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カルカナのゼナ  作者: ななかまどっ
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革と矢羽

ゼナは意気揚々とアリアンワース雑貨屋仲間のヴェルテの家に向かっていた。ヴェルテは昨日、明日は自宅で調度品を作ると言っていたからだ。あれの性格からして素材が足りなくなって諦めて昼寝でもしてるだろうと予想しながら微笑む。向かう途中で露店のバームクーヘンの切売りを買って土産もGETしカルカナの街並みを見ながら更に歩を進めた。


カルカナは煉瓦造りの建物が多く屋根は綺麗な蒼色に統一されている。都市の方針で屋根の色を蒼色に統一する様に推奨されていた。蒼色の屋根にすれば建物を作る際に少ないながらも補助金が出るし、補修で再度塗る場合も補助金が出るのだ。当然少しでも安く建てたい住人は喜んで同じ色の屋根したのは言うまでもない。蒼い屋根と煉瓦の色合いに心が和む感じを受けながら気づけばヴェルテの家に到着していた。


「ヴェルテいる?」


コンコンと扉をノックしながら、呼んでみたが反応はない。取り敢えず中に入って見ることにした。そこには、ソファで惰眠を貪る真紅の髪の少女が横になっている。


この惰眠を貪る少女の名はヴェルテ・アリストス15歳 アリアンワース兄弟の幼馴染である。外見から見れば美麗な少女と思われるが、長年の付き合いで内面まで見てるゼナは呆れ顔で腰に装着しているエルフの神樹で作った木の筒の蓋を開けた。筒から妖精ブルーピクシーが羽ばたきながら出てくる。妖艶であるが、愛らしいその姿は流石妖精と言った所だろう。その妖精はゼナの前まできて微笑んでいる。


「おはよう ミント」


「おはよっゼナ!ここはヴェルテの家?」


「うんヴェルテと森に行こうと思って来たんだけど昼寝してるからミントに起こしてもらうかと思って」


「ゼナの頼みなら喜んで!」


ブルーピクシーの名はミント 年齢不明 女の子。ゼナがエルフの森にいた時に森で出会い友となり、そのまま付いてきてしまった。


で、なぜミントにヴェルテを起こしてもらうかと言えば、ヴェルテの寝起きが非常に凶暴かつ暴力的だからだ。異性に起こされると無言のまま暴力を奮い、その後、目覚めた時は記憶がないと言う。まったくもって迷惑な話である。しかし、同性から起こされた時と自分で起きた時は素直に平和的に起きると言う。その行動に理解は出来ないが長年の経験で回避は出来る様になっていた。


「ヴェルテ起きて!森に行こうよ〜」


ミントの声に反応はするが、起きる気配は見受けられない。仕方なくミントは、羽ばたきながらヴェルテの鼻先に近付いた。鼻先に羽が擦れると、くしゅんと可愛らしいクシャミと共にヴェルテは起き上がった。


「おはよっ!ヴェルテ」


「おはよ〜お腹すいた〜」


「寝坊助さんおはようバームクーヘン買って来たぞ!食ったら森に行こうよ」


「うんうん森に行くから、バームクーヘンちょうだいっ」


ヴェルテは目を輝かせながら言っている。餌付けは成功したようだ。バームクーヘンをハグハグと食べるヴェルテに、レモール水の入った水筒を差し出す。


「ふぅ満足。で森で何するの?」


「ブラッティバイソンとウインドオルニスを狩りたくて」


「じゃー荷車が必要だね」


「報酬はブラッティバイソンの肉と革製品で、どう?」


「オッケー今日は焼肉だ!荷車用意するネ」


ジュルリと口を拭く仕草をしながら、やっきにっく♪やっきにっく♪と歌いながらヴェルテが装備を整えていく。


「ありがと手伝うよ〜」


ヴェルテの装備は片手長剣と小型の盾を装備する剣士タイプ。ヴェルテの剣は先月ヴェルテの誕生日にエミリオから作って貰ったものだ。彼女に合わせて作っているので既製品と比べて握りが細くて長い。戦闘の際に両手持ちでも戦える様になっているのだ。無論斬れ味耐久力も一級品である。


