第四十三話 王位の【継承】
お久しぶりですー。
なんか初頭には投稿するとか言いながらできませんでした。もうしわけない。
その分戦闘ではない割に結構書いたつもりなんでゆるしてください
そろそろ視点も一度カケル君のほうに戻したいと思います。
そんでその前に今回の街の補足説明を物語感覚で一度挟ませてもらいますね。
自分に構成力が無さすぎてこういう形でしか街の説明ができんのです。
書けるかは分からんですが仮に書けたらこれからはストーリーに入る前に毎回その街の成り立ちとかどう着たらいいのかを仄めかす程度に入れときたいと思います。
そんぐらいし無いと多分私の文じゃ楽しめないと思うので。
では、本編どぞ。
第四十三話 王位の【継承】
激しい戦いが終わってから僕がまずしたことはボコボコにされて吹き飛ばされた謎の女性を拘束することだった。
未だ街で売られている薬草の類は自身の体力に合わせて回復するタイプではなく、決められた数値分回復するものしかないためあそこまで削った以上またすぐに戦闘ということはないだろうが…………まぁ念のためだ。
拘束と言ってもそれ用の魔法なんかセットしてないし道具ももってないので武器を遠くに投げとりあえず意識を配っておくぐらいしかない。
なお状態異常として気絶はあるのだがこの状態異常はほぼ滅多にならないので現在も意識はある。
その癖して反抗をしないというのが一週回って恐怖を煽るが何かあったとしても僕ならば失うものはない。
問題はこの女に構いっきりになると他の事が出来ないと言う事だ。
もうひとつの気になる対象となっているマルベルの像に視線をやりながら思考の海に沈んでいく。
────”これまでのガラス細工もどこか見覚えのあるあるものが混じっていた”
────”あの街は鳥籠で、中にいる人と外にいる人がいて”
────”外に追放されるだけの筈なのに牢屋があって”
────”ありもしない結界にカラスは阻まれて”
(────王が不在の街…………マルベル”領”…………)
目を凝らせばマルベルの後ろには牙と羽によって飾り付けられた仮装用のマスクがある。
どうにもワイルドな仕上がりになっているのでまったくヒントにはならないが………………流石にマスクそのものがヒントってことはないよね?だってマスクって一体なんのヒントになるのか………………
うん、まぁわかるわけないけど。
「私が用事があるって言ったこと…………覚えてる?」
女がそんな風に話しかけてきたのはいよいよ何を考えたらいいのかも分からなくなってきた頃。
別にやることない以上問題はないかと会話に応じる
「たしか言ってたね、まぁ僕としては聞きたくないんだけど。」
「…………残念ながら私にその要望を受け入れるだけの余裕はない。」
僕も余裕がないからこそ聞きたくないんだけど…………まぁ暴れられるよりかはマシだろう。
折れそうに無い真っ直ぐな瞳に気圧されたわけではないが大人しく聞くだけ聞いてやることにしよう。
「それで、なんのよう?」
予想がつけにくいがあるとしたならばまずはネイター関連。
次に攻略関連。
そして一番あって欲しく無いがありえそうでもある…………『王』関連。
こちらの対応に驚きこそしたものの淀みなく口を開くあたりこの女性はなかなか曲者だ。
警戒すらしないのは自信の表れか脳天気でも問題がないほどの実力者かに限る。
そしてゲームなんて始まってまだ4日もたっていない。
強者として確固たる自己を持つのは不可能。
他のゲームにしてもここまでの反射速度と豪胆さを見せるプレイヤーに心当たりはない。
つまるところこの人はネイターとかではなく…………
(リアルチートの方ですねー。)
ネイターがもてはやされるのは拡大し続けるネット世界において実力のみで名を上げ続けるという偉大さにあるわけだが…………それでもやはりキラのように華があるネイターもいれば企業専属のプログラム系統のネイターのように滅多に表に知られる事の無い影の人もいる。
そしてネイターは今の電子の時代で目立ちやすいから持て囃されているだけでそうでなくとも同系統にすごい人はいくらでもいるというわけだ。
まぁ例えばでいえばタレント等か。
昔から続いてるだけに半ばネット世界に浸かりながらも厳密に枠引きされるまた別の有名人。
結局何が言いたいかといえばネイターよりすごい一般人もいるというわけで…………ネットで活躍できない強者というのはネットが満ちた現代でそれに頼らず本当の意味で〝その身一つで勝ち続けてきたこと〟の証明だ。
そういうのは本当の意味で次元が違う。
僕のようにゲームの中だけの仮染ではなくキラの演算能力のような確かな力がそこにあるのだ。
ちょっと集中しただけで加速してしまう世界のせいで余計なことに気がついて余計に話を聞きたく無くなるというのは本当にふざけている。
もんかして僕のことがそんなに嫌いか?
