第四十話 【重厚】なる格差社会
おひさーみなさん。
野菜です受験生ですピンチです。
マジ英語分かんね数学分かんね物理分かんね誰か教えてできれば可愛い女の子。
とりあえず久しぶりの長めの話きましたよーてかまともな戦闘ですよー。
苦手だ戦闘。
はい、今回は勉強に関する愚痴しか書けなさそうなので前書きは短めにパッパと本編行きましょー
では、本編どぞ
第四十話 【重厚】なる格差社会
「さっさとくたばりなよ!!」
気合を載せた言葉と共に放たれたいくつもの弾丸が先程から空を飛び回りこちらへと攻撃を加える影に向かってゆく
「……ムダ。」
だがただの一つとしてその弾丸は影を捉えることなく振り回された戟の一撃にてあらぬ方向へと逸らされる。
……そう、弾かれるのではなく逸らされてしまっている。
それも使用しているのは取り回しのしづらい戟……この時点で相手のバカみたいな技量が伺えるが問題はこの場合そこではなく…………言葉を話せる相手が襲ってきているという点にある。
紫がかった赤いクセ毛に健康的に焼けた褐色の肌。
ラインを強調させる様に体にフィットした布の服はどこか異国風で非常に目のやり場に困るデザインだ。
そんな格好で飛んだり跳ねたりするものだから男としてはどうにも戦いづらい。
事実僕は目の前で繰り広げられる空を飛ぶ謎の女性とキラの激戦をただ眺めているだけの観客へとなり果てていた。
「もう!!さっさと…………落ちろォッ!!」
その言葉と共に発射態勢のまま維持されていた風の刃計5つが相手へと迫る。
だがどれだけ数を増やそうと、どれだけ隙を狙おうとキラの攻撃は相手を掠めることすらなく部屋を構成する頑強な石材に傷をつくっていく。
錐揉み体を捻り翼をはためかせ更には自由落下すらも回避に利用し全ての刃を躱したら今度は眼前に迫った曲刀
に戟の石突きを叩き付けて鍔競る。
空中戦だろうがプロンと同じ火、水、土、風を操ることができるキラに死角はなく風で作り出した足場の上で更に力を込めて押し込む事が出来る…………のだが押し込まれたのは相手ではなくキラの方だった。
片手で振り回すようにぞんざいに振られた戟の持ち手と言える場所に跳ね飛ばされたキラは驚愕の表情のままこちらへと飛んでくる。
「────ってこっちに来んなよ!!」
明らかに足をこちらに向けて着地の体制に入っているキラを飛び込む様によけて直ぐ様視線を戻すが着地の勢いを利用して再び飛び上がったキラは既に二度目の衝突へと移っていた
…………てかキラが打ち負けたのか?
知ってのとおりキラはクラウンを手に入れる前から片手とはいえプロンを叩き切るほどの筋力値を持つ。
さらにレベルも上がりクラウンによる補正まで手に入れたキラが…………あんなにも簡単に片腕であしらわれている。
「……やっぱり戦わなくて正解だったかな。」
そう変に憂いを帯びた表情でつぶやきながら数分前の出来事を振り返る…………
◇◆◇◆
大きな扉をくぐり抜けた先は案の定とも言うべきか似たような色調の通路が続いていた。
違うのは今まで絶えず空気を潤していた水が何処にも流れていないことと下ることはあっても上ることは無かった今までと違い目の前の通路の脇に幾つかの上り階段があることか。
そしてこれが一番の違いだろう………………先程まで影も形も見えなかった釘のような嘴を持ったカラス達が臨戦態勢でこちらを見ていた。
この光景には流石のキラも驚いたようで口をポカンと開けて思考を止めていた。
だがカラスたちは待ってはくれない。
早速翼をはためかせてこちらへと鋭いその身を持って突撃を開始する。
…………だが無手の時とは違うのだから何時までも後手に回ることはない。
右手に装備したままとなっているベレッタのスキル【フルオート】で弾数こそ少ないものの擬似的な弾幕を貼る。
だがこの場合において弾数は関係ないだろう。一直線で広さこそあるものの基本的に向かい合うしか無い場所でしかも相手はこちらへと突っ込んでくるのだから。
そう多くはなかったカラスたちが一掃された頃にはキラもちゃんと戻ってきており「何あれ」と僕へと聞いてくる。
…………僕に聞くなよ。
そんな風に噛み付いてくるキラをいなしながら進むがここから先どう進めばいいのかわからない。
目的地すら定めていない上に道しるべのない入り組んだこの空間はそれだけで一種の罠に近い。
流石にここまで反響の強い空間でキラの号砲をブッパナさせるわけにもいかないし…………
「ミュー君はこういう時どうするのかな?」
そうやって困り果てている時に限って僕に振るのはやめてほしい。
自分で何かしらできるんだろ?
