第二十七話 消し飛ぶ【清潔】
とーもーお久しぶりになりました。
野菜連合です。
宿題が怖くて怖くてもーいやぁぁぁぁぁぁぁ!!
・・・失礼テンションがおかしくなってましたね。
さてさて遅ればせながら投稿させていただきました二十七話。
完成は二週間ほど前にしていたんですけどね。
新しい小説を書いてみたくなったり更新停止なうなぼくまほのリメイクを書いていたりしていたらこんな状態に・・・申し訳ないです。
ついでにTwitter始めました。
ホームにIDを載せていますのでそちらもぜひよろしくです
では本編どぞ!
第二十七話 消し飛ぶ【清潔】
side miyuu
さりげなくこのゲームの本当のラスボスといってもいい存在との邂逅を終えた僕は少し進んだところにある看板をみて右の道に進むことにした。
反対の道にいかなかった理由はあとから人が来たときに空の敵を相手にするくらいなら地上の敵の方がやり易いだろうとおもったからだ。
・・・ついでにいうなら僕は狼どものイベントではそれこそ雑魚だけでなく少し強めのモンスターに会えたが烏のイベントでは会うことができなかった。
純粋に未知への興味である。
まぁなんにせよ今さら僕がどっちの道を選んだとかは関係ないわけで今ココで重要なのは・・・もう少しすればデスゲーム開始直後に出会ったスパイクロウとの再戦だ。
・・・まぁ町の名前から判断しただけで確信はないのだけれどあのモンスターと戦うとするなら今の僕でも少し緊張する。
狼は統率力と耐久性においては高めの能力設定だったがそれ以外はまぁ普通程度のものだ。
たしかに強いには強いのだろうが数も気にならない実力があり耐久性を突破できる手数か攻撃力があれば特に気になるものでもない。
だが恐らく狼と対になっているであろう烏はその限りでない。
烏の能力は速度と攻撃力特化だ。
耐久性こそ紙のようなものだが今でもあのスピードは少し怖い。
なによりクランウルフ程ではないものの群れをなしていたのだ・・・今から向かうのはその烏共の巣に当たる町・・・数が少ないだなんて楽観視は───
「いってるそばからか。」
───できやしない。
少し余裕をもって後ろに飛びデジャブを感じる上からの襲撃を避ける
断続してものすごい音を鳴らすさっきまで自分のいた地面を前に少し唖然とする
(・・・・・17、18、19・・・23回。・・・つまり23匹?)
まだ町も見えていないのにこの数である。
さすがに多すぎない?と引き気味に思考を巡らせる。
いやいや。烏の活動時間は主に昼から夕暮れまでだ。
夜は巣に戻るとしてそろそろ巣に戻り始めなくてはいけない時間だ。
つまり各地に散っていたモンスターの群れにであってしまったと考えればまだ楽になる。・・・いや訂正しよう断じて楽ではない。
プロン戦やパンデミックモナーク戦で判明したことだがどうも僕には痛覚規制が働いていないようだ。
当たり前だがゲームで負うような怪我は現実ではなかなか経験できないものだ。そんななか痛みを完全に再現してしまえば恐怖のあまり剣を握ることすらできなくなる。それだけではない・・・時には同じプレイヤーを相手にすることになるオンラインゲームにおいて痛覚を残すということはその痛みを相手に負わせることになる。
被害者ならまだ耐えられるという人間も加害者になることは耐えきれないというひともいる。ゲーム内でのトラブルにもなりやすいしなにより現実にも影響を及ぼすかもしれない。
様々な問題をもって体感型ゲームでは組合が定めた痛みのレベルを越えないように抑える機能がついている
それが俗に痛覚規制と呼ばれる過剰痛感覚遮断機能である。
もちろんだが限度を越えなければある程度の痛みも許可されているし自分でも調節は可能だ。
だが僕の場合その痛覚規制の対象外とされているのか現実同様の痛みを受ける。
プロン戦で骨を折られたときのあの異常な痛みはそれが原因だ。
治るといっても痛いものは痛い。
まぁ長くなったがまとめると・・・あの烏の嘴に貫かれでもしたら僕は痛みで発狂しかねない!
