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赤の印  作者: 酒井順
第1章 赤の血
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第1-8話 赤き血のキノコ

第1-8話 赤き血のキノコ


 赤き血のキノコとは、サミーが名付けたものであるが、それは胞液で、成分が血液に非常に似通っていたのだ。色も赤く、その胞液だけを見れば赤き血と見間違う者がいるかもしれなかった。そのキノコをミチが深い渓谷の中で見つけたその日は連日の雨でキノコの収穫がおもわしくなくミチは山の奥へ奥へと進んだのであった。最初はゴーッという音が聞こえてきて、突然のように大きな滝が目の前に現われた。滝の周りはこれといって代わり映えのしない光景だったが、雪崩落ちる滝の水流の向こう側が微かに赤みを持っていて、太陽の日差しの影響なのか時折きらきらと輝くようでもあった。ミチは何だろうと思って、滝の水流を潜るとそこは、畳10枚ほどの広さの洞窟で、そこから無数に見える大小の亀裂が走っていた。しかし、ミチが驚いたのはその洞窟にではなく、そこに密生する赤いキノコにであった。洞窟は薄暗く、キノコを注意深く観察できなかったので1つをちぎって外に持ち出そうとしたところ、それは簡単にちぎれず携帯していた小刀を使うことになった。小刀を受けたキノコはちぎれたが、その部分から大量の液体が流れ出し、ミチは焦りを覚えたのであった。しかし、ミチにはどうすることもできず、ちぎったキノコを抱えるようにしてサミーのところへと大急ぎで走り去ったのであった。


「父ちゃん、赤いキノコがあった。赤いキノコが血を流した」

サミーはミチが何を言っているのかわからなかったが、差し出された赤いキノコを見て言った。

「おー、これはなんじゃ。キノコが進化したのか。この赤きものは胞液なのか。まるで赤き血ではないか」

サミーの驚きは尋常ではなく、その時から赤きキノコの精査が始められた。しかし、サミーは十分な実験機材を持っておらず、できることと言えば、己の血液との比較やミチの血液との比較だけと言ってもよかったが、幸いなことにサミーは血液分野の世界第一人者であった。サミーは3つ(自分の血液、ミチの血液、キノコの胞液)のサンプルを比較することに集中した。ともすれば、血液とはこういうものであるという既成概念が頭を掠めたが、それは真実への遠回りになることを知っているサミーはただ純粋な比較だけを行った。血液分野の世界第一人者であったことは、専門知識としてではなく、その経験がキノコの比較研究に役だったのであった。既成概念が突発的な発想を阻害し、真実を歪めることを長い経験からサミーは知っており、既成概念を捨てると知識をも捨てることに繋がるので、そこのバランスも経験が埋めていた。


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