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カルカナのゼナ  作者: ななかまどっ
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ミスリルの短剣とポイズンベアー

「ただいま〜」


雑貨屋アリアンワースの扉を開き、カランカランと鈴がなる。

カウンターには、店番をしているヴェルテが座っていた。


「おかえり〜 どこに行ってきたの?」


ヴェルテが置いて行かれたと、拗ねる仕草をする。


「ごめんごめん、糸の調達に行ってきた」


ヴェルテに帰りの途中で買ったクッキーを渡す。

先ほどとは打って変わって、喜びの表情となる。


「クッキーだぁぁ!」


くっきぃぃ♪くっきぃぃ♪と又もや歌っている…餌付けは成功の様だ。

ハグハグと食べるヴェルテを見ながらゼナは、ヴェルテに問いかける。


「ヴェルテ、剣帯に使う糸の色は何色が良い?」


バイソンの革は漆黒に綺麗な光沢が光る感じになる。好みの色のステッチをしてヴェルテに喜んで貰おうと思ったからだ。


「うーん、やっぱり赤かな?うん赤でお願いっ」


「了解っ」


「後で染料取りに行こう!」


ヴェルテは喜びながら、準備を始める。その姿を見ながら、エミ兄の元に向かう。エミリオは、鉄の矢を作っていた。


「ただいま〜」


ゼナに気づき作業を止め、汗を拭きながら、エミリオは微笑む。


「おかえりゼナ」


「エミ兄、ミスリル鉱石の塊をGETしちゃって、プロテクターを作って欲しくて!」


エミリオにアラクネから貰ったミスリルを見せる。

エミリオは、片眉だけクイッと上げて鉱石を見つめていた。


「かなり良質なミスリルだな!これは良いものが作れそうだ。了解、プロテクターは、任せとけっ」


「あと、ベルトに使う糸の色は何色が良い?」


エミリオは悩みながら、応える。


「黄色で頼む!」


「了解っ染料取りに行ってくる」


そう伝えて工房から出ようとすると呼び止められる。


「まてまて、短剣が出来てるから、もってけ!」


エミリオは、白い布に包まれた短剣を差し出す。


「これって…」


ゼナが問いかける前にエミリオが言う。


「ミスリルの短剣だ!軽いから問題ないだろう?」


刃渡り40セリチほどの白銀に輝く短剣。柄の部分には深緑の水晶が埋め込まれている。何より軽い!今まで使ってた30セリチの短剣より軽いのだ。


「注目すべきは、風属性を付加しやすいこと!軽く風属性つけて見ろ!」


エミリオに言われ、短剣を握りしめ属性を付加してみる。すると短剣の刃に深緑の文字が浮かび上がる。ドワーフの言語なのか読めない。それよりも付加した途端、剣先を沿うように風が鋭く唸っていた。