しかも23匹とか穴の空いてないところを探す方が大変みたいな面白大惨事になる。
・・・あれ?鳥は数え方匹じゃなくて羽か。・・・いやでもモンスターだし・・・匹でいっか。
とりあえず目の前の土煙が晴れないうちに烏共もといスパイクロウの対処法を考えるとしよう。
とりあえず今までの攻撃方法を考えると烏共は目で相手をしっかりと捕捉してから自身を弾丸のように飛ばしてくるわけだ。
土煙のなかに奴等がいる今ならまだ安全というべきか。
あと攻撃の直前と直後には決定的な隙があり攻撃中も側面からの衝撃には無力と。
最後に数で固まっている今は関係ないけど単体なら止まらない限りは攻撃を喰らうことはなさそう。
さすがに線での攻撃なだけあって少し横に避けただけでかわせるのが唯一の救いなのだ。
早いといっても弾丸とか光線系の魔法よりは遅いし前動作から大体の軌道が読めるからそういう意味ではやり易い敵だといえる・・・あくまでも単体ならの話になる。
土煙を翼で払ったのかすごい勢いで煙が晴れるなか僕は待ち構えるわけでも横移動をするわけでもなく固まっている烏共のなかに飛び込むように駆け出す。
まぁ長々と語ったが一番簡単な攻撃の回避方法ってのはどんなものでも共通・・・撃たせない。
端からゼロ距離で戦えば攻撃が突進しかないこいつらは逃げるか近距離で決定的な隙をさらして攻撃するかしかないのだ。
すでに攻撃に移りかけている烏を除いたほとんどの烏は空へ逃げていく。
逃げる烏はひとまずおいておいて逃避に出遅れた三匹の烏をまとめて蹴り抜き消滅させる。
足の勢いを殺さずそのまま体を反転させてから急いでその場から離れ再び同じところに着弾する五匹の烏を見送る。
さすがに学習したのか今度は波状攻撃を仕掛けてくるようだ。
それならそれでやりようはある。
とりあえずそのまま弧をかくように移動を続け降り来る烏の攻撃から逃れる。
先程も言ったことだがどんな攻撃だろうが満点の対処は撃たせないことである。
たとえ相手が空中にいようがそれは変わらない。
だからこそ───
とそこで体を再度反転させ体にかかる慣性すらも利用してこちらに狙いを定めている一匹目掛けて飛び上がる。
───天地関わらず問答無用だ。
またもや回避の追い付かない一匹を消し飛ばしそのまま烏よりもさらに高い高度へと身を踊らせる。
体を捻り勢いをつけ前後へ脚を開き上体水平回転蹴り状態にて標的の補足に失敗した群れへと突っ込む。
地を砕き停止してから上を見やるとまだ15匹ものこっている。
だがこの数ならばさすがに波状攻撃といえるものはうてないだろう
観念したのか狙いの定めにくい空中から地上へと降りてくる。
だがそれも愚策だ。
全ての烏が高度を下げるのを待ってから僕は足下の地面を蹴っ飛ばす。
先程砕いた地面もあわせて吹き飛ばした石が散弾銃のように烏の群を蹂躙していく。
だがさすがに黙ってやられる烏でもないらしい。
即座に反応した三匹がこちらに突進を仕掛けてきた
並び方が悪いので蹴っても一撃では全ての攻撃に対処しきれない・・・仕方がないか
多少恐怖があるがやってみよう。
避けるのもありだがこれ以上グダグダと戦いを続けるのは疲れる
思考加速すら使わず猛スピードでせまる烏を見据え両手を前に出して腰を落とす
沸き上がる恐怖心を押さえ付けて反射すらしないように心を落ち着け限界まで引き付ける・・・・・・三匹が自身の間合いに入った
両手を烏へ向かって伸ばし回転する烏の嘴を正面からではなく横からつかむ。
残った一匹も上から手を差し込み既に一匹を押さえている親指と人差し指ではなく中指と人差し指で押さえる。
その際先につかんでおいた方の烏の嘴に後から掴んだ烏の嘴が掠めて暴れかけたが筋力的にたいした問題ではない。
三匹をまとめて地面に叩きつけて消滅させる。
(・・・それにしてもこの嘴って案外硬いんだな。誰か製産職にたのんで武器でもこしらえてもらおうか。今さら籠手とかはなぁ。それに魔王として動くときも同じ素手だと動きから正体が割れる可能性があるし・・・というかなによりもさきに顔とかを隠す装備探さないと。)
とりあえず足を進ませながら考えをまとめる
(まぁいくら固くてもこの程度じゃ魔王の力には耐えられないか。どうせなら武器とか特にこだわらず毎回変えてみる?・・・といっても剣とか槍とかのオーソドックスなものしか使えないんだけど。)
そうして自身の武器のことについて少し考えがまとまった頃だった。
代わり映えのない景色に一つの変化が現れる
「・・・鳥籠?」
そう、それは巨大な鳥籠だった。
それは吊るされているのではなく地面におかれており鳥籠の底をみやれば何やら中央に近づくにしたがって盛り上がる背の低い潰れた円錐形を保っていた。
少し遠くて見えにくいが・・・
「索敵系遠見のスキル【ホークビジョン】」
視界が一瞬緑の優しい光に染まり晴れたあとは文字通り鷹の世界・・・先程まで詳しい状況を見ることが叶わない距離にあった鳥籠のなかまでもがはっきり見える。
鳥籠の底の独特な形はそこに町が形成されているからだった。
家の大きさや形・・・状態を見るに中央になるにつれて背が高くなるのは権威のためか。
中央は裕福層、そこから下に下るにつれて徐々に雑多さが増しカラフルな布地の屋根が張られ人の行き交いが多く見られるおそらく商売エリアにつながる。
そしてその後町の外側は貧困層となっておりその大部分が鳥籠から溢れている。
見事なまでの縦社会。
こちら側からだと反対の様子はうかがえないがおそらく似たようなものだろう。
・・・しかし鳥籠のなかで人間が暮らすというのはいったいどういうことなのだろう?
