第二十三話 変化の【原因】と進む『敵達』
お久しぶりです!
申し訳ないですテスト明けたのにしばらく遊び呆けたもので・・・全然執筆を進めていませんでした。
今日からはまた始めたいと思うのでまたよろしくお願いします!
では本編です!
第二十三話 変化の【原因】と進む『敵達』
side miyuu
まてまてまておかしいだろう。
なんで僕は目的を間違えた!?
なんで自分の決意を無意識のうちに翻していた!?
洒落にならないぞこれは・・・なんでだ?
・・・そういえばなんで僕はチートにたいする嫌悪感が薄れている?
確かに使うと決めたがそれでも嫌々のはずだ。
僕は自分の気持ちを偽ることはできても割りきれるほどの人間じゃない。
割りきったように見せるだけの人間だ。
・・・ならいつのまに僕は自分を騙していた?
それだけじゃないぞ。人を殺した・・・だからといって次をためらわない理由になるか?
僕はいつから人を殺せるように、チートを平気で使うように、力をつける理由が自分のためになった?
殺すように宣言したのはプロン戦の前だ。
チートはプロン戦の時にも嫌悪感を持てていた。
つまり一番最初に殺人にたいするハードルが下がり次にチートの使用にたいする嫌悪感が薄れた。
最後に力の理由が置き換えられて・・・タイミングは全部ボスを倒した後か?
それに変化してるのはどれも心理的なもの・・・それもきっかけすらなく突然に・・・
・・・アインか。
ブラスは初めから魔王をプレイヤーのなかから選ぶつもりだった。
でもそれはあくまでもアインの選択・・・つまり判断基準こそはわからないがどんな人物がなるのかを自分達で選べないということ。
初めから魔王を演じきれる人間を選ぶ設定ならいいが違うとしたら?
だとしたならば魔王を演じられるように改造するのではないか?
本物の魔王のように人の命を軽く扱い
子供のように力を振るうことになんの疑問も躊躇いも持たず
どこまでも利己的に力を振るう
それは人間からしてみれば悪夢としか言いようがないような存在だろう。
つまり僕は・・・このゲームのコンセプトを無視するかのような扱いを受けるこの僕は・・・・・・既にプレイヤーじゃないと?
(くそ!考えたくもないことを考えるな。必要なことだけを考えろ!)
・・・ふぅ。
とりあえずなんでボスを倒すことにより変化が生じるかだが・・・これは簡単だ。
いきなり改変してしまえば回りの人間が不信をもつしなにより物語がない。
徐々に変化させることでストーリーを作っているのだろう。
問題は対処法である。
自分の意思がねじ曲げられていることに気がついたところで対処できなければ意味がない。
このまま本当にラスボスとして変化していけば僕の意味がなくなってしまう。
それだけはダメだ。絶対に僕は僕のままで役目を果たさなくてはならない。
いまだって気づくことはできたのだ。
一応これからはボスを倒す度に自分の変化に気を配ろう。それ以外にできることはない。
考えたってダメなことにたいしては思考を加速しようが意味がない。考えれば考えるほど泥沼になるのみなのでしばらくは忘れよう。
とにかく僕はこのダストプラントをクリアすることができた。証拠といってはなんだがこの村はちゃんと元の姿であろう普通の村に戻っている。
これ以上ここに用もあるまい。
色々と気になることもあるがそれは後々来る人たちに任せるとしよう。
そうして僕は発生している村のイベントを無視して村を出る。
本来ならNPCにでも話しかけて情報を得るところだがいまは無理な感じがするしなによりもう森の情報はないだろう。
現段階で既に三人のボスを倒している。
うち二名は森のボスだ。そろそろ森にボスはいないだろう。
レベルもしばらく見ない間に19まで上昇している。
これが遅いのか早いのかはいまいちわからないがまぁレベルアップが遅いゲームならボスを倒してもこんなものか。
