第三十二話 鉢の中に潜む【怪奇】
さてお久しぶりです。
吹き寄せる風にも木枯らしが混じるようになり寒さも一層強さを増してきました。寒いのが苦手な自分からすれば勘弁して欲しいものですが冬といえばいろんなイベントもあるので自分は案外好きだったりします。
特に蜜柑!自分は水分を豊富に含んだ果物が大好きなのですがその中でもとりわけメロンとミカンが大好きです。
前置きが長くなりました。前述のとおり投稿が遅れました、申し訳ありません。
新作や友達に頼まれて書いている作品の執筆に集中してて忘れておりました。ちょっと無責任でしたね。
とりあえず短くはなりましたが区切りがよかったということと生存報告を兼ねて三十二話の投稿です。
では本編どぞ!
第三十二話 鉢の中に潜む【怪奇】
キラは「やり過ぎたー」なんて言ってごまかしていたけどこれはそんなレベルの話じゃないだろう。
全くもって常識を疑いたくなる展開と言う奴か、はたまた端から常識なんて持ってないのか。
いやいや違うか、これは単に───
「キラが馬鹿なだけだ。」
「失礼だよね!ミュー君ってほんとに失礼だよね!!」
そんなこと言われても
「カラスを吹き飛ばせと入ったけど山を飛ばせとは言ってないだろう。」
「どうなるかわかんないっていったもん!」
「・・・限度って言葉知ってるか?」
「それミュー君にだけは言われたくないよ!?」
はてなんのことやら。
・・・さて無駄話もここらで切り上げておくとしよう。
「それで?巣ごと焼き払ったにも関わらずクエストクリアになら無いことについての弁明は思い付いた?」
後半の皮肉はおいておいて問題はこれである。
防衛ゲージがある以上敵のコロニー的な所を潰せば任務成功になるんじゃねという考えで動いてきた僕らだが残念ながらキラの攻撃で巣も同じように吹き飛んでおりそこにボスが居なかったのかそれとも吹き飛んでいるのかの判別ができない状態にある。
だから僕らは同じ方針でボスを探せばいいのかはたまた他のクリア方法を模索した方がいいのか良く分からないのだ
「だからいま考えてるんだよー!邪魔すんな。」
そうして頬を膨らませてわざとらしく「私怒ってます」をアピールするキラ。
あまりのガキっぽさに思わずため息が溢れる
まぁストーリーはキラに任せておくとして・・・あれ?僕のやることがない。
別に今考えたいことや考えられることがあるわけじゃないし銃の手入れは必要ない。ここを放置してどこかに行くわけにもいかないし・・・あぁどうしよう、この思考まんま仕事中毒のものだ。
あんまりの結論に頭を抱えたくなったが急にそんなことをしたらキラに馬鹿にされそうなのでやめておく。
でもそうなると本当にやることがない。こればっかりはどうしようもないことだけどこの時間をどう使うかを模索・・・してたらその内やることを見つけるのが目的に成り代わって本末転倒なんて展開になりそうだな。やっぱり仕事中毒って怖い
「わかった!!」
・・・今回は模索の必要がなさそうで良かったよ。
「で?何がわかったのさ」
やたろハイテンションな火力馬鹿に尋ねるとこれまたイラッとする所作を混じえて偉そうに語り出す
「まぁまぁ落ち着き給えよ明智君 」
「いや誰だよ明智くん。」
相変わらず良く分からないやつだった
「よく良く考えたらこのロックボウルって動物が過ごすにはなんとも辛い環境だよね。山とは銘打っているものの実際は山の形状してないし岩山で植物なんてない。砂利こそあれど地面は基本硬いし障害物すらないとなるとこれはもうどんな生物がどこに住むんだろう?」
「さぁね、まだ外周部だし凹んでるとこの環境が変わってたりするんじゃないの?」
具体的に例を上げては見たもののこれはないと自分でも思う。日が満遍なく当たる外周が岩山ですり鉢のように凹んだ中央部が動物の住める環境ってなかなか愉快な光景だとは思うけど・・・いくらリアリティを追求されたゲームとはいえ流石に魔法的な世界だ、ないことはないと思うけどそれにしたって少なくともそこはカラスの巣ではないはずだ
それにこの山には外周部と中心部しかないわけだから───待てよ、ひょっとして前提条件が違うのか?
