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赤の印  作者: 酒井順
第1章 赤の血
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第1-9話 キノコの処分

第1-9話 キノコの処分


 サミーの結論は、3つともに違いがないということだった。3つともに明らかに違うものだったが、だからといってその違いが何に影響を与えるのかわからなかったのだ。かつてある研究者が著した『観測と主観』という書籍は、後に研究者や技術者のバイブルとなった。その中で「2つのものが同じであると証明することはできない」という真理が述べられている。いくつかの側面からそれは、真理性を示して、例えば単位を伴う観測では、同じというのは、その時代の観測技術の限界精度で同じということであり、精度が上がれば同じではなくなる。つまり限界精度の理によって永遠に同じであるものを見つけ出すことはできない。また、物質が場や時間の中に存在する限り同一の位置と時間を共有する物質は存在しない。従って、周囲の物質から同一の影響を受けている物質は存在しないなどである。その書籍の結論は、違いとは主観が決定するものであり、理が決定するものではない。その主観を持つ者にどのような影響を与えるかということが違いであるとしている。


 21世紀までの物質最優先の科学と呼ばれた古典技術は、大きく見直され実験・観測などの手法も根底から考え直された。論理という線形的な証明手法も影を薄めて、このことがコンピュータと呼ばれた21世紀までの人類最大の英知も『マスリラ』と呼ばれるシステム構成へと移行していった。『マスリラ』はマス・リラティブの略で、多くの因子体を非線形、組み合わせ、指数などの関係性で処理していきましょうという考え方で、それによって計算量の問題を少しずつ解決していったのだ。


 サミーが恐れたことは、この赤きキノコがあいつらの手に渡ることだった。赤きキノコの正体ははっきりしないが、赤き血を望み、求めるあいつらにとって有益なサンプルとなることは間違いないと思われた。しかし、ここから動くことができないサミーに赤きキノコの正体を暴き、先手をとることはできない。ならば、いっそ赤きキノコを処分しようという発想に至ったのであった。

「サクマ、頼む。あれを処分してくれ」

「しかし、どうやって」

「おそらく、切り刻んで失血させるのがいいと思う」

「そんな残酷な…」

「確かにそうじゃな…」

「わかった。やりかたはサクマに任せよう」

「わかりました。ようするにあいつらにこの赤きキノコが渡らなければいいんですよね」


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