第3話 古のシステム
第3話 古のシステム
北へと向かうライたち3人は、尾根だけをひたすら歩いた。知識として山歩きは尾根を行くことを教えられていたため、沢に降りて迷うことはなかったが、目的地がどのくらい離れているのかわからないため、気力が萎えそうになることもあった。木の実などで飢えを凌ぎながらの山歩きなので、特にマイの体力も心配だったが、さにあらず、天性の身軽さでマイが一番元気よさそうだった。
陽が3度沈んだから3日くらい経ったのだろうか。目の前に巨大な石の建造物が現われた。それは、近くに寄らなければみつからないように多くの草木で覆われ、さらにはほとんどが、地中に埋まっていた。大変なのは入口を見つけることだったが、果たして入口はあるのだろうかとも思われた。結局、入口は見つからず途方に暮れている時だった。
「あの札は?」クウが思い出したように気が付いて、ライが札を取り出すと石の建造物が眩く輝き出したではないか。
「よく気が付きましたね。それはIDカードです。あなた方がそれを持っているのは知っていましたが、あなた方の意思を尊重したのです」
「え?どういうこと?」
「あなた方がわたしとコンタクトを取りたいという意思です。つまりあなた方の望みです。そしてその望みを叶えるための手段を尽くすということです。わたしはお節介なシステムではありませんから」
「チャンスを勝ちとるためには手段を尽くせってこと?」
「はい。多くの人はチャンスを与えられながら些細な手段を尽くさない事で不運になります。0も99も同じなのです。100でなければ幸運は訪れません。ようこそ、ここへ」
ライたちが招かれた部屋は見たこともない装飾で、椅子に座ると身体が沈み込み起き上がれそうもないくらいだった。食事もどうやって食べたらよいかわからず、皆鷲掴みで食べ始めたのであった。
「あなた方がIDカードを持っていることでこの部屋に招きましたが、わたしの真の主と認めたわけではありません。真の主であることを確かめるために検査をさせて貰いますが、承諾頂けるでしょうか?」
「痛いの?」
「いえ、全然。そのまま食事を続けてもらっていてかまいません」
…
染色体数、正常。
遺伝子配列、正常。
突然変異因子10.9%………
「ライといいましたね。数値が大き過ぎます。要精査となります」
ライは別室へと移動させられた。