もともとプレイヤーボスは経験値よりも取得できるcrownの方が美味しいのだからまぁそんなものだろう。
まぁとにかくそろそろ森を抜ける頃だと思う。
森といってもとんでもない規模だ
さすがに全てを回るのは骨がおれる。
ならば次のフィールドに進むとしよう。
恐らくだがここの森を越えたところからが本番だ。
次の町と呼べるものも存在しているだろうし反対側を攻略しているであろうアルフレッドたちもそろそろ草原の王門を見つけていてもおかしくない。
反対の森の攻略は遅れるだろうからそれまでにどれだけ先に進めるかが重要だ。
その分自意識の改造は進むがそれでも止まる理由にはならないだろう。
逆にこれが犠牲になることにたいする恐怖を起こさせるものじゃなかったことを喜ぶべきだろう・・・
僕は村を飛び出し再び光の通らぬ森へと身を沈めていった。
side カケル
僕は今日友達達とは別に一人で行動していた。
理由は言うまでもないが僕が勇者であることはまだ悠哉にしか言っていないことと、勇者である僕がレベル上げをするのには一人がちょうどいいからだ
勇者といっても僕はまだ弱い。
パラメーター?もみんなに比べて少し高いぐらいだと思うしなによりケンカなんかしたことがないから魔物の気迫につい反応してしまう。
剣を振るうことには慣れたが同時に盾をつかうことができずにいる。
総合的に見ても僕はまだまだだ。
だから草原の奥まで一人できてみたのだが思わぬ収穫があった。
なんとプロローグタウンといわれる僕達が降り立った町のボスを倒した人達と知り合うことができたのだ。
アルフレッドさんとカズマさんというらしい
向こうもボスを倒したまままっすぐきたのか消耗が激しため助太刀を頼まれて一緒に戦ったのだが・・・素直にすごいと思う。
アルフレッドというリーダー風の彫刻のような男は僕と同じようにぎこちない動きをしていたが戦闘をこなすうちにみるみると動きがよくなり既に一人で同レベル帯の複数体のモンスターを同時に相手してみたり片腕がないカズマさんと連携をとりはじめている。
二人を見るにこのゲームではじめて知り合ったという感じなのだが既に連携が出来上がりつつあるのはアルフレッドさんがカズマさんを理解しつつあるからだろう。
逆に片腕を失っているのか戦い辛そうなカズマさんはその両手剣を片手で持ち見事に立ち回っている。
普段と勝手の違う戦い方を既にものにしつつあるようだ。といってもさすがに力を込められないので複数体を相手にするときは相手に個別で立ち会うように動き数劇打ち込んで隙を作ったところで確実に威力の出せるスキルで仕留めるといった戦い方だがそれでもアルフレッドの僅かな隙を埋めるように動くそれは確かに効率的で確実性のある戦法だった。
僕は二人の許容を越える数が出てきたときに数を削る役目だ。
まだ二人との連携はできるはずもなく邪魔になるため直接協力はできない。
もともと二人は消耗を押さえたくて話しかけてきたのだから二人が相手できるところまで敵を削るというやり方は間違えていないだろう。
もっともこれはアルフレッドさんが提示してきた戦い方なのだが・・・
というわけで僕は敵を引き付けてその間に二方に殲滅してもらっている。
この辺りの敵はまだレベル的に危なげなく倒せているがいかんせん僕自身が未熟すぎるためやはり協力というのは大切だと思う。
どんなに力を持っていても人が一人でできることは少なく、また価値もない。
小さい頃悠哉がよくいっていたことだ。
僕も幼くて意味なんて全然理解できなかったけど・・・というか多分悠哉もゲームかなんかの受け売りなんだと思うけど・・・まぁそれでもその言葉は真実だと思うしこうして仲間をおいて一人でフィールドに出た僕がとても実感していることだ。
・・・あ、そうだ!
