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デスゲームノ『王』※お受験凍結中  作者: 野菜連合
一章 ーー始まりの町《プロローグタウン》ーー
18/55

第十六話 『本当』の自分

遅くなりまして申し訳ない。

そしてやはり一つだけ設定を変えます。

年齢設定ですがmiyuuは高1ってことにしておいてください。

とりあえず覚えているところは直します

ところでなかなかボスと戦うところに行き着かない・・・これは困った困った。

さらに困ったのが作者なんと英語の単位が足りません。これは困った困った

そんな困った作者がさらにテストを犠牲にして書いた話です。本編どぞ!

十六話 『本当』の自分





side miyuu


自分の身と話の展開のために尊い犠牲(カズマさん)を払った僕はキラにつれられてさらに広場を進んでいく。そんなに広い訳ではないのですぐ目的の場所にはついてしまう。

アルフレッドはそこで数人(・・・)の男と話していた。


(・・・あれ?)


なにか違和感を感じた。

なんだ?何を不思議に感じている?

服装か?確かにアルフレッドも周りの男たちも皆一様に現段階でてに入る装備のなかでも上位に入るであろうものでその身を固めている。たしかに凄いことだがそんなの工夫次第でなんとでもなる、だからそこじゃない。

・・・どこだ?僕は何を気にして・・・・・・


(あっ!)


わかった。たしかにこれは不自然だ。いやまぁ装備を見れば理由はわかる。軍人らしい考え方でもある。

実に合理的で実に堅実で実に不平等なこのゲームらしい。

わかってしまえば簡単な話。

アルフレッドは囲まれていない。

キラはファンの集団に

カズマはβ時代の友人に

それぞれたくさんの人に囲まれていた。もちろんまだ背中を預けられるほどの信頼はないかもしれない、実力も伴っていないかもしれない。

それでも命を失うかもしれない戦いに対して、『信じる誰か』の一声で集まれる。そんな人たちがいて不幸な訳がない。幸せじゃないはずがない。

もちろんアルフレッドにもそんな人たちはいるだろう。・・・でもそんな人たちもここにはいない。

普通ならば孤独を感じるだろうか?絶望だろうか?それともなにも思わない?これはずれた考えだろうか?

そうじゃない。アルフレッドはそうではないのだ

彼は人間だから孤独も感じる、無意味だと知っているけれど

絶望を感じる、諦めないけど

なにも思わないはずがない、人間だから

それでも彼があんなにも強いのはそれが理由なのだろう。ここにいる誰よりも人間らしく合理的であるがゆえに人間らしさがみえず強く見える。単純故に複雑、強いから弱く、らしくないのがらしい。

これらの二律背反が彼を構築する大部分であることが見えてくる。

これもそうかもしれない。隠しているからこそ見えてくる。

・・・口上が少し長くなったが簡単にいうと『彼は彼を慕うもの達を信頼はしても信用はしない』つもりなのだ。上下という関係は作っても仲間としての絆は作らない。

なぜ判断できるかというと彼のもつ戦力があれだけな訳がないからだ。一時的とはいえ彼の言葉は人を操った。結果何人もの人が死に生き残ったもの達は覚悟を決められた。そんなことをできた彼についていくと決めた人間は少なくないはずだ。

ならばなぜ他の人のように連れてこないか?簡単な話つれてくる必要がないから。

ほんと考えれば当たり前な話。力のないものを百人つれていくのもいいがそれではこのゲームは攻略できない。簡単に言えばボスを倒せても犠牲が増えるだけだからだ。簡単にいうとよっぽどのボスじゃなければ1対100で負けるわけがない。ましてや相手は人間だ。いくら強くても数は覆せない。

数は揃ってるのだからそれ以上は余分というものだろう。何よりも彼は軍人だ。切り捨てることも実力・階級主義なのも私情をはさめないのもはさまないようにするのも当たり前。

つまり使えないものは今回ひとまずおいてきて今後時間をかけて育成。その余った金銭や時間で現状使えるもの達に回して今回にすべてをかける。何ら間違っていない。

自分達の実力も行動のただしさも皆に見せられるしなにやり皆も希望をもてる。

生き方としては綺麗で故に罵られる愚かなものだ。でも僕は羨ましい。そんなことできる人がどこにいるだろう。そんな汚れ役を負うことにためらいを持たない人間がどれだけいるだろう。僕には無理だと思う。

現に未だに魔王(汚れ役)を背負う覚悟ができない。

さすがは騎士様だ。

・・・とまぁこんなに長く考え込んでもキラが一歩踏み出し終えるより早く終わるわけだから便利なもんだ。

・・・ほんとに可哀想な騎士様だよ。


と深く沈んでいた意識が浮上する感覚を味わいながら世界が加速していく様を眺める。

アルフレッドも話を切り上げてこちらに向かってくる

ふと視線があった


「む?ミユウか、よくきたな。歓迎しよう同士よ。」


「あまり歓迎されたくない関係だなそれ・・・まぁよろしく。」


こんな返答で満足したのか興味をなくしたのかは知らないが視線を僕からはずし今度はキラに向ける。


「貴様もだ。昨日ぶりだなキラよ。」


「おっすー!昨日ぶりだよアルフレッドー。」


「元気なようで何よりだ。・・・ところでカズマはどうした?たしかにそちらにかけていったのを見たのだが・・・一緒ではないのか?」


・・・何て答えるんだキラ?


「んー?カズマ?あぁ、たしかによくわからないことを叫びながらこっちにきたね。たしか・・・「うぉぉぉっ!愛してるぜ大地!俺の愛はもうおまえ以外には向けられない、さぁ!俺と熱い劣情のぶつけ合いをしよう!」とかなんとかいいながら地面にキスしてた。」


ーーーっ!?こいつ鬼か!?で、でもこんなの信じるわけが・・・


「うん?いやたしか叫んではいなかったはずだが」


「いや叫んでたよ。たしかに叫んでたね。」


「むぅ・・・まぁ貴様が言うのならそうなのだろう。私は記憶力で貴様に遥かに劣っているからな。」


信じるんかいっ!!!


「ていうか僕に勝てる記憶力何て存在しないよー。並ぶやつはいてもねー。」


たいした自信だな・・・てかカズマさんほんと不憫だよなぁ・・・怖いからなにも言わないけど


「ふむ、とりあえずそろそろ時間も押している。つれてくるゆえここで待て」


とアルフレッドが僕たちがきたみちをなぞるように数歩進むと


「あー、大丈夫大丈夫。ここにいる。」


・・・いつのまにかいた。しかもキラの髪を弄りながら。


「にゃっ!?」


目を丸くして自分の髪を抑えながら跳び跳ねる。


「お、乙女の髪をもてあそぶとは何事だぁー!!」


『うぉぉぉぉ!!!うらやまけしからん!!なんだあいつ!!何者だ!!』


『ひゅー、さっすがカズマ!俺たちにはとてもじゃないけどできんぜこんな公衆の面前でアイドルにオイタとかよ!』


『カズマ?よしブラックリストに入れておけお前ら。やつは危険だ。キラたんの清く正しい成長のためにも・・・不安因子は取り除かねばならん!』


『『『イエスッサー!!』』』


「そこうるせーぞだーってろばーか!」


え・・・えっと最初から説明するとカズマさんの復讐?かなんかで髪をいじり回