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デスゲームノ『王』※お受験凍結中  作者: 野菜連合
三章ーー黒羽街《スパイクフロー》ーー
31/55

第二十八話 巧みすぎる幼女【趣味】

お久しぶりとは言わないかもしれませんがどうも野菜連合です。

今回は少し短めですがまぁ区切りがよかったので投稿。

リメイク中の作品があってそっちも投稿はまだですが執筆を進めておきたいので遅れています。

新作、リメイク、現行作といろいろ書くものがおおくて手が追い付きませんががんばります!

では本編ですどぞー

第二十八話 巧みすぎる幼女【趣味】





side miyuu


幼女に案内され階段を上りきった先にある扉を開ける。もちろんノックなんてなしだ。

隣で声をかけようとしていた幼女はポカンと口を開けてフリーズしている

そんな幼女を無視して部屋のなかに目をやればこれまた趣味丸出しなバカなんじゃないかと思える光景が広がっていた。

強いて言うなら・・・生気の感じられない樹脂とインクで作られた無数の瞳がこちらを向いているのだ。

それもそのすべてが幼女。



・・・いやまぁただのフィギュアなのだが


───そしてそんなたくさんの幼女に囲まれながらこちらを見てにこにことしているのは・・・黒人だった。

椅子に座っているがゆえに少し測りにくいが高身長で手足もヒョロリと長い全身の余分物を削るのではなく筋肉と一緒に絞ったかのような構造である。

頭は野球児のごとく短く刈り上げられた黒い芝が広がっている。

体は仏教徒の法衣、だが見ようによっては古代ギリシャのヒマティオンにもみえる暗い配色をした布で包まれている


(───胡散臭い)


意外にも第一印象は趣味ではなく雰囲気の方へ目がいった。

そんな初対面から胡散臭いなどと思われていることを知らぬ男は手を広げこちらを歓待するかのように自己紹介を始めてしまう


「やぁはじめまして、私の名前はマルハベリ。第一級に位置するcrownをもつ王だよ。」


へぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・???


「あぁ?」


なにやら自分の声とは思えぬ低い声が漏れた。




そしてようやく理解した


『こいつなに言ってくれちゃってんの?』


どうやってこいつからそういった情報を聞き出そうか悩んでた自分がバカらしくなるほどバカ正直にバカみたいに無警戒にバカになって話してくれちゃってんの?


───とそこまで思考したところでようやく自身の失態に気づく。

今の自分の反応はまるで───


「やっぱりね、君が私達の大将様か。」


───まるで彼がどこかのボスであるとある程度推理していたみたいではないか。


「いや君が私の正体にたいしてある程度推理していたように私もしていたのだよ。魔王の正体にたいしての推理をね」


「・・・さすがに無計画に暴れすぎたか。仲間にばれなきゃいいやと思ってたんだけどな・・・そうか。あんたら敵にも気を配るべきだった「それは違うな」──なんだと?」


先ほどから相手のペースに飲まれているのを感じる。

入り口をノックもせずに蹴っ飛ばしたのは自分のペースに持っていきたかったのとNPCならぬ人間なら何かしらの反応があるからだと思っていたのだが・・・


「・・・君の敵は彼らプレイヤーで、君の仲間こそが私達ボスプレイヤーではないか。そこを間違えてはいけないな。・・・あぁいやそれとも今のは君なりのジョークというやつだったのかな?いやはや悪いことをした。私は融通の聞かない人間とよく言われていてね。許してくれたまえ」