僕は少し気になったのでカズマさんに声をかけることにした
・・・アルフレッドさんは少し怖いというか・・・緊張するのだ。
「カズマさん、少しいいですか?」
敵を探索していたカズマさんに話しかける
「ん?なんだ?」
礼儀とばかりにわざわざ体をこちらに向けて返事をしてくれる。
「あの町の攻略に僕の友人が参加していたらしいんですけど・・・」
「友人?・・・・・・誰だ?」
「あ、えっと・・・」
・・・しまった。名前を忘れた
「いやリア友なんでこっちでの名前は覚えてないんですけど・・・」
「うーん?そんなに人数多くないけどそれだけじゃ誰かわかんねぇなぁ。お前くらいの年頃のやつっていったら三人くらいだけど黒づくめとか年のわかんねぇやつとかいたからなぁ」
特徴・・・特徴・・・見た目は少し幼いように見えるから高校生というより中学生かな?髪の色は変えてなかったし・・・
「年齢は僕よりちょっと下ぐらいに見える黒髪の男です」
「・・・あ、うんそれミユウだ。」
「そう!それです!!そ、それでそのミユウ何ですけど・・・どこにいるかわかりますか?」
そう問いかけるとカズマさんは少し難しそうな顔をした
「・・・今すぐというのはちょっと難しいな。でもどうせあいつもフィールドに出てるか宿で寝てるかしかやることないだろうし町でもぶらついてたら案外簡単に会えるかもよ?」
とカズマさんがそこまでいったところでアルフレッドさんが割り込んだ
「その事だが既に奴は町にいないと思うぞ。」
え?
「町にいない?それはフィールドに出てるという意味ですか?」
「まぁそうと言えばそうだろうが・・・ついさっき俺の部下が連絡を寄越してな。内容はミュウがイーストウッドランドに向かったとのことだった。」
「なんでそんな報告があんたのところに来るんだ・・・」
カズマさんが呆れ顔で突っ込む
「別れるときにキラと奴には監視をつけておいた。」
「「いやいやなんでだよ(ですか)」」
平然とおかしなことを宣うアルフレッドさん
「いや、あいつらの行動を把握しておかないとならんのでな。特に実力者に今回のことで何かあっては困る。・・・まぁそれで判明したことだがミュウは東の森へとむかった。それも全速力で」
「だけどよ?それだけじゃ町を出たかどうかはわからねぇんじゃねぇの?」
「今あいつが森に潜るメリットはない。少し前の話だがキラからきたメッセージによると既に奴は向こうでゲートを見つけている。そして開始からしばらくたった今プレイヤーの密度はどこのフィールドもそう変わらんだろう。効率主義のあいつが森方向に進むのだとしたらその理由は森の突破・・・第2ステージへの突入だと推測できる。もっともやつが俺達に隠してることがない限りの話・・・俺の知らないなにかが向こうにあるというならば話は別だ」
そんな・・・
「そう・・・ですか。」
もうミユウは次に進んだ・・・一緒に戦った人もおいて、誰にも挨拶もせずいったということはそういうことなのだろう。あの時と同じだ・・・また彼は僕を頼ってくれない。
頼ろうともしない。
彼のなかでの僕は親友ではあっても仲間ではないのかもしれない。
仲間を・・・友達を置いて一人でフィールドに出た僕が言えることではないがそれを悲しく思う。
それでも彼は前に進んだのだろう。
惰性で勇者になった僕とは違う・・・彼の方がよっぽど勇者的だ。
現に今でさえ僕は勇者の力を大切な仲間を守るために便利だ程度の認識しかできていない。
僕は他のプレイヤーのひとを常に裏切り続けてる。
攻略に参加しなかったのも仲間のレベルがまだ危ないとか勇者を公表するのはまだ早いとかそういう意思を言い訳にしてただけかもしれない・・・勇者でもないのに人を守るために命を懸けた彼らの仲間だと胸を張って言える気がしなかったからかもしれない・・・きっとそうなのだろう。