「凄い…」


40セリチの短剣の剣先は風を纏い60セリチほどの風刃の片手剣となっている。


「剣自体の斬れ味も、申し分ないが、風属性を付けた時の斬れ味は、かなりイケてるはずだ」


確かに、軽く属性付加しただけで、これ程の効果が出てる。一般的なミスリルの剣ってだけなら、これ程の効果は出せない。これは、エミリオの鍛冶の技術が凄いのだろう。


「エミ兄!凄いよっ 剣技も鍛えないといけないネ」


エミリオは、うんうんと頷いていた。


「元々、短剣は得意だったろう?素早い動きで敵を翻弄してたし」


確かに、近接武器では使い慣れている。基本弓で攻撃し敵の接近を許した時は短剣で迎撃していた。


「まだまだだよ〜 あっ?ヴェルテ待たせていたんだった!エミ兄ホントありがと♪ 森に行ってくるネ」


ヴェルテのことを思い出し、慌ててエミリオに礼を言い、足早に工房を後にした。


「ヴェルテお待たせ〜」


ヴェルテは、腕をブンブン振って早く行こうと急かす。

エルフの神樹の筒からミントを、起こし三人で、妖精の森に向かうのであった。




三人で森に向かう途中で、ヴェルテが、ゼナの腰に新しく装着されている短剣を見つける。


「ゼナー。それ新しい短剣?」


その問いにミントもゼナの腰元を見ている。


「うん、さっきエミ兄から貰った!」


「抜いて見せて!」


スランと鞘から抜刀しヴェルテに渡す。ヴェルテは歩きながらマジマジと短剣を見つめてた。


「これ…かなりの名剣じゃない?」


そばで、ひらひらと舞いながらミントも短剣を見て言う。


「凄く綺麗な短剣ネ!」


「エミ兄の作品だから、間違いなく名剣だと思う!」


「「ですよね〜」」


二人は、うんうんと頷いていた。

その後、ミントが、ゼナの顔の前に、ひらひらと羽ばたきながら問いかけてきた。



「ゼナ!今回の採集は、何を取るの?」


「うーんと、紅い木いちごの実と、スカイウォードの葉、ベルベリトの木かな」


「了解!」


「とりあえず、紅い木いちごの実から採りに行こう!」


森の湖畔の近くに紅い木いちごの

木が生い茂っている。

近くまで来た所で、三人は歩みを止めた。


「先客がいるね〜」


ヴェルテが、言いながら剣を抜刀する。周囲からの獣臭が漂ってきていた。


「たぶんポイズンベアーかな?」


ゼナも、返答しながら弓を構える。


「ミント、索敵お願い!誘導出来たらよろしく 無理はしないでネ」


ミントは、コクっと頷き、木の間を縫って飛翔していく。これだけ獣臭がしているとあれば、単体ではないと考えていた。


ヴェルテはミントが飛んで行った前方を監視し、ゼナはヴェルテに背を向け後方を監視しながら、進む。


ズズンと前方で何かが大木にぶつかる音がした。と思った瞬間、横からと、後方からポイズンベアーが迫って来た。


「ヴェルテは横の奴をお願い!」


ゼナは、そう言うと後方のポイズンベアーに弓を速射する。ポイズンベアーの左肩、左目に矢が刺さり、足が止まる。すぐ様、ヴェルテが戦っているポイズンベアーにも速射した。


横のポイズンベアーは、すでに左前足をヴェルテに切られ失っていた。ゼナの矢は、今度は右前足と右目に刺さる。

グァァっと唸るポイズンベアー、奴は、ヴェルテに任せ、ゼナは後方のポイズンベアーを再度射抜く。


ガァァっと咆哮している口元、右目に矢を複数お見舞いし後方のポイズンベアーは倒れた。

前方を確認すると、ミントが、ポイズンベアーの攻撃を躱しながら戻ってくる。しかも三匹。うち一匹は、他の個体より倍近くデカイ。


「ボスが居るネ」


横に居たポイズンベアーを切り伏せたヴェルテが前方を向いて構え、魔法を唱え始めた。


「いったい何匹いるんだろう矢が足りないな」


ゼナは、風属性を弓にチャージし構える。


「ヴェルテ、左をお願い!」


「自分は右をやるよ」


ヴェルテは頷き、紅蓮の炎を左手から放射する。

その動きに合わせ、ゼナは右のポイズンベアーに矢を放つ。

なんと、ポイズンベアーは前足で顔を防御し、矢から目を守ったのだ。

前足は矢に貫かれてはいるが動きは健在である。


「くぅ、流石に見せすぎたか」


ポイズンベアーは、魔物の中でも知力が高い。集団で攻撃してくる上に相手の攻撃を学習するのだ。


ヴェルテが放った火炎が左から来たポイズンベアーを焼き、焼かれたポイズンベアーは怯んだ。刹那、後ろから焼かれたポイズンベアーごと引き裂く様にボスベアーがヴェルテに襲いかかる。


「ヴェルテ、逃げて!」


ゼナが叫ぶ


しかし、ゼナも右側のポイズンベアーを相手している為、助けは間に合わない。



ヴェルテは盾でボスベアーの爪を防ぐ、ドゴンと異音がした瞬間ヴェルテは吹き飛ばされ、大木に打ち付けられた。

ヴェルテは意識を失い、左肩から出血し防具が赤く染まる。


「「ヴェルテ」」


ゼナとミントは絶句する。


ゼナは怒りを顕にし、残りの矢を全てボスベアーに放つ、注意を敵意を自分に向けさせる為に。


「ミント、ヴェルテの回復お願い 奴は引き付けるから」


ゼナは、ミスリルの短剣を抜刀し風属性を付加する。深緑の文字が浮かび上がり風刃を形成していく。素早く右側にいたポイズンベアーを両断した。


その動きにボスベアーは、ゼナから目を離せない。その隙にミントはヴェルテの回復を始めた。青白くミントが光り、その光りはヴェルテを包む。


ボスベアーは、青白い光りに一瞬気を取られた。その隙を逃さず、ゼナは前傾姿勢でダッシュする。零距離に迫り、短剣を振り上げた。

ボスベアーは、右側前足を振りかざしカウンターで迎撃の体制を取る。


金属音が聞こえた瞬間、グァゴァァっとボスベアーが唸る。ゼナの振り上げた短剣は、ボスベアーの爪ごと前足を両断していた。


ミントは、ヴェルテを回復しながらゼナの様子を見ている。


「ヴェルテ目を覚まして!ゼナが」


ミントの叫びにヴェルテは反応するも体が動かない。


唸りながら怒りを顕にしボスベアーは狂った様に突進して来る。直撃を受ければヴェルテの様に吹き飛ばされるのは明白だか、ゼナも引かない引けないのだゼナの後ろには、ミントと倒れているヴェルテがいる。


ボスベアーの左手前足が異様な風切り音を鳴らしゼナに迫る。

対するゼナは、ミスリルの短剣に風属性を最大の力で付加した。


ボスベアーの爪を地に這う様に躱す。爪がゼナの銀髪をかすめながら振り抜かれる。躱した体に反動を付け、短剣をボスベアーの喉元に突き上げた。

最大の力で付加したミスリルの短剣は、もはや風刃の大剣と化していた。


ボスベアーは体制を立て直し、左前足で風刃の大剣を防ごうとする。しかし、左前足は風刃を受けてバラバラと飛散し、大剣は喉元を貫き、ボスベアーの頭部も両断した。




断末魔を上げる事も無く、ボスベアーは静かに崩れ落ちた。


































































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