装備を整えてヴェルテの家を出発しカルカナ西門に向かった。カルカナの西側には、妖精の森と呼ばれる巨大な森が生茂っていて、その森の恵みはカルカナの食料品の四割を占めるほど豊かな森であった。

西門から出て、30分ほど歩いただろうか、そろそろ目的と作戦を説明する。


「15歳になったらエミ兄が坑道に連れて行って来れると言ってたから、今回は新しいバックパックと、威力の高い弓矢を作ろうと思ってね」


「だからバイソンとオルニスなのね」


「うんうん バイソンの革で専用の鞄を、オルニスは矢羽に風属性を付加出来るから飛距離も威力も増大するかなーって」


「てことは、今回は私、魔法禁止なのね」


「うん、ヴェルテは火属性だから今回は禁止!」


「で、作戦は?」


「ミントに索敵してもらって、ヴェルテが、ターゲットを足止め、僕がその間にチャージして一撃必殺で倒す流れでどーお?」


ミントは了解とばかりにクルクルと周りを飛び交う。ヴェルテは、任せなさいと胸を突き出して左胸を叩いて微笑んだ。

森の泉の辺りまでくるとミントが激しく羽ばたき始めた。

ターゲットを見つけた様だ。すぐ様ヴェルテが盾を前にしながらターゲットの側面に向かう。黒く巨大なバイソンはミントの羽ばたきに目を奪われていた。その隙に側面からヴェルテが回転しながら足切りをかます。バイソンの前足が蹄より少し上の辺りから切断される。グモォォオとバイソンは唸り声を上げた直後、怒りを顕にしヴェルテに向かって、大きな角をつき出そうと頭を振り上げ様とした。しかし回転しながら足切りをしたヴェルテは、そのまま一回転し遠心力を加えた盾でバイソンの横っ面を叩きつける。またもバイソンはグオォと唸るが頭を揺らされ両足を曲げて大地に腰を着いた。その刹那、風属性を付加したチャージが完了したゼナが弓を放つ。バイソンの眉間に突き刺さる矢は、そのままバイソンを貫き、後方にある大木に再度突き刺さった。


バイソンは無言のまま崩れ落ちた。


「綺麗に決まったね〜♪」


ヴェルテが楽しそうにはしゃぐ。その横で、揺ら揺らと羽ばたきながらミントも嬉しそうに微笑む。


「二人とも格好良かったです!」


そんな二人を見ながら、ゼナもクシャっと破顔するのだった。

バイソンを荷車に積み、次のターゲットを探す。ミントが次の作戦を聞いてきた。


「ゼナ!次は、どう動いたら良いの?」


「うーんミントは遠距離水魔法で威嚇して、ヴェルテは、当てない様に遠距離火魔法で退路を断つ。そこに素早く僕が弓で速射って流れで!」


「「了解っ」」


その後、サクッとオルニス6羽ほどGETし狩りは終了した。

荷車を二人で引っ張りながら帰路につく三人はホクホク顔で微笑んでいる。


「今日は肉祭りだね〜♪」


「良い素材が沢山手に入ったから色々楽しみ」


「ミントには、羽毛でクッション作って上げるネ」


ミントは喜びながらゼナの肩に乗ってる。


「やったっ♪頑張った甲斐があった」


そんなミントを見て微笑み返す。


「ヴェルテは革製品、何が良い?」


「剣帯作って欲しい」


「了解っ10日ほど待ってね」


喜び、やったーっと言わんばかりに抱きついてきたヴェルテ。


「ちょっ苦しい〜」


「むう!こんな美人に抱きつかれたんだから喜びなさいよねっ」


拗ねる素振りを見せるヴェルテを見て、微笑むミント。あははと三人笑いながら、カルカナ西門をくぐりアリアンワース雑貨店に向かうのであった。
























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