黒羽街スパイクフロー・・・とてつもなく趣味が悪い。
まぁなんにせよ目的地も判明したことだし少し飛ばすとしよう。
全力で地面を捉えて自身を前方へと打ち出す。
まだ見ぬ街がどんなものなのかと多少の期待を抱いて
*********
全速を出したとはいえそれでもまだこのゲームの中盤ほどのステータス、一瞬でたどり着けるわけでもなく数分走り続けて行き着いたのは街とは思えないパンデラに支配されたあの村と似たり寄ったりなゴミ捨て場だった。
いやここにすんでいるのは間違いなく人だし貧困層の人なのだろう。間違いないが・・・間違いはないのだが・・・環境があまりにもひどい。
一応は形をなしていたはずの屋根もなにかに突き破られたかのように穴だらけ、そこいらにゴミが散らかされており鳥の糞便までそこらじゅうに落ちている始末。
もちろん接触はまだだがすんでいる人の健康状態も衛生面もよろしくない。
ゲームに感情移入をするタイプではないmiyuuですらこれを前にして思わず「ちょっとこれは・・・」等と呟いてしまうほどにこの街スパイクフローの貧困層はひどかった。
その時か・・・北の空から黒い雲のようなものが結構な速度でこちらに向かってくることに気がついた。
・・・烏だ。
どうやら気がついたのは僕だけではないらしくちょうどあの烏達が見え始めた頃に鐘よりも幾分か軽くそこまで響くこともない金属音が街に響いた。正確には貧困層のすむここら一体のエリアに響いた。
もともと活気の欠片もない一角だったが烏達の姿を認めてからはみんながみんなすごい勢いで家に帰ってしまい話を聞くまでもなく辺りは静けさに包まれてしまった。
(・・・進むか。)
人のいない閑散とした居住区を歩き鳥籠を目指す。
少しあるいたところで鳥籠のように入れるところを見つけた。
ただしそこには武装した兵がたっている
・・・これは話しかけても大丈夫なのだろうか?