「あなたの持つ『王』の力を譲って欲しい。」
「…………ハァ?」
チープな表現になるが自分でも驚くほどに冷たい声が出た。
音量にも気を配れなかったからかキラが飛び起きる程にはいつと違う声色だったらしい。
「失礼、端的に言い過ぎた。」
「いやそういう問題じゃないんだけどな。」
なんだ『王』の力をくれって。
「俺に仕えろ」的なアレなのか、はたまた「殺してでも奪い取るからよろしく」的な宣戦布告なのか。
「あなたの持つ東の王のcrownが私には必要。よって私はあなたにcrownの譲渡を要求する。」
…………え、何か変わった?なんも変わってなくね?端的にもほどがある説明じゃね!?
「────ってそっちかよ!!」
crownって魔王の方かと思ったわ!東の王のcrown存在すら忘れかけてた。
まぁ確かに普通なら手放すという選択肢はないのだろうが僕に限ってでいえばまずcrownを付け替えることができないので不要の長物になっている感じがあるけど…………
「どっちにしたって譲渡ということは僕を殺すということか?」
crownの譲渡方法はそれしかない。
譲渡というより強奪に近いがこれはこれでなかなか粋な設定だ。
もちろんデスゲームでなければだが。
クーデターによる王位の交代。
無血の革命なんかおとぎ話でしかないと言わんばかりの現代社会に対する当て付けが見え隠れするね。洒落が効いてる感じがする。
僕がそんな風に少し思考を逸らしていたのを許さないとばかりに目の前の女性が首をかしげていかにも不思議で仕方がないと言った言葉が僕の意識を叩いた。
「貴方には専用の力があるはず」
「──────」
────なんで。
確かに先の見えない極限的な状況といい変な思考のノイズのせいで時たま暴走することはあるがそれでもキラやマルハベリに見せた時以外はそこまでチートを使用していないはずだ。
「───君は何を知ってる。」
だからこそ僕の口から漏れたのは疑問ではなく「知っていることを話せ」という命令だった。
「一般教養と体の動かし方ぐらいしか知らない。」
───OK、よくわかったよ。
Miyuuの腕がぶれて地に伏していた女の体を勢い良く弾く。
「ミュー君!!」
力から考えてステータスこそいじっていないものの言うことを聞きたがらない体には魔王としての別の弊害が働いているようだ。
───何時からこんなにもキレやすくなったのだろうか。
「動くなよ女。動けば残った数ドットすらこの場で消し去るぞ。」
明確な脅し。
だがこれは相手に反抗を許さないと言った意図よりも自身が落ち着く時間が欲しいと言った感情の方が多くこもっていた。
まぁ相手に伝わることはないだろうが。
「…………何を怒っているの?」
……………………。
「あんた死ぬのが怖くないのか?」
「死ぬのならそれが私の天命。それに恐怖は───邪魔なだけ。」
「随分と男前なんだねおねーさん。」
無理矢理体を起こしてきたキラが話に加わる。
というか僕の前に出るってどういうこと?
「かばってるつもり?」
「もちろんミュー君をね」
「嘘つけガキ。」
余計なお世話過ぎるわ。
「そんな話よりもcrownをはやく渡して欲しい」
「あんたは黙ってろ。…………クッソ、ほんとなんなんだか。」
調子が狂う。
何よりも考えたいことが何も消化できない。
「いやいや、黙られたら困るでしょミュー君。」
「もう考えたくもないんだよ。」
いや割とマジで後片付けするとかいいながらもう限界です。
頭を押さえて唸ってしまう程にはまいっていた。
「そこの子は席を外して欲しい。」
僕がそんなことをしている間にまた馬鹿なことをキラに要求している。
crownの譲渡もそうだけどそんなの呑む訳が───
「いいよ。」
いいのかよっ!!?
「何言ってんだよキラ。正直言ってあまりそいつの無事が保障できないぞ。」
「大丈夫だよ。この人敵意が見えないから。」
「…………そんな理由で?」
キラの考え方に口を出す気はないが自分も関わってくるとなったら話は別だ。
「十分な理由だよミュー君。むしろ話を聞くには十分すぎるかな。」
僕からすればその話すら聞きたくないんだけどな。
「…………わかった。」
「それじゃ下で待ってるけど「いやお前はもう帰れ。」────え?」
キラが安定の馬鹿面を晒す
「待って待ってタイムタイム。待ってるってば!」
「いやポータルも出ただろうしお前は合流しにいけ。」
「でも────「キラ。」」
「そういう約束だろ?」
………………………………………………………………………………。
「────ってしてないよそんな約束!!」
チッ!
