第1-2話 父親の血
第1-2話 父親の血
針のようなもので指先や耳たぶを突き刺し、血の色を確認した少女は言った。
「確かに赤き血でございます」
しかし、何故この少女は赤き血の色を知っているのであろうか。赤といってもさまざまな色が存在し、真正の赤き血であることを確認するためには、最低でもいくどかはその血をみていなければならないはずだ。その理由は歩いて20分くらいの少女の住居に着いてわかったのである。
「父ちゃん、今帰ったよ」
この少女は父親との二人暮らしで、生計はやはり少女によるキノコの行商で賄っていたのであった。父親の年齢は定かではなく、村の長老によく似た風貌であった。文机と呼ぶにはあまりにも粗末な箱状のものの上で何か文字らしきものを木片に刻んでいるその父親の両足は不自由なようであった。僅かな移動もままならず、生活の多くは少女に頼らなければならないようだった。
「むさいところじゃが、あがってくだされ」そう言う父親であったが、その住居は土間が1間と板敷きが1間であがるところなどなく、皆はそれぞれ土間に腰を降ろして旅の疲れを癒したのであった。これまでの旅の全てが野宿で、土間といえども雨風をしのげる分、安堵感はひとしおであったのだ。
「父ちゃん、この人たちも赤き血を持っているよ」
そう言った少女を凄まじい目で睨み、
「何のことじゃ。血は黒いと決まっておる。そんな用ならあんたら方も早く出て行ってくれ」
「本当だってば~」
「未だ言うか」
足腰が自由ならば、少女を張り倒さんばかりの形相で父親は怒っていたが、ふとその目が外の鳥を見つけると、
「あれは、あんたら方の鳥か?」
「そうだよ。クッポって名だよ」
「有り難い。これまでの研究が記録できる」
ライたちと父親の会話はまるで噛み合っていなかったが、それはクッポに対する認識の違いによるところが大きい。ライたちにとってクッポは案内役であり、様々な知識を与える先生でもあった。しかし、この父親には記録器に見えたのであった。それまで、父親をずっと見つめていたクウが突然話しかけたが、それはクウではなくコウであった。
「もしかして、サミー1等技師ではありませんか?」
「ん?わしは、そんな子供に知り合いを持っておらんぞ」