この貧困層と裕福層の待遇の差をみて少し不安になるがまぁその時はその時だ。
というわけで話しかけてみることにした
「すいません、少しよろしいですか?」
兵士の人はいきなり近くに現れた僕に驚いたようで口から漏れる言葉は返事になっていない
「驚かしたようで申し訳ないです。少しお伺いしたいのですがこの街にはいるにはどうしたら?」
なだめる意味も含めて少し待ってから問を掛ける
ようやく僕の意図を察したのか口を開く兵士
「あ、あぁ。そうかこの街に入りたいのか。なら東西南北に一つずつあるゲートから入所料を払うことで手形を貰い入ることができる。ただし手形の有効期限は3日間しかなくその都度更新に来なくてはならない。永住するつもりなら町長のところへいって許可を申請してくれ。入所料は500ギルだ。」
・・・つまり3日に一度は500ギル支払えと。
別に使うこともなかったゆえに余裕はあるがあまり使いたくもない。さっさとイベントを済ましてボスを倒しておさらばしたいところだ。
「なるほど、ではとりあえず500ギルを払っておこう。・・・ついでに聞きたいのだがここまでに建ってた家とそこに住んでいた人はここの街の住民ではないのか?」
目の前に開いた支払いのウインドウの支払い額を確認してOKを押しながら聞ける話は聞こうと話を進める。
「あぁそれか。まぁそれを答える前に門を開くから入れ。烏共が来てからだと開くのが手間だ。」
指示された通りに門を潜り街へ足を踏み入れる。視界端に街の名前が少しの間飛び出してすぐに引っ込む。
「外のやつらはたしかにこの街の住民さ。敷地的に言うならこの街は鳥籠よりも少し大きいからな。そこにすんでるあれらも一応は俺たちと同じこの街の住人だよ。ただし税や手形料が払えなくなったクズ共だけどな。」
・・・なるほど、ここの場合そういうやつは閉め出されるのか。
外の環境の酷さと街の外よりなのにも関わらず鳥籠のなかと言うだけで外とは清潔性が違うこの町並みを見ていると自然仮説は立つ
「つまりこの鳥籠の恩恵を受けられなくなるわけだな?」
「ほぅ?知っていたのか。」
「少し考えればわかる。それにしても人間が鳥を閉じ込めるための籠が人間を鳥から守るとはな皮肉が効きすぎてなんともな。」
「鳥を閉じ込める?鳥籠に鳥なんか招き入れたら大変なことになるだろうが。お前何をいってるんだ?」
・・・あぁ常識が違うのか。
まぁたしかにモンスターを飼うなら籠が要らないくらいにしっかりと教育したやつくらいしか飼えんものな。
つまりこの世界での鳥籠というのは───
「あぁ気にしないで・・・『ちょっとしたジョーク』だよ。」
───鳥から身を守るためのものなのか。
「まぁたしかに鳥を全部こんなかに入れられたなら俺達は安心して外で暮らすこともできるんだろうが──」
金のないやつは追い出すくせによく言う。その俺達とやらに弱者は入れないのか。
「───まぁ無理な話だしな。少し窮屈だがここに住んでりゃ安全なんだ。それでいいさ。」
───なんでこのゲームはこんなにも分かりやすく歪んでいるんだか。
「そうですね───何事も安全が一番です。」
そろそろ会話も飽きたので手形を受け取り街の中心へ歩き出す。
先程見たときにある程度街の構造は覚えてある。
いくら要り組んでいようがまず迷うことはない。
ただ問題があるとするならこの街のストーリーはどうやって進めたらいいのかだ。
先程の会話からフラグの存在は感じ取れたがそこに至るまでの過程がわからない。
こういう場合は大概NPCに話を聞くというのが正解なのだがいかんせん数が多すぎる。だからこそ鍵となる話を門番から聞きたかったがあれ以上聞けることもなさそうだったし・・・永住権か。
門番の話から感じ取れる街の異常は貧困層に対する扱いの悪さとその貧困層が街から逃げ出さないことの不自然。永住権と匂わされたフラグの香り・・・かといって鳥籠の外の雰囲気を見る限り話を聞ける感じはしない。
もちろん話の鍵となるような特徴的なNPCも見た限りはいなかった。
とりあえず僕がとれる行動は一つ、町長に会うことか。
このくそでかい鳥籠がどうして鳥から身を守る役目を果たし、巣でもないのに鳥がここまで襲いに来るのか・・・聞けるとは思えないが調べる価値はあるな。
一先ず出来ることを行動に移すことにしよう
「失礼、町長に会いたいのだがどうしたらいいかわかりますか?」
辺りの喧騒の中にありながら人の波がわざわざ避けて通る果物屋に目をつけそこの店主をしているであろう強面の親父に話し掛ける
