第5話 案内鳥
第5話 案内鳥
村の様子を見ようと思ったが、どの方向がそれなのかわからない。空にはコンパス鳥が円を描いて飛んでいて、早く案内がしたいと言っているようだった。それがその鳥の役目なのだから仕方がないが、ふとライは思い立った。
「村に案内してくれるかもしれない」
「でも、どうやってそれを鳥さんに伝えるの?」
「ここに呼んでみよう」
「鳥さん、ここに来て~」
するとコンパス鳥は、その呼びかけに応えるように舞い降りてきたのであったが、ライの肩へと降り立ったコンパス鳥を見てクウが言った。
「この鳥、鳥じゃない」
その鳥は精巧なメカで生物ではなかった。しかし、これがメカであることをライたち3人は知らない。
「こんな鳥、初めて見た。何か話すかな~」
「いや、鳥だから話はできないよ」
と、
「ワタシノシメイハ、アナタガタヲモクテキチニオツレスルコトデス」
「しゃ、喋った」
「もしかすると、この鳥の制御もできるかもしれない」
ライはシステムに入り込んだ要領でこの鳥にも同期を試みた。
「す、凄い。わかんないけど凄い」
この鳥はあのシステムほどではなかったが、古の英知が詰め込まれたメカだったのである。3人はこの鳥から多くのことを学んで旅することになるのだが、そのことを3人が知る由もない。この鳥をクッポと名付けてペットにしたようだが、3人は生物とメカの違いを知らないのだから仕方がない。そもそも生物とは何かということは、果てしなき命題でもあるのだから、あながちメカをペットとする感性も捨て難いのかもしれない。
ライはクッポに村へと案内するように命令したが、クッポが言うには、
「あの村はまだ危険かもしれません。わたしが偵察に行ってみます」ということで、クッポから村への方向だけを教えて貰い、徒歩で向かうことになった。というより、3人の移動手段は徒歩しかないのだから仕方がないのだが。それに少し不満を持つクウは、
「シッカおじさんのテレポートをもっと勉強しておくんだった」と悔やんでいた。
クッポの足に摑まって移動するという案もあったが、それはクッポに即座に却下された。
「わたしはそのような用途のために制作されたのではありません」ということらしい。
しかし、この地道に歩くということが、経験を積むためには最良の方法であることを3人はまだ知らない。