「だって今までほとんど私の仕事だったしー。」
そりゃそうだ。僕の仕事なんてチートを使わずにやるとしたら散歩くらいしかできやしない。
「…………まぁ、いいさ。基本的にやることは変わらないよ。」
そう言って僕は左手に装備したパイソンを掲げて発泡し、今から起こることを何一つ見逃さないとばかりに意識を集中させる。
ただし注意を向けるのは音ではなく…………
「…………私と同じこと?ミュー君も大概人間離れしてると「ちげーよ一緒にすんな。」」
そうやって無駄な掛け合いをして待つこと数秒
…………来た。
通路へとつながるいくつもの通路から聞こえ始める羽ばたきの音…………ここからは時間との勝負と言ってもいい。
なにせ失敗すれば逃げ場のないこの閉所で四方から切れ目なく襲いかかる弾幕を処理しなくてはならなくなる。
流石にそれをこの身一つで処理しきれたら人間じゃない。
そのためにも………………
「最速で”正解”を導き出す!」
僕のキャパセレのレベルで音が拾えるのはせいぜい視界より少し広い程度…………
一つ一つの通路を確認する僕だがやっているのはキラほど人外…………というよりかは機械じみたソナー等というものではない。
単純明快…………どの通路から最も多くの羽ばたきが聞こえてくるのか?
それもかなりの圧倒的な数を求めている。
それでも聞き分けるのはかなり至難の業だ。
それぞれの通路にピントをあてて高速で回していく…………集中し過ぎたせいか世界が減速を始めた
幾つかの”ハズレ”をへて7個目でようやく正解へと至る。
「────ッ手前から5つ目の右前方!!」
加速し出した思考すら捨て置いて僕ら二人はカラスが飛び出来てくる直前に目的の通路へと飛び込んだ。
一方からしか来ないカラスの相手をするのは簡単だ…………先程のようにこちらが弾幕を貼ればいいのだから…………
「『シュラスフィオール』ッ!!」
だからこそ視界に広がった黒い奔流がキラの刀身より伸びた炎の鞭に為す術なく蹂躙されたのも…………今度こそようやく人外じみたと感想をこぼさなくてもいいほどに当たり前の話だった。
だがそこで落ち着いく余裕はまだ無い。
ほかの通路から溢れてきたあのカラスどもを相手にする気は無いのでさっさと奥に引っ込もうと思う。
「キラ、さっさと走る………………って居ねええぇぇぇぇッ!!?」
あいつ自分だけ炎が消えないうちに突っ走りって逃げたな!
もちろん急いであとを追ったわけだが何故か置いていった奴に「遅いよ」と文句を言われるのである。
まじ理不尽。
「というかひとつ言わせて欲しいんだけど…………さっきの方法だって使えるのはミュー君だけだよ。私がやったって絶対あんなにエネミー出てこないもん。」
「つまりなんだ、お前は僕がエネミーに嫌われてるとでも?」
返答は肩をすくめるという動作で返された。
何だかものすごく納得がいかないがそれ以前に運営は魔王をどうしたいのだろうか?