・・・どうにもボスってのは厄介なのかそうじゃないのかの区別がつかない。

始めに出会った黒装束とここにくるまえに殺した病魔は弱かったしなんの厄介さも感じなかった。


だがどうだろう?第一級crownの意味はわからないが少なくとも奥からきたとおもわれるこいつとプロンに関しては厄介ではすまされない何かを感じる。

仮にゲーム終盤のボスがみんなプロンやこいつみたいな存在だったとしたら僕はクリアする自信を失う


「そう警戒しないでくれたまえよ。これからよろしくしていく仲間じゃないか。ほら、仲直りしよう」


そういってその長く大きな右手を伸ばして握手を要求してくる


・・・ふざけるのも大概にしてほしいものだ。

とんだ食わせものだった。

自身の力とゲームの初期段階であるという認識、さらにはこいつ自身の趣味・・・いやこうなってはおそらく僕に侮らせるための仕込みだったと考えられない───


「こらっ!!領主様を無視とは失礼な!!!」


───僕はシリアスな空気が向かないのだろうか。

よくわからないところで気がついたらシリアスに突入するしシリアスな空気かと思いきや壊されたりもしている。

勘弁してほしいものだ。


「おやおやお話し中なんだけどな。」


気がつけば前の・・・マルハベリと名乗った男は既に手を戻して椅子に深く腰を下ろしていた。


案内役幼女はそんな男の声を聞き顔を青ざめさせて頭を下げる


「も、申し訳「いやいやいいんだよ!」──え?」


「むしろそこがいいんだよ!あぁビバロリっ娘!!ちゃっかりしたずる賢いロリっ娘もドジの多い天然ロリっ娘もジジババ喋りなロリババアもロボットのような機械的ロリっ娘もラスボスみたいに無駄に尊大に振る舞っちゃうロリっ娘も素朴で質素でいたいけなロリっ娘も天真爛漫なロリっ娘も恥ずかしがりやで内気なロリっ娘も!!!!どれもこれもがすぅんぶぁらしぃぃ!!!!あぁカワイイカワイイカワイイなでなでしたいペロペロしたい投げたい頬擦りしたい噛みつきたい噛みつかれたい手を引きたい買い物したいゲームしたい寝たい甘えられたい怒られたい怒りたいご飯つくってほしいいや逆につくってあげたい!!あぁあぁあぁあぁぁぁぁぁぁあああ!!ロリこそ至高!!!なぁ?君もそう思うだろう?特にこの娘!この娘はすばらしィナブゲラッ!!!」


・・・案内役幼女を指差してなにかをほざき始めた辺りでようやく正気に戻れた。すべてのステータスを筋力値に回して腰を捻り全力の拳を顔面に突き込むまでコンマの世界である。

肩で息をしながら目の前のゴミ虫を見下ろして二発目の準備をする。こいつはなにがなんでもここで殺しておくべき存在だ、そうに違いない。


そうして第二撃を構えたところで気持ち悪い立ち上がり方をしたマルハベリに止められる


「わ、悪かった。」


・・・


「わかったなら「巨乳ロリをいれなかったのが気に入らなかったんだな」───・・・。」


構えた第二撃を容赦なく打ち出す。今度は顎をとらえるように打ち出したため半ばアッパーのようなものだ。


・・・しかしやはり気色悪い動きで立ち上がるマルハベリ

これにはさすがの案内役幼女もドン引きのようだ。


「ま、まってくれ・・・だ、大丈夫だ安心しろ。私はショタもいけ───」


ここまで耐えた僕を誉めてほしい。

このゲームが始まって以来二度目となる邪属性攻撃魔法のどす黒いエフェクトが役場の二階から漏れることとなった。














「───・・・それで?ストーリーは進めてくれるんだろうな?」


僕は少しイラついた状態で問いかける


「まぁそれが仕事だからね。仕事は果たすさ!」


・・・さっきまで壊れたフィギュアを嘆いてその仕事すらしなかったくせによく言う


「まぁ明日の朝にもう一度来てくれれば話は進む。それでは頼むよ、冒険者殿?」


・・・本当にその意味のない笑顔と言うのはされる側になると腹立つだけだな。・・・というかそれよりも


「僕はまたここにこなくてはいけないのか?」


そっちの方がよほど問題だった


「そうだね。話を進めたいのなら来てもらうことになる。正直私としては早く決意を固めてこっち側について欲しいものなのだけれど・・・それは難しそうだからね。今は諦めるとするよ。」


・・・今は・・・ね。


「そんな顔したって無理なものは無理だろうよ。どうあろうと君がプレイヤー諸君に受け入れられることはないだろう。君に選択肢がない以上君の最終的な立ち位置は決まってるのさ。」


「・・・そんなことないよ。僕の立ち位置は誰かに左右されたりなんかしない。・・・王だからね。」


そんな僕の言葉を聞いて肩をすくめるようにして呆れた様子をわざとらしく態度に出すマルハベリ


「立ち位置というものに自分で決めるなんて概念は存在しないよ。全部回りに流されて決めることになっているのさ。自分で選択したように見えてもね。」


・・・


「本当に気にくわない男だよお前は」


「僕は気に入ったよ。なにせ僕はショタも───いややめておこう。せっかく直した彼女たちを壊されるのは少し辛い」


そういって入室したときから無遠慮に無機質な視線をくれ続けている合成樹脂製彫刻の群れに愛しそうな眼差しを浴びせるヒョロリとした黒人


「・・・まぁそれじゃあした来るとするよ。・・・一日で体力が回復するかはわからないけど。」


「まぁ気楽にしたまえよ。君がどう意気込もうが結局個人で大勢に影響を与えることができる訳じゃないんだから・・・というのは嘘だ。君はそのための存在なのだからね!」


なんてことをいいながら快活に笑い出すとそこで話はおわった。

そんな心のそこから要らぬ世話を受けながら階段を降りて役所をでる自身の記憶を頼りに宿までたどり着きベッドに飛び込む。

僕にできたのはそこまでだった。

なにせよく考えたら僕は・・・ゲームが始まって以来休んでいないのだ。

沈みいく意識のなか仮にキラがこの街に来ることになっていたらを考えて笑ってしまった。


(あのロリコンに翻弄されてるあいつってのもそれはそれで面白そうだ)