「うーん、まぁきにすんなって。お互い生きてりゃそのうちあえるだろ。」
「・・・そうですね、そうします。」
僕はそれでもみんなを守る勇者を演じよう。
何故なら・・・本物の勇者も進み続けてるんだから
「さて、おしゃべりはおわりだ。前方からも敵が来ているでな」
アルフレッドさんの戒める声に引かれて前方に視線をやればちょうど四体のウールゴートが姿を表したところだった
「この毛むくじゃら硬いんだよなぁ。・・・よぉっしカケル!予定通り頼むぜー?」
カズマさんの言う通りウールゴートとは羊のように体毛を毛むくじゃらにした山羊のことだ。あまりにも長い体毛はボール状に纏まり斬撃だろうが打撃だろうが関係なく吸収してしまう。
カズマさんが言うには簡単な火の魔法でも使えれば楽チンらしいが今はそんなものないので真正面から削るしかないのだ。ちなみに毛から飛び出た二本の角は異常な攻撃力だがそれ以外の部分に攻撃力はない・・・あると言えばあるのだが微々たる数値過ぎて何とも言えない
「わかってますよ。正直僕もこいつは好きじゃないんですけど・・・」
でもまぁ耐久値が高い分剣の練習にはちょうどいいかもしれない
「俺達は右側の三体をやる。お前は一番端のあいつをやれ」
「んじゃ頼んだぜ」
アルフレッドさんの指示とカズマさんの応援を受けて左端の一体目掛けて飛び出す。
まだあまり現実と変わらない速度のそれはもちろん間にいるウールゴートに攻撃を許すがウールゴートの攻撃は全て直線的なのですこし軌道をそれてかわしてから再び目的の一体に向かう。
もちろんそいつも戦闘態勢に入っているがそんなのは関係ないとばかりにボールから飛び出た角に挟まれる顏目掛けて剣を振るう。
他に比べて防御の薄いここは若干ダメージが大きくなるがそれでも倒すには数が必要だ。
ときたま振るわれる角に注意をしてとにかく剣を振るう軸を崩さず脇を開きすぎず大振りにならないように意識しても未だカズマさんやアルフレッドさんのように剣を振るうことができない
これを無意識に出来るようになるというのは一体どれだけ先のことなのか・・・とにかく今は意識してその一撃を出せるようにしなくてはならない。
「うわっ!!?」
思考に意識を割きすぎたか
ウールゴートの反撃をモロに受けてしまう。
「くそ・・・」
問題と言えばこれも問題か・・・せっかく持っている盾を有効に活用できない。
剣に意識を割きすぎてとっさの時に盾を構えられない。
カズマさんは『盾を使うときは意識を剣じゃなく盾に置くんだ』と言っていた。何でも盾は隙を作らないためのもの・・・片手剣と盾を装備したときは剣だけじゃなく盾までも攻撃に回すんだそうだ。
隙を作らない一番の方法は相手に隙をつけるほどの余裕を与えないことだ。
剣で切り盾で殴り剣でそらし盾で押し盾で防いで剣で突く・・・そういう戦い方には盾の方を意識した方がやり易いとかなんとか。
まだ漠然としたイメージですらできていないが長年ゲームをやっている人が言うのならそうなのだろう。
とにかくできないことを嘆いてもしょうがない。できないことをできることにするために再び剣を構えて自分でもわかるだけの動きの不自然を削るように意識しながら振るう
ウールゴートが倒れたのはそれから数分後のことだった。
カズマさん達の方を見てみると向こうも既に戦闘を終えているようだった。
・・・というか知らない人が増えている
「よう、終わったみたいだな。」
カズマさんがアルフレッドさんとその見慣れぬ人から離れてこちらに来る
