第8話 2つの人格
第8話 2つの人格
「クウは何が出来るの?」
「何もできないけど、変なことがあるんだ」
「変なこと?」
「前にも言ったけど皆本気にしなかった」
「もしかして、もう一人の自分のこと?」
「そうだけど…」
「よし、真剣に聴くから話してみてよ」
ライは3人だけとなった今、どんなことでも知っておく必要があると思っていた。
「じゃあ、話すね。こうして二人と話しているのは僕なんだ」
「それはわかるよ」
「でも、もう一人というか何人か僕がいるんだ」
「確か前にもそんなこと言ってたよね。そのもう一人のクウは俺たちと話ができるのかい?」
「試したことはないけど、頼んでみるよ」
…
「僕はクウ。専門は数学と情報処理関係全般になります」
「でた~」
「あなたもクウ?」
「演技じゃないよね?クウ」
「数学って何?情報処理って何?」
ライもマイも驚きと戸惑いで好き勝手なことを口走っているのであった。
「僕はクウだけど、意識と言えばいいのかな?それは違うものです。この地球において生命と意識は数学の分野でいう写像の全単射となっていましたが、生命と意識は別なものなので必ずしも全単射とは限りません。この全単射という表現も正確ではありませんが、現段階ではそう理解しておいてください」
もう一人のクウはそう言うと、元のクウに戻っていた。
「ねえ、いつものクウ?」
「そうだけど」
「クウはいつもあんな人と生活しているの?」
「そうだよ」
「じゃあ、全単射って何かわかる?」
「最近、ようやく分かった。つまりは1対1ということだね。生命1つに意識が1つということだよ。この意識も難しい表現をしていたけど、僕のレベルに合わせて意識と呼んでいるみたいだね」
「じゃあ、クウは生命1つに意識が2つということ?」
「もう少しあるみたいなんだ」