そうして今度こそ意識は闇に沈んだのであった







もっともすぐ目覚めることになったのは僕の運の悪さを考えれば当たり前のことだ。

原因は騒音と言うべきか・・・迷惑を通り越して害悪とも言えるべき騒音・・・聞き覚えのある甲高いこれはカラスの鳴き声か。



・・・なるほど、これがイベントか。

カラスの侵入できないはずの場所でこれだけの数のカラスの鳴き声が聞こえるということはつまり・・・前提が崩れたことに他ならない。


「鳥籠は所詮鳥籠だったか」


そんな戯れ言を呟きながら身体を覚ますためにもストレッチを始める。

それにしても何が明日の朝だよ。

どうみても今日の夜なんですけど?

・・・ほんと、アイツもてきとうなやつだな。


と心の底で無責任な発言をしたマルハベリに嘆息と寝不足の八つ当たりを済ませたところで泊まっている宿の窓から外を見下ろす。


あちこちから上がっている火の手が気になるところだが問題はそれよりもあちこちを飛び回るカラスの方だろう。

あれらの始末を出来る輩がどれだけいるだろうか?

少なくとも門を守っていた兵士たちはカラスをどうこうするだけの力を持ち合わせているように思えなかった。

雑魚とはいえあの攻撃方法はやっかいだ。

そうだとすればこの町の人間は逃げ惑う以外の生き残る手段が取れない

マルハベリが手を出すわけもないし安全圏たる町にモンスターがわくのは古今東西どこを探してもイベント位だろう・・・テイムモンスターは除く


まぁなんにせよやることは決まったわけだ。


窓の縁に足をかけ混沌と黒羽が支配する町へと飛び出しその勢いで上空から下の建物めがけて攻撃準備をしていた鳥を一匹蹴っ飛ばす。

見えないどこかでほかの鳥が巻き添えになってることを願って。


それにしても・・・


(・・・この夜は少し長そうだ)




























案の定この夜は長くなった。

既に蹴っ飛ばしたカラスは数えるのを投げ出したくなるほどの数にものぼり・・・というか実際投げ出したわけだが・・・まぁ適当に外周を走り回りカラスの侵入経路を探しながらカラスを跳び跳ねて倒してたのだけれど・・・穴なんて見つからない。

もちろん僕が入ってきた門は夜は閉めてるらしいし仮に侵入経路があそこだとするならすぐに閉められてここまでの数は入り込めないだろう。


僕の予想だと人間が関与してると思ったのだけれど・・・穴がないとなるとこの考えは間違えてたってことか?


そんな思考にとらわれ足を止めたことでさっきまで聞こえなかった音を耳が拾う


カラスの声にかきけされそうなほど小さな音・・・悲鳴か。

しかも女の子の悲鳴・・・それは自身が立つ大地から聞こえるものではなくこのばかでかい鳥籠の上の上・・・夜のとばりに隠された見えないほどの高所からの悲鳴だった。









そうか・・・やっぱりこの騒動は人の手が入ってたのか。

まったく面倒な・・・だいたいこれを推理したところでストーリーを進めなくては意味がないのだが・・・まぁいいか。


とさすがに魔王のステータスといえど今のレベルじゃ悲鳴の聞こえる高さまでは届かない。

残念ながらあの子には諦めてもらうしかないだろう。





なんてはじめから助ける気の無いやつのセリフとは思えない言い訳を誰にというわけでもなくしておく。


さてさてあの悲鳴の後を追うようにカラスたちが去っていく訳だが・・・これは明日の朝に何があるのか。



少し楽しみにしている自分を軽蔑しながら少し焦りを露にする。



あんまりこんなところに時間をかけていると後続に追い付かれる。


事実自分が病魔を倒してからここに来るまでに半日ほどしか時間をかけていない

そもそも病魔のステージは必須のものでもないし直線距離で考えれば自身とのステータス差を考えてもそれよりは早くなるだろう。


なまじ時間をかけていられないことがわかっているために感情が先走る。






ぼくは騒ぎの収まらない町を眺めながらそんなことを考えていた。

スパイクロウ・・・光り物を好む性質があり気に入ったものを啄んでは巣に持ち帰っている。

他にもその高い学習能力やその警戒心から群れを作られたら駆除に苦労する。

とくに賢いリーダーをもったカラスがもたらす被害はともすればゴブリンなどを越える

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