「えぇ、まぁ。・・・えっと、あちらの方はどなたでしょう?」
「ん?・・・あぁ、なんでもこの先にゲートがあったらしくてな。見つけた一般プレイヤーが駆け込んできた。βにはなかったから俺はなんとも言えないけどな」
ゲート・・・
「・・・挑むんですか?」
前回の戦いは多少不幸が重なったとは言えギリギリだったときく。
しかも前回の功労者二人は一人が消えて一人が休んでいる最中だ
「いやさすがにまだ挑まねぇよ。どちらにしても俺の左腕の回復とキラの・・・まぁ前回の戦いで頑張ったチビなんだがな?」
「あ、それはわかります。一応仲間が広場で見送りなんかはしてたので話は聞きました。」
「あ、そう?まぁとにかくそのキラの回復も待たねぇと始めらんねぇかな。まだ実力的にはどっこいどっこいなやつらばっかのなかで飛び抜けたやつが二人も抜けちまうのはすこしどころかかなりヤバイ。攻略するならキラの参加は必須だ。」
僕もキラぐらいの名前なら聞いたことがある。
ネイター登録を三つぐらい重ねてしてる大天才とかなんとか。
・・・ん?あれ?そういえばミユウってのもどこかで聞いたことがあるような気がする
「そんなにすごいんですか。」
「・・・現実に銃から放たれた鉛弾の軌道を計算してどう物にぶつかりどう反射するかを計算しながら連射できるやつが何人いるって話だよ。しかもそれをより精度の悪い昔の片手フリントロック銃でやるってんだからバケモンかっての」
・・・確かにそれは大層な化け物振りだ。
「俺の仲間の一人から聞いた話だと狙撃銃の射程から跳弾を繰り返させて拳銃の弾丸をミユウにぶちこもうとしてたらしいしな。事実本人に弾かれるまでは当たる軌道を描いてたって話だし。他にも弾丸を永遠と囲むように跳弾し続けて簡易的な檻を作ってみたりとかなんとか」
なんか跳弾ばっかりだなぁ
「なんかスゴいですね」
「だろ?お前の友達それ全部軽く乗り越えたらしいけどな。てかお前の友達も大概だぞ?ガンゲーなのにその大会中で使った弾丸は決勝での一発だけらしいし。」
・・・ミユウも何やってるんだろう。
「それはガンゲーって言うんですか?」
「ガンゲーの意味が俺の認識通りならおかしな話だな。」
・・・え?
「うわっ!?いつの間にいたんですか!?」
いつの間にかアルフレッドさんが僕の後ろで話を聞いていたらしい
「たった今の間にだ。ところでそろそろいくぞ」
その言葉にカズマさんが疑問を投げる
「どこに?」
「どこに?決まっているだろう。・・・ゲートだ」
・・・嘘ですよね?
「といっても挑むわけではない。場所の確認と誰かが下手に挑まぬようメッセージパッドを仕込んでおこうと思ってな。」
「あぁそれはいい考えだ。んじゃ案内してもらえるか?」
そういってカズマさんがプレイヤーさんに問いかける。
つられて視線をやれば確かに友達に見せてもらった広場での写真には居なかった人だ。
「・・・わかっています」
男はボソボソと聞き取りにくい声でそう呟いた
少し影のある顔なので詳しい年齢の判断はできないが成人はしているだろう。少し細身のどこか虚ろな気配を漂わせるその男はどこか危険な感じがする。
無意識に一歩下がっていた自分を奮い立たせて失礼の無いよう笑顔で挨拶をする
「こんにちは、僕はカケルといいます。よろしく。」
ギョロりとした瞳がこちらを射抜く
大丈夫・・・大丈夫と自分に言い聞かせてその視線すらも笑顔で受け止める
すると再びボソボソとした声で男は手短に挨拶を返した
「・・・どうも。ではいきましょう・・・こちらです」
・・・名乗りはなかった。
どうにも不気味なこの男に僕は不安を隠せない。
いや今は隠しているがそのうち何かの拍子に外に出してしまいそうだ。