店主の顔はそのその迫力のある顔立ちとは正反対の虚ろな覇気の無い表情をつけている。
「・・・あん?にぃちゃん俺にいってんのか?」
自身に話しかけていることに気がつかなかったのか数拍おいて返事がかえされる
「体も顔もあなたの方に向けている。僕の回りは見ての通り人がいないのだから話し掛けているのだとしたらあなたしかいないと思うのだが?」
「そうかい、そいつは悪かった。なんせ俺なんかに構うやつなんてこの街にゃもういねぇからな。あんたも何か聞きたいことがあるならこんな人が寄り付かねぇボロ屋の店主じゃなく他の───」
「人が少ないから聞きやすいと思った。何か問題があるのか?」
ゲームの歪み具合に昔の自分を思い出し多少のイラつきを覚えながら話しているので少し言葉がキツいがどうせNPCだ。構わないだろう
「───そうかい。町長に会いたいならこの街のど真ん中にある領主館の目の前にあるレンガの建物で受け付けに会いたい旨を伝えて数分待てば会える。基本暇なやつだ、まぁ会えるかは気分にもよるがな。永住権を取りたいなら町長にあわなくとも受付で頼める。」
・・・ふむ。
少し回りを見渡し街の様子を見たり門番との会話を思い出してみたりする
「まぁ俺としては永住権なんかとらねぇでさっさとほかの街にいった方がいいと思うがな。あんた旅人だろう?」
・・・ふぅ
「まぁな。一つ聞いていいか?領主館ということは領主がいるのだな?」
「あぁ。ずーっと前からこの街を守ってくださってるらしいクソッタレな家系だがな。町長兼領主、ハラルド王国マルベル領領主アーキスタイナー・ラル・マルベル。王国の上級貴族様だよ。」
・・・なるほど
「なるほど。それじゃもう一つ教えてくれ。あんたその領主様になにかしたのか?」
かなり重要な質問だった。自分がこの店を選んだことを誉め殺したくなるほど鍵を聞けそうだ
「さぁな。だが町長ことアーキスタイナー様が言うには俺がアーキスタイナー様の使いに毒リンゴを売ったことになってるらしい。それをはじめとしてテメーのガキに暴行だの外のやつらに物資の横流しだのよくわからん罪状までつけられてな。信用はがた落ち妻も娘も保護の名目で屋敷に連れていかれた。もうテメーがなにをしたかもわからねぇよ。」
「信用が無いもなにもあんたにだって味方くらい───」
「いねぇよ。当たり前だわな・・・この鳥籠とか言う鳥を止めている力は領主様が発動しているらしい・・・そりゃその俺達の安寧を守っている神様みてぇなお方を殺そうとしたとあっちゃぁ・・・そんな奴らでも俺を切り捨てるさ。今じゃこの街に居られなくなるのも時間の問題ってな。この街に俺が働ける場所はない。商店すらもこの様だ。証拠不十分やらなにやらで俺はここにほってかれたがこれなら裁かれた方がまだましだったな」
証拠不十分?だが家族は連れていかれた訳だろう?
こんなあからさまに人の寄り付かない上に設定の多い店主が鍵を持ってないわけがない。必ず何らかのヒントに繋がっているはずなんだ。
だが店主を消すことが目的なのではないのか。
連れていかれた店主の家族か?
そもそも領主とは何者だ。
というか・・・街を見たときに思ったのだが・・・戦闘要員が兵士数名だけとは何事だ?それも武装は対人向け、さらには錬度も大したものではなさそうだ
この街を一人で守るだけの力を持ち王国でもそれなりの権威を持つ領主が高々一商人の家族を狙った理由はなんだ?
話を聞く限りに賢君ではなさそうだ。
汚職や虚偽にまみれた見栄だらけのハリボテの英雄・・・そんな臭いがする。
とりあえず会えることを祈って行ってみるしかないか・・・
「そうか・・・助かった。」
そういって足早にその場を去り───切る前にチラリと後ろを確認する。
はじめと変わらず虚ろな表情を浮かべて店頭に立ち尽くす店主がいるだけ・・・
強いていうとするならそのなにも写さず光すら吸収しているかのように暗い瞳には雫が浮かんでいるような気がした
(・・・いまさら善行なんか積める立場じゃないんだ・・・僕には助けられないんだから。)
僕は心につっかえた何かをとるわけでもなく存在そのものを無かったことにして再び歩みを進めた。
行き先は領主館前のレンガの建物
目的は物語を進めること
店主の話を聞く限りではここの領主様とやらは民衆に絶対的な支持を受けてこそいるがその実なにか怪しい部分がありそうだ。
なによりもたかだか平民だ。保護だろうがなんだろうが貴族様が抱え込むのは少し違うだろう
だいたいなぜ店主を裁かなかった?
気にかける必要もないほど矮小だと?