「いいから帰れ。言っておくけど分別あるべき大人としてかなりみんなに迷惑かけてるからなお前。」
先程の流れに任せる作戦は失敗したがこれは正論。
「で、でも「でもじゃないよな?」…………わかったよ。帰ればいいんだろ!ミュー君のオタンコナス!!」
ベロを出してそのまま外へと駆け出して行ってしまった。
ガキかあいつは。
「それで?」
そんな俺の振りに頭の上にクエスチョンを浮かべる女。
「キラをどかしてまで言いたかったことがあるんだろ?」
まぁ大体想像はつくけど。
「…………言いたいことではなくやって欲しいこと。王位継承システムの二つ目の方法。」
二つ目の方法…………?
聞いたこともないぞそんなの。
「聞いたことがないのは当たり前。何故ならそれができるのは本来アインだけ。」
「神の采配ってやつか。神から王としての力を貰う…………王権神授の考え方に沿ってるんだろうな」
「でも例外もある。」
あー、読めてきた読めてきた。そこで魔王さんな。
「王の中の王。王の頂点──────魔王のcrownならば移すことができる。」
………………。
「なんで俺がそれを持っていると思った?」
「本来ならこんなに早く顕現するcrownじゃないと聞いてる。でも顕現しちゃったんだからしょうがない。そう言われて目立つ人を探した。」
─────言われた?
待て言われたってどういう…………いや、後にするべきだな。
「キラキラは今戦った。マキナは選ばれてすらいなかった。…………あなたは余裕そうだった。それだけ。」
全然わからないけど!?
「あー…………誰かから聞いたって事な。とりあえず。」
となると候補は仮面とかそのあたりか。
「てかマキナさんなぁ〜、あの人にあったのか。」
そんな意味もない言葉の裏で考えるのはこの獣の如き女性にcrownを与えて良いのかどうか。
魔王にそんな力があるかどうかは初めから疑ってなどいなかった。
どうせできる。それほどまでに理不尽な力だから。
様子を見るに東のcrownは彼女にとって大切なものらしい。
何せ初王のcrownを無視してまで東のものに拘わるということは東の物であることが重要ということ…………。
彼女が持つらしい北、南、西のcrownと東のcrownが何を意味するのか…………。
「あんたはなんでこのcrownが欲しいんだ?」
「必要だから。それは四つ揃わなければ意味が無い。」
…………だめだ、要領を得ない。
crown一つでキラを追い詰める人相手にそう簡単に判断は下せない。
「…………ダメ?」
小首を傾げてこちらに問うその姿に悪意は見えない…………それでも!
(誰がもしもの可能性に責任を持てる!?仮にコイツに力を渡したとしてこいつが敵に回らない保証がどこにある!?)
今はまだいい。なぜなら僕の持つcrownという明確な目的があるから。
だがそれがなくなればコイツの手綱は誰が取る?魔王のことを伝えた人物か?アインか?そんな訳が無い!!この獣は自身の判断を一番に信じるタイプだ。見ればわかる!
「……悪いが君にこのcrownを渡すわけには行かない。」
…………それが僕の決定だった。
渡すメリットは無いが渡さないメリットはある。
そもそもこれは僕のものだ。
だから結論渡さない。
「…………どうすれば渡してくれる?」
…………どうすればって取引ということか?
取引も何もそちらに材料は…………
いや待て。ある、一つだけあるぞ、それもとびっきりいい物が!
「ならあんたは僕の質問に嘘をつかずに答えて────」
────いや無理だ。この女が嘘をつかないという保証が無い。確かめるすべもない。そもそもコイツにとっての真実が真のものかもわからない。
そして結局賭けるには話が大き過ぎる。質問の答えが本当だろうがその結果crownを四つも持つこの女が敵に回るったとしたらダメージが大き過ぎる。
「…………やはり無理だ。あんたに渡すわけには行かない。」
「そう…………。」
目の前の女にとってはそれが最後の手段だったらしく武力の行使に出ることもできない僕相手に説得の手を失ったらしい。
「今こそ困ったときはストーキングっていうことわざに従うときだね。」
「ねーよっ!?」
急にキラのノリで第三者の声が割り込む。
声を視線でたどれば金髪の若干ウェーブさせた髪をツーサイドアップにまとめたこれまた背が低い系の女子が…………キラみたいで腹立つな。
「誰…………?」
隣でまた新しく鉄の槍…………というよりは鉄の針のようなモノを取り出して女性が構える。
僕も僕で構えこそ取らないもののキラを抜けてきた相手に警戒を向ける。
ツッコミを入れた後に警戒するというのもおかしな感じだが…………
「チョーイまちまち。そっちの女の子はわかるけどなーんでぼっちゃままでそんなに睨んで来るのさ。」
「は?ぼっちゃま?」
………………。
「あれ、覚えてない?まじで?うわ!?嘘、ショック!思わずトーンが下がるぐらいにはショック!」
「いや心当たりはあるんだけどさ…………。」
何度かゲームで遊んだことのある仲だったし…………でも
「────なんで縮んでんの?」
「こっちが本当の身長だよ!!」
─────なん…………だと?