それほどまでにこの男は謎の存在感を持っていた
「うむ、では参ろう。聞く限りではそんなに先ではないらしいでな、迅速に行動すれば日が暮れるきる前には町に戻れるかもしれん」
アルフレッドさんは何も感じていないようだし
チラリと横に目線をずらしてカズマさんを見てみれば案の定不気味なその男に話しかけていた。
カズマさんは誰でも信用してそうだからなぁ・・・
「ハァ・・・大丈夫かな?」
先が不安である。
それから僕たちは男に先導されながらも草原の奥の奥まで進んでいく。
そうして次のエリアに移ったのか周りの景色がだんだんごつごつとした岩場に代わり始めた頃・・・それは現れた。
一際大きな岩。
一瞬モンスターかと勘違いしてしまいそうなその巨大さに目を疑う。
「・・・ここです」
どうやらここらしい確かに岩の付け根を見てみるとそこには岩に取り付けられた王門がある。
「ふむ、光ってないな」
「起動はしてないんだろ。とりあえず座標記録とメッセージパッドを設置しておこうぜ」
そういって二人が王門に近づいていく。
急速に減速しだす僕の視界。
(なんだ・・・この感覚・・・)
世界が停滞した。
何も動かない・・・否、動いているように見えない
そんな不思議現象のなかでも僕は漠然とする嫌な感じに押し潰されようとしていた。
原因はあの男・・・何が・・・
瞬間体の中を一本の電気の槍が貫いたかのような衝撃を受ける。
瞬間的な・・・直感的な刹那の恐怖。
圧倒的過ぎるそれは僕の意識を一瞬の間に釘付けにした
・・・あの男・・・あの目は危ない!
あの目には見覚えがある・・・ずっと前の悠哉の目・・・自分の世界を構成しきった別世界の人間の目!!
世界が動き出す・・・じれったくなるような速度で動き出したそれにあわせて駆け出す
「アルフレッドさん!!カズマさん!!逃げて!!!」
僕の口は果たしてその言の葉を紡げたのだろうか?
僕の言葉は届いたのだろうか?
それはわからない・・・何故ならその音は何故かいきなり起動した王門の活動の呻きと後ろから飛んできた圧倒的な量の大気の流れによって掻き消されたから
僕達三人はそのままなすすべもなく吹き付けた突風を叩き付けられて流れのままにゲートのなかに飛ばされた。
僕が最後に見た風景は呆然とするカズマさんでも、急いで対処しようとするアルフレッドさんでも無く、風を飛ばしてきた張本人たるあの男だった。
まるで呪詛でも吐くかのように笑う奴の声を聞きながら僕は光に飲まれていった
部位欠損ペナルティー・・・部位破壊ペナルティーと違い安全圏に入っても回復しない。
回復には上位の治療魔法か専用の薬品。または1日の経過等を待つ必要がある。
現時点で取れる策は時間経過のみなので部位欠損をしてもうんよく生きていた場合は下位でもいいので回復薬を欠損部位に振りかけて出血状態を解除してから安全なところで1日待つことをおすすめする。
なお欠損した部位に装着していた装備はアイテムの放置とは異なり半永続的に所有権の移行は発生しないがオブジェクトとしての耐久値や強奪系統のスキルには対処できないためまずはアイテム欄から対象のアイテムを選択して装備の解除をしておくことをおすすめする。
なお消耗品のアイテムに限り部位欠損判定時に消滅する
部位破壊ペナルティー・・・部位欠損と違いイベントの終了や安全圏への進入、三時間の経過で回復する。もちろん上位の治療魔法やそこそこ高価な回復薬でも治療は可能。
アイテム喪失の危機は無いが破壊の場所によっては動かせなくなる部位があったり動くたびに激痛が走ったりもする。基本的に状態異常には掛からないが出血等の状態異常と同時に掛かると効果を増幅させたりもする。