・・・よくわからない
よくわからないが・・・外の奴等との格差を見ていると確かに怪しい人間であることがわかる。
何をたくらんでいるんだここの領主様とやらは
そんなことを考えながら歩いているとようやく領主館の前についた。
常に開いている両扉をくぐりなかにいるはずの受付とやらのところへ近寄る
「失礼、ちょうど今さっきこの街にやって来たのですけど・・・領主様にご挨拶をと思いまして。今お忙しかったりしますか?」
受付は一瞬驚いたような顔をしたのち周りの資料をばら蒔きながら奥の階段から二階へとかけていった
・・・かと思いきやすぐ引き返して僕の目の前に立つ。
先程まで座っていたからさほど気にならなかったがずいぶんと身長が低い。それはここの職員に総じて言えることだった。
みんながみんな小さい女の子。
いやそのうちのほとんどが幼いといっていい。
特に目の前の子なんかもそうだろう。
・・・なぜ?
ロリコン?いやいやならこんなに分かりやすくしないだろう。確かに町の真ん中にある上に時代背景は現代ではなくて中世基準。正直役所のような場所を利用する機会はなかなかないだろうが例えそうでもこんな風にオープンにするのは少し違うだろう
っとそこまで考えて衝撃が抜けてからようやく目の前の女の子が何かを必死にいっていることに気がついた。
「──ちょっと!きいてますかー?あのー!」
・・・少しほほえましい
だけれど僕は別にロリコンじゃない。逆にキラみたいなのは苦手なのだ
「なに?」
できるだけ笑顔で返す
もっとも特に深い意味はない
「名前!」
・・・うん?
「だからアポイントメントをとるには名前を聞かなくてはならないんです!答えてください!」
・・・あぁ、そういうことか。
「僕は───」
そこで僕は少し悩んでしまった
Miyuuと名乗るのはいい
名を広めるのにも役に立つ
だが相手はNPCだ
・・・そろそろもう一人の自分を進めなくては
現実での自分
ゲーマーとしての自分
・・・そして魔王としての自分
これは練習みたいなもの。
「───僕はマオ」
いい加減魔王を始めるとしよう。
手始めにここからだ。
「マオっていうんだ。よろしくね」
今回の笑顔にも・・・やはり意味はない
「マオさんですね。わかりましたそれで伝えてきます。・・・ただ先にいっておきますけれど領主様は気むずかしいかたなので恐らく会えませんよ?」
「えぇ構いませんよ。僕はなんだか会える気がしてきました」
そう、少し見方を変えるだけ・・・それだけで目の前の謎も町長の謎もとける
例えばそう・・・僕と言う例外のプレイヤーやボスにしてある程度自由に振る舞っていたらしいプロンがいる以上・・・似たようにボスがお遊びで出てきててもおかしくはない。
そう考えるならただの趣味として理解ができる。なにせ回りの目を気にする必要がないのだから
受付の少女は頭の上に大きなクエッスチョンマークを浮かべながらももう一度階段を上がっていく
待ち時間はなかった。
女の子が二階にかけ上がってから間も無く彼女の叫び声が響いたからだ。
降りてきた女の子に三度目の無意味な笑顔を向けて僕は彼女案内に従って二階に消えていった。
一階の他の幼女達もみんな目を見開いていたのが少し愉快だった。
さて切り替えていこう。
僕の予測というか勘が正しければ領主様とやらはロリコンなどこかのボスということになる。
正直・・・かなりめんどくさい変態が待っているところになんていきたくない。
ストーリー進展のためにしかたがないとはいえ・・・めんどくさいなぁ。
ストーリークエスト・・・各街に存在する物語を進めるためのクエスト。様々な条件のもとに解放されそれをこなしていくことで話が次に進む。
もっともクエストをこなさなくともその先の展開を知っていたり推理ができたのならばクリアしなくとも話を先に進められるクエストもある。基本達成報告は一度しかできず誰かが物語を進めると全体も進むため現行のクエストを受けていた場合自動的に無効になる。イベントに参加できるのは最後に立ち寄った街の物のみ。
もっとも街が一つクリアされるとそれ以降は新たな街に誰かが踏み入る度にポータルクリスタルが出現し街と街の移動が容易になるためそれほど気にすることでもない。
グランドクエスト・・・ゲームを通して進める物語。街を攻略していくことでイベントが発生するようになり受動イベント、確定イベント、能動イベントが発生するようになる。
受動イベント・・・ストーリークエストとは関係の無いところで特定の条件を満たすことで発生するイベント。グランドクエストに関係するものもあれば関係ないものもある
確定イベント・・・ストーリークエスト後やある程度グランドクエストを進めた段階で強制的に発生するイベント
能動イベント・・・ストーリーし自身の行動に関わらず発生するイベント。幸運値によって発生する確率やタイミングが左右されるものが多いことからラムはこのイベントの発生において大きなアドバンテージを持つことになる