そんなバカなそれじゃ…………
「キラみたいな存在が二人もいることになってしまうじゃないか!!?」
「そこ!?リッちゃんまたもやショック!!」
クラーク…………テンションだけが高いくせにその中身は僕も驚くほどに暗く深い闇が巣食っている何やらワケアリの少女。
「てかだってお前いつももっと背がでかいアバターだったし使い慣れてるみたいだったし…………本体もでかいのかと。」
「あれが私の理想ぅー、ぼっちゃまみたいに枯れた子じゃないよリッちゃんは。」
そう言って両手で作ったピースを頭へと持っていきポーズを決める。
クラーク…………もとい律の特徴と言えばこれだろう。
やたらと高いテンションと突然飛び出す謎の決めポーズの数々。
嘘が得意で人を化かす行動が多くぶっちゃけ舐めてんのかと思う態度だがそのころころ変わる表情と声色は逆に律の本心を隠し続ける。
そして何よりも…………”律は影をみせない”
キラでさえシリアスに入るときは入る。
嫌なことがある。
素直に正直にそれらを外に出すし隠すのが驚くほど下手だ。
だが律は見せない。
多分その身には大き過ぎる化物を飼っているであろうにシリアスにはならない。
隠すし素直じゃない。
頼らないし基本的には勝手に一人で裏で行動している。
────だからこそこうしてここで会った。
「枯れといて欲しかったよ。むしろ来ないで欲しかったね。このゲームには。」
「無理だよ無理無理。リッちゃんこれでもとってもビジーな身だからねー」
「…………何に忙しいんだ?」
声が硬くなったのは許して欲しい。
それ程までに油断がならない相手なのだ。
キラが計算で心を予測し、マキナさんが今日の天気から心を読むならば律は打算で心を理解する。
そこにはキラみたいな計算ミスはない。
マキナさんのように逆境は無いだろうしはたまた僕のように勝利にすがったりはしない。
姿を現す時には既に目的を終えている…………そんな女が相手なのだから。
「警戒されちゃってるねー。わたし達って仲間じゃなかったっけ?ちょっとフレンド欄を見てみなよ。名前あるでしょ?」
軽口…………だろう。おそらく意味はない。
…………とはどうしても断言できない。
本当にやりにくい相手だ。
どいつもこいつも信用しにくい上に自分の選択のミスが大きな問題になりかねないのがまた絶妙にいやらしい。
「…………あなたの友達?」
僕の友達と聞いて警戒を緩めるのはどうなのかな!?一応僕は君の敵なんだけど。
「そうそう、リッちゃんはぼっちゃまのお友達…………そんで君たちの問題を解決しに現れた女神様ってところかな?」
「随分とわざとらしいな。僕の知識だと物語にオチをつけるのは女神様の役目じゃないぞ。」
「それこそまさかだよぼっちゃま?こんな簡単に物語が終わる物なら私なんかが動かなくても不思議と集まってるネイター諸君が勝手に解決してくれるからねぇー」
「なるほど…………。」
「だいたいここの神様に期待するのは間違えてるよ。
アレはポンコツらしいからね。というかハイブリッドの癖にに大事な大事な一ピースを混ぜ忘れちゃったんだよ」
随分な言われ用だけど確かに案外ポンコツなところもあるので何とも言えない。
最も僕は律が言っていることの半分も理解ができて無いけど。
「あー、わかった分かったもういい。端的に本題に入ってくれ。」
「わかったよ、面白おかしく脚色濃厚で語ってあげよう。」
「話を聞けチビ二号」
キラのことが苦手な理由って多分コイツにあるんだろうな。
コイツが苦手過ぎて似てるキラにもつけが行っているということを考えたらあいつも被害者なのか?