「気づいた顔だね、たぶんわたし達はルートを間違えたんだよ。本来ならそこへは別のルートから行くことができたんだ。」
それは例えば
「山の麓や───」「────街の中」
・・・そういうことか。
「なるほどな。これがFPSなら潜入を投げ捨てて破壊工作に勤しんでたことになるのかな?」
「その表現は微妙だね、それにFPSとはまたさらに微妙な所に行ったねぇ」
それこそキラに言われたくない
「ところでキラ。」
「なにさ、ちゃんと責任は果たしたよ!」
「あぁ、うんそれはいいんだ。お疲れ様」
そうして労いを1つ掛けてから今になって浮かんできた疑問を投げかける
「そうじゃなくてキラがさっき使ったスキルって効果もそうだけど普通のスキルとは随分と違うよな。あれなに?」
例えばのはなし、魔法系スキルなら詠唱はあれどあんなものではないしあそこまで長くない。
さらにはスキルが動作をキーにして発動することもないし発動前にあんな風にほかの行動を阻害するようなこともできない。
「あれはオリジナルスペル・・・いやオリジナルスキルって言った方がいいかな?」
「オリジナルスキル?聞いたこともないぞそんなの」
「まぁ多分持ってるの私だけだからね。───本当にミュー君が知らないなら・・・だけど。」
だからそんな疑いの目で見られても僕は何も言えないぞ。
ジト目のキラに目線でそれを伝えることで先を促す
「・・・まぁいいけど、とりあえずミュー君が知らなくても無理はないよ。条件も厳しいしね。」
厳しい・・・ねぇ。
キラがいうぐらいだからよっぽどなんだろうけど
「まぁ難しいといっても二つだけだよ。まず一つは『crownを手に入れること』、そして二つ目は『王と名のつく職業であること』・・・この二つだけ。」
「crownを手に入れるっていう条件はなんとなく想像出来たけど王と名のつく職業って・・・海賊王?」
「私の場合はそうだね。ね、厳しいでしょ?」
厳しいなんてもんじゃないぞそれ。
まずcrownだってこのゲームの参加者のうちいったい何人が取得できるのかというものなのにそこに加えて入手条件も強さも未知数な職業の取得が前提だなんて・・・でも目の前の馬鹿は達成したわけか、流石だな。
「それならまぁあのえげつない攻撃が作れるのも納得だけど・・・お前厨二病っぽいし。」
「・・・色々言いたいことはあるけれどとりあえずアイドルになんてことをいうのか!私はそんなキャラで売り出してないよ!」
そう言って怒髪天を突くを現実に再現して見せるキラ
「それにミュー君は勘違いしてるみたいだけどオリジナルスキルはオリジナルと銘打って入るものの結局のところ自分で作るわけじゃないんだよね。」
ということは・・・
「まぁこのゲームならではと言ったところかな、”自分に合わせて自動生成されるスキル”・・・それがオリジナルスキルなのさ。」
「スペシャルスキルの上を行くスキルってこと?」
「さぁね?でも作って、さらに使ってみた感想でいえば随分と博打要素が強いし消費も大きい。とてもじゃないけど効率的とはいえないかな。」
「crownの汎用性や影響力には及ばないまでも限定的状況における爆発力や制圧力は抜きん出てるってことか?」
だとしたら随分とピーキーなものだな。
切り札にしか使えない切り札ってのは使いどころが難しすぎる。
というか職業が魔王でcrown持ちの僕にも作れるってことか?
いやろくなモノが出来ないだろうしやめておこう。
「にしてもキラのは一体何を元にして作られたんだろうな。僕も全部が全部見えたわけじゃないんだけどさ、アレって───」
「ミュー君、あまり女の子のプライベートに首を突っ込む物じゃないよ。」
言い切る前に釘を刺された。
それにしたって随分拒絶的な態度だな
やめておこう。キラの言う通り首を突っ込むような話じゃないし。
「そうかもね。悪かったよ」
誤魔化すように肩をすくめて話を戻す
「とりあえず僕らがやることはこの岩山への侵入方法の模索かな?」
「そうだね。といってももう予想ついてるんじゃない?」
「そう思うのならお互い様ってことだろ、んじゃとりあえず街に戻ろうか。」
外側からは開くことのない鳥籠を破れた理由なんてどう考えてもひとつだ。
出来ないことは出来ない、でも出来ることは出来るできる。
「───山への入口は街の中だ」
オリジナルスキル・・・ステータスや職業と同じようにアインに構築される正真正銘本人だけのスキル。
大まかな流れこそ職業やcrownに左右されるがそのほとんどは本人の過去や当人の性質を読み取って生成される。確かに総じて強力な力ではあるがやはりキラの言う通り殆どはピーキーな仕上がりになるうえ使いどころも限定されると言っていい。
ただし必ずしもそうなるとは限らない、万能性とは言わないまでもそこそこの使い勝手を誇るスキルが生成される人間もいる筈である。
crownが所詮用意された冠だとしたらこのスキルは王としての個人の威厳や権威とでもいうべきだろうか。
ちなみに取得条件はスキルのところに書いてあり、作成方法は空欄にしたセットスキル欄の長押である。
なおこの取得方法というのは王と名のつく職業とcrownを同時に装備した時に表示されるのだがmiyuuはこのウィンドウが開かれたとき同時に多数のウィンドウが展開されていたため気がつかなかった。