仮にも魔の王なのに配下に嫌われるって………………
「何にせよこの道で間違いはなかったみたいだね。見てみなよ。本当に綺麗なもんだ」
言われたとおりにあたりを見渡せばそれだけで目に飛び込んでくる様々な配色の光の数々…………人工物のような壁からそれこそ鉱山のようにゴツゴツとした岩肌が中央に巨大な穴を作りながら螺旋上に上へと道を作っていた。
「僕としてはこれが山の中というのが未だに信じられないよ。」
それぐらいに非現実的な光景だ。
日本に限定せずとも言えることだが中身の刳り貫かれたハリボテの山が一体地球のどこに存在するのか…………火山なんて目じゃないレベルでこの山はスッカスカだ。
「でも目測と今までの降上距離からして確実にここはあの山の中だよ。」
珍しくもないがそれ故にキラの断定は説得力を持っている。
「へぇ………………それにしてもいくら綺麗だからって悪趣味がすぎるね」
と僕は話を戻すつもりで七色に輝く山道…………いや坑道ともいうべき道を見やる。
「そうだね…………確かに謎と言えばこれが一番の謎だよね。」
ここからでは光の加減ゆえに見にくいが…………あれは確かに先程の広場にあったものと同じ────
「「”人型のステンドグラス”」」
「不気味…………というのもあるけどただそれだけじゃない。嫌悪感を形にしたような造形というか…………」
「確かにこれは作ったらたまたまこうなりました…………というよりかはこういう印象を与えたくて作りました、みたいな悪意が見え透いてるよ」
────気持ち悪い。
ここまで来ると醜悪とか嫌悪とかの負の感情よりも先に作り手の考えが気になるレベルだ。
「ミュー君は何のためにおいてあると思う?」
…………なぜそこで僕に振るのか?
沸いてるのかお前の頭は。
いやまぁ答えるさもちろん。別にそんなことで突っかかったりなんかしない
「…………考えられるなら3つ…………いや2つかな?」
「その心は?」
「………………その鬱陶しい合いの手をやめろ、僕はそういうノリが好きじゃない。
でもまぁあえて乗るのなら…………そうだな、まず一にこの世界の真実…………というかストーリーに関連付けられるヒント、むしろメッセージが近いかな。」
メッセージのところで首を傾げるキラに説明するように言葉を続ける。
「そのまんまさ。どんなゲームにだってあるだろ?意味有りげな石版とか封印だとか、はたまた血筋でもいいのかもね………………あるものなんだよ設定のある背景のある物語のあるオブジェクトってものがさ。」
「なるほどね…………つまりこのステンドグラスもストーリーを紐解く1パーツだと?」
「Exactly.褒めたたえたい気分だよ。」
「…………バカにしてるだろ」
よくわかったじゃないかキラの癖に。
「まぁ何にせよ普通のゲームならここで調べるコマンドとかあるんだろうけど…………まぁ僕らはそういう系のスキルがないしそもそもご丁寧なイベントなんか用意されてないだろうね。」
「…………流石はゲーマー…………なのかな?」
「それ褒めてる?」
答えは聞きたくないけれど
「まぁいいや、それで二つ目かな。二つ目も似たようなものだよ。次につながるヒントさ。」
今度こそキラの顔にはっきりとクエスチョンが浮かんだ。
というか眩いピンクのツインテールが頭の横で大きなクエスチョンマークを作ってる。
……………………どうなってるんだそれ?