いやあのふざけた口調その他全てがいけないんだから自業自得だな。
「まぁ、確かに時間は有限なことだし?ポータルができてから飛び込むようにこっちに来ただけだからまだやることあるんだよねー。」
「ポータル出来たのか…………って話をそらすな!」
「あまり我慢は長くない方……。」
今度は警戒ではなく苛立ちで拳を構える隣の女性……ってあんたはなんでさりげなくこちら側に立っているの?
「わかったわかったってば!もうほんとせっかちだなぁ…………ってあれ?用件ならすでに言っちゃってたっけ。」
そう言って律は笑い転げて…………っておい!
「何も聞かされてない!!」
「いやいや言ったよ?私の用件は”そこの女性がぼっちゃまについていくこと”。ね、言ってたでしょ?」
………………。
「バカにしてるのか?」
「いやいや、合理的な判断だよ。特にこのアクションはぼっちゃまには必要だと思うな〜?」
今度は片手を広げ顔を多い隠し更に全身を傾かせて隙間からこちらを射抜くように見つめる様なポーズを決める。
巫山戯ている筈なのにここまで僕に躊躇わせるのはやはり律位しか出来ない事だろう
「だって────」
そのまま顔に添えられた手が上へ上へと伸ばされ僕へと狙いを定める。
だからこそ準備ができた。
言わせる訳にはいかないと────コンマ数秒で突撃準備を整え地面をえぐって飛び出す
しかしそれでも律が手を振り下ろすのほうが早い。
「みんなを助けたいんだろ?」
手が退けられた顔は憎たらしいほどに変わらないニヤニヤとした笑みを浮かべている。
拳を振り切らずにその眼前で止める。
願わくば踏み切った時の衝撃で律の音がかき消されたことだが…………まぁ最悪一人にバレたところで問題はない。
その一人が僕の持つ魔王の存在さえ知らなければだが────
「やりやがった。」
「これでぼっちゃまは彼女と行動するしかなくなっちゃったね。」
拳を下ろして深く、それはもう深く溜息をつく
確かに今の一手だけで俺に取れる選択肢は二つになった。
───口を封じるか、近くで監視するか。その二択。
魔王だけならばまだ道はあった。疑念が向けられようがアリバイなんていくらでも作れる。
だがそのうえで僕の目的を聞けば僕の歪みを知る人間には言い訳ができない程の情報を与えてしまう。
特にあの赤いヒト、マキナさんに情報が渡ることがあってはいけない。
それをこの女が理解しているかはわからないが…………問題はこの二人がおそらくは僕よりも深い情報を持っていることにもある。
「あんた名前は?」
突然言葉を向けられた戟使いはキョトンとした様子で間を置いてから「キッカ。」と端的に紹介を済ませた。
「キッカ……ねぇ。」
日本人……なのか?
あの見た目で?…………でもどこかで見たような気も…………するか?
「まぁいいや。交換条件だ、僕はあんたを信用できない。だから付いて来い。信用できたならその時はあんたの言う通りcrownをあげるよ。」
返答は首肯だけで表され話は落ち着く。
ここで話はひとつ終わった。
残った問題はクラーク…………律の問題だ。
どうやって、なんでここに来たかはおいておいて何故こいつと目の前の…………名前を聞いてなかったな。まぁ後で聞こう。
とりあえず目の前の女性が持つ普通なら持ち得ない情報の数。
後は未だに動く様子を見せないガラスの像。
最後にポータルができたことによる街の移動の簡略化。
「色々聞きたいことはあるけど…………任せていいかな?」
「おまかせだよぼっちゃま。」
「てかその呼び方やめろ。別にぼっちゃんでもなんでも無いから。」
「あはは、ぼっちゃまはぼっちゃまじゃんかー。」
…………殺してぇ。
いや洒落にならないけどせめて投げ飛ばしてやりたい。
モンスターの群れの中に。
だけど優先順位を間違えるわけにもいかない。
僕たち全員にとてもじゃないが公表するわけには行かない目的がある。だからといって仲間とは言えないだろうけど…………それでも協力者だ。
「それじゃとりあえず動き出そうか。各々の目的のためにもね。」
ポータル……前の説明通りプレイヤーが踏み入れた街に出現するオブジェクト。使用することでポータルが出現している場所から場所へと一瞬で移動できる。
crownの移動……crownの入手法は主に二つ。王へとクーデターを起こして王位を奪うか神……アインによって譲渡されるか。ただしmiyuu君の魔王はそういうところもいじれちゃうのでcrownの移動はできます。(…………意味深)
クラーク……カケル君のリア友兼エイプリルフールにて名前だけでてきたmiyuu君のネット友達。miyuu君がキラを受け付けない理由でハイスペックウザチビというキャラ丸かぶりのキャラ。そんなもん出すなよとかそういうこえはききとどけない。