第9話 プログラミング
第9話 プログラミング
クウと同居している意識は1つだけではなかった。普段会話するのは一人だけだが、時折意識の片隅に触れると警告する者がいる。
「ここから先には、行ってはならん。というよりお前では行けない。行くときにはわしから鍵を奪わねばならない」
クウはこの存在を“門番”と呼んでいたが、クウの意識の中なのにこの先とはどこなのだろうと不思議に思うこともある。従って、この門番とは親しく会話することはないが、もう一人の同居者としては数に入るのだろう。まてよ、もしもこの先というところに、まだ同居者がいるとしたらクウの生命はいくつの意識を抱えている事になるのだろうか。
マイの提案だったが、クウの同居者に名前をつけることになった。クウが二人いては話し辛いからであったが、コウという名前を彼は気にいってくれるだろうか。少しの心配はあったが、マイはクウに向かって呼びかけて見た。
「コウさん、いらっしゃいますか~」
「いるけど、何の用かな?」
返事をしたということは、コウは自分の名前を受け入れてくれたのだろうと思ったが、コウにとっての名前はただの認識コードと同じで人格の曖昧さを回避するためには、どのような名前でもよかったのだ。
今まで人前にあまり出たことの無いコウであったが、クッポに興味を持ったらしく、ライにクッポの情報を聞いてくる。
「プログラムというトリガーない?」
「トリガー?」ライには何のことかわからない。
「じゃあ、ボタンは?」
「ボタン?」
「ライ、どうやってクッポに命令しているの?」
「思ったり、言葉で伝えたり…」
「じゃあ、プログラムしたいって言ってみて」
「クッポが言語は何にしますか?って聞いているよ」
「しめた。高級言語が用意されている。基本言語って答えて」
「コウ、わけのわからない記号が押し寄せてきた~」
「そうか~、ライを介在させるとクッポの操作が難儀になることがわかった。何かいい手を考えて見るよ。取り敢えずキャンセルしておいて」
つまり、コウが直接クッポを操作できないとクッポの性能をフルに活用できないことがわかっただけであったのだ。