「これはさっきのと違ってストーリーではなく攻略のヒントというべきかな。」
「つまり次…………もしくはそれに近しい段階での攻略にステンドグラスが関係してくるってこと?」
………………それもあるけどむしろこの状況を見ると─────いや、これは考えなくてもいい事か。
「まぁそれに近い何かしらだろうね。このステージはカラスのステージ…………ここまでゴリ押ししてるんだからきっとそうなんだろうさ。街の異変も知性的なカラスやこの不思議なオブジェをみると大体の想像はつく。便利な魔法かなんかで傀儡にされてましたー…………そう言う事だろ。」
「私には何も読めてこないんだけど…………」
そりゃ理路整然にも程がある考え方をなさるあなたじゃ読めませんわ。
「この世界は数字だけどそれじゃ測れないことだってあるんだよ。」
それっぽいことを言ってみるが正直言って当然のことだ。
もしできちゃったらそれはもうピタゴラスさんマジぱねぇっすという他ない。
「当たり前じゃんか。私だって常識知らずじゃないんだよ?」
それは断固否定させていただきたい。
「まぁいいや、進めるなら進んじゃおうよ。問題ないんでしょ?」
「もう少し考えたいところだけどね………………というか通路に向かって手を伸ばす形の奴はもはやホラーだろ。」
何と言うか障子を突き破ってうじゃうじゃと手が伸びて来る和風ホラーが頭をよぎった。
かと言って特別とどまり続ける理由にはならない。
大人しく歩きながら地道に上を目指す。
途中出てくる敵もスパイクロウだけでなく岩石を投擲してくるランドブラックや硬質化した羽を持つエアロスライサーなどの多彩な攻撃法を持つ者たちが増えてきた。
一番困るのは仲間への支援魔法を使うクロウチャンダーだろうか。みんなして空を飛んでる癖にその中でも奥に引っ込んで殺しにく言ったらありゃしない。
挙句骨をかぶったその頭から除く瞳がちょっと怖い怖い。
戦う舞台の違う相手に若干の苦戦をしながらも着実に頂上までの距離を縮めていく。
(………………それにしても。)
敵を一掃してできた一時の平穏にチラリと腰の拳銃を見やる。
どうにもこのバカ威力の銃には慣れない。
そもそもファンタジー要素のある世界で銃を武器に選んだことはサブとしてでもないのだ。
理由は戦いづらいからの一言に限る。
VRFPS《バーチャルリアリティーファーストパーソンシューティングゲーム》という括りの中でさえ僕は携帯性と隠密性を重視したサプレッサー付きのハンドガンとARを使っていたくらいなのだ。
確かに僕はシューティングを好むし得意だと思えるだけの戦績ではあるがそれでもスタイルは強襲ではなく潜入工作だ。
ベレッタの方は別にしてもこのハンドガンは………………なんか重い。
同じマグナム弾にしたってまだオートマチックタイプのデザートイーグルさんの方がマシだと思う。
それに左右でオートマチック、リボルバー等と種類の違う銃を持つとか戦いっらいし不格好だ。
────戦えるから文句なんか言えないけどさ。
だから前をずんずんと突き進むキラを見て思うのだ…………ちょっと勘違いしてやいないかと。
「おい、頼むから僕のサポートを前提に突っ込むのやめろ。」
僕がずれているのは人間性という面でスペックと言う意味でお前ら化物に並ぶのは無理だ!!
それを理解してないのか度々曲刀へと持ち替えて群れに突っ込んだり無防備に詠唱を開始したりするキラに正直さっきから心臓が痛い。
プロン戦でみせたあのチームワークはどこに行ったのか。
「えー、いいじゃんか。何とかなってるんだし。」
…………まぁそれはそうなんだけど。
「ぶっちゃけ後衛2人だと手数というか範囲が足りないんだよね。」
「それを承知でこの武器を選んだんじゃないのか。」
「そうなんだけどさー。」
まぁ不満顔のキラの言いたいこともわかる。
ぶっちゃけ銃が四つ並んだところで形成できる弾幕はたかが知れてるのだ。
さっきまでの閉所ならまだしもこのようにひらけた場所だとあまり効果がない。
線での攻撃じゃ限界があるというわけだ。
かと言ってキラは魔法をボコスカ撃てるほど魔法職よりのステータスをして無い。
ちょくちょく銃撃を挟まなくては使えない節約魔法使いなんて正直僕は耐えられないだろう。
イライラするから。
結局はやりやすい剣で斬り牽制として銃で射ち一気に魔法で落とすというまんまオールラウンダーコースに落ち着くんだろう。
だからって後処理を僕になげるのは少し違うと思うんだ。
嫌ならそのカットラスをよこせと。
「…………わかった、それならミュー君が前行ってよ。」
「範囲的な攻撃を持ってない僕が前に行っても変わらないと思うけど」
あぁでもその方がマシといえばマシか。
「んじゃそれで行こう。」
頂上まではまだ後半分ほどある。
そこにたどり着くまでに倒さなくてはならないモンスターの数を考えると…………少し気が重い
ゲームの中なのにこぼすことが多くなったため息は不思議と宙に白い痕跡を残していった。
◇◆◇◆
「ミュー君、急ごう。」
キラがそう言い出したのは役割分担をしてからまだそう時間の経過していない時だった。
上を見上げればまだまだ続く螺旋状の道が見える。
だけど理由もなくキラがこう言い出すはずもないので僕は異論を挟む事無くうなずく事にした。
「わかった。」
かといって形状からしてショートカットは難しい。真上は次の通り道が塞いでる為飛べずお向かいの道までは距離が遠すぎる。
自然走ることとなったがそれにしたってモンスターが出てくる頻度を考えると…………と言う奴である。
とりあえず走りながら戦うことにしたがそこでようやくキラの覚えた違和感に僕も気付くことができた。
エネミーが少ないのである。
さっきまでの一回で十匹ちょい出てきていた時とは違い今では七匹そこらしか出てこない。
それに少し気温まで下がっているような…………
初期の装備であるこの地味な衣装には少し厳しい寒さ。
日の差さない山の内部だからといってこれはおかしい。
だがエネミーが出てこないということは行軍のペースが上げられるということ…………僕たちはスパートをかけるように残った道を走り抜け頂上へと抜けた。
待ち構えていたのは祭壇のような空間だ
やけに民族的な印象を受ける空間を備えられた松明が暖かく照らしている。
そこに来てやはり見覚えのあるステンドグラスの人形が祭壇のような上できらめいていることに気がついた。
全体的に緑色に近い配色のグラスを立体的に組み合わせたそれはあの街の領主として君臨していた横幅の広いシルエットと重なる。
間違いない────あれはマルベルだ。
「───分不相応にも隠れて動く鼠がおる…………自身がおるのが表だとも知らずにの。
──────誠に滑稽よ。」
体が動かない。
どうやらイベントらしいが声の主が見えない。
「…………まぁ姿は鼠というよりかは豚だったがの。」
しかし舞落ちる数枚の黒羽と強い羽撃きの音がその在処を主張する…………真上だ
「はて、貴様らはどうかのぅ?」
ようやく声の主が視界に入る範囲に降りてきた。
背中に広がる対の翼に羽織などの和風の装束。
唯一出された顔は何よりも特徴的な真紅と長鼻………………まごう事な気天狗がそこにいた。
「まぁ鼠にせよ豚にせよ変わらぬよ…………大人しくここで死んでゆくがいい。」
そういって地面に降りたった天狗は広葉によってできた団扇をもち歌舞伎のような構えを取る
体の自由が戻ったところを見るとどうやら戦闘開始のようだ。
名前は……………………読めねぇぇえ!!!
アルファベットの癖に英語じゃないぞ多分。
「ちょっ、ミュー君危ない!!」
キラの声に意識が戻された
………………のはいいけど視界に入るのは団扇をこれでもかと振りかぶった天狗の姿。
「あ、まずった。」
流石に回避は間に合わず襲ってきた木枯らし混じりの風のうずに弾かれ切り刻まれて壁まで吹き飛ばされる。
………………って攻撃力高っ!!HPが既に半分切って黄色なんだけど!!?
そんな風にまた意識を取られていたからかそんな一瞬であの距離を無にできるからか気がつけば遮られていた松明の光に気がつき転がるように身を逃がす。
既にどの向きから襲ってきたかわからぬ衝撃に身を任せ距離を話して周りを見やれば僕がいたところに拳を振り下ろしている天狗とそこに駆け出すキラが見える
「クソ野郎、よくもやってくれたもんだよ。」
幸いにして出血や部位欠損的な状態異常もなかったらしくただHPが減っただけにせよアインとの接続の影響で痛みが尋常じゃない。
ぶっちゃけ頭に血が上ってる。
…………落ち着かなくちゃならないな。
あの天狗のタイプは物理攻撃と物理属性の特殊攻撃を持った連続攻撃型。ダメージを与えてないからわからないがあの速さもあることを考えるとHPバーの短さ通りの体力だと思う。
一撃一撃が高いのもそうだけどあの風による超ノックバックと連続ヒットはそれよりも鬼畜仕様だな。
近距離で体を離さずといきたいところだけど…………例によって人形のせいで二人で近接を挑もうとするとかえって危ない。
キラが走り出してる以上僕は自然と後ろで銃を撃つしかない訳だけど…………
「問題は僕にあの高速戦闘中のなか誤射なく割り込む実力がないところだよな。」
当てる自信はあるが僕にできる先読みは敵の移動まで。
位置までは予測できても状況まで予測できない以上下手に打つことはできない。
既にキラは曲刀を持って斬りかかっている。
力で負けてくれる相手ならばそれで終わりだがあの高攻撃力の天狗じゃ鍔競ることは出来ても圧倒することはできない。
…………でもまぁ───
「止まってくれてたら当てるのは楽勝だよ。」
刀と切り結べるとなるともはや原材料が不明になる硬質団扇の持ち手にベレッタで狙いを定め、翼へとパイソンを向ける。
ベレッタを先に打つのは衝撃が強過ぎるパイソンのせいで狙いがぶれるのが嫌だったからだ。
見事に両方が命中し団扇に力が込められなくなった天狗がキラに両断された───直後天狗の体が丸太へと変化しカットラスが丸太に食い込んだ状態になる。
「〜ん身代わりの術ぅ。」
背後に現れた天狗に反対の手でフリントロックを合わせるがそれよりも早くキラに掌底が打ち込まれる。
壁に叩き付けられたキラめがけて追撃をかけようと団扇を振りかぶる天狗にベレッタで牽制しながら駆け寄る。
何とか中断させて近接へと持ち込むがこの天狗普通に強い。
そして何より翼による制動のせいで動きか読みにくい。
体力的に直接攻撃を食らうわけにもいかず少し消極的になっていることもあるだろうがそれにしたってである。
「このっ!!」
突き出された肘をかわすようにしゃがんだ勢いで最も威力の出る蹴り方の一つ逆立ち回転蹴りのモーションで足を相手に当てそのまま押し出す。
距離が近すぎる故の処置だが苦肉の策でもある。
案の定団扇を振りかぶり始めた天狗…………
だが苦肉の策というのは僕が一人の時の話だ。
馬鹿みたいな発砲音と共に計四つの弾丸が天狗へと突き刺さった。
「あ、いたあぁあいッ!!」
間抜けな声を上げる天狗にそのまま飛び掛かり膝を叩き込む。
変わり身の術とやらを使わせないよう隙なく連携で仕留めていく。
元々少ない天狗の体力を削るのにそう時間はかからなかった。
「───グフゥッ!!」
最終的に僕と殴り合いをしている天狗を僕の背後から奇襲したキラの曲刀に斬られて天狗のHPは真っ黒に染まった。
再び体が拘束される感触に少し戸惑いながら流れるムービーを見る。
「やってくれるわ若造共め、だが良い…………既にこの老いぼれは役割を果たした。街を乗っ取りここまでの準備を終えた。後は偽王様がやってくれるだろう。」
全身をポリゴンへと変えながらも意味深なことをいい祭壇へと歩いていく
「全ては”王”の意のままに!!」
最後にそう言って天狗は無数のポリゴンへと姿を変えた。
「────見つけた。」
だが僕らの烏山攻略はまだ終わらないようだ。
既に自由になった体を見つめながら聞こえてくるより大きな羽撃きに僕はそう確信したのだった。
エネミー・・・モンスター、mob、などと同義。mobはNPCもさしたりするのかも。英語的な意味は敵性とかまんま敵とかそういうの。
天狗・・・名前はカタカナで書くとハンドワークスマイスターバーグ。ドイツ語とかのやつで意味は山の名工ですね。ちなみに正確に言うと天狗じゃなくて烏天狗です。中身はAIで人じゃないしcrownもないけどサイズも形もほぼ人。ちょっと大柄かなー?って感じ
ステンドグラスの人形・・・三角とかの様々ないろのガラスを立体的に張り合わせて作られた人形。気分はレゴだね。めっちゃ綺麗だけどどれもこれも絶望と言った表情しかしてないので結構悪趣味。