助けてもらったのに、次の時に声をかけられても誰だか分からなかった。


「この講義も一緒だね。よろしく!」

でもそれすら見越したように、翔は何度でも声をかけてきて、結果的に私はあいつを認識した。何故か被っている講義が多かったから会う機会も多かった為もある。1日に2回以上、なんて頻度で会って話しかけられればいくら何でも覚えるだろう。


それでも、話しかけてくるとは言っても挨拶とか講義のことくらいで、飲み物をたまに奢ってもらったりもしたけど、翔の印象は精々「よく話しかけてくる優男」程度のものだった。友達と呼べる程の存在でもなかったのだ。


私の世界にいたようでいなかった、曖昧な存在。

なのに突然告白してきて煩いほど好意をぶつけてきたやつ。


そして、気付けば平然と隣にいるようになった人。


今私の周りに造り上げられているこの空間が彼の狂気の結晶だとしたら、もしそうなら、

…彼はこの狂気をずっと内で秘めて育てていたってことじゃないか。私のすぐ隣で。優しさと甘さで何重にも包み込んだ上で。



ああ震えが止まらない。寒さだけじゃない、身体の奥底から立ち上ってくるような激しい震えに歯がガチガチと音を立てる。


あいつの、あのいつもの笑顔の裏に狂気があった?


甘やかすような言動の陰で私を閉じ込める思案をしていたのか?



…信じたくない、な。



信じたくないと思えるほど、あいつを無条件に信用しきっていた自分にまた気付くことになって、私は戦慄した。




黒いだけの平衡感覚すら狂いそうな空間で思考の海に溺れていた、否溺れる他なかった私は、私を閉じ込めている翔が私の様子を何処かで観察していることなんて思いつきもしないままだった。

作者が鬱になりそうです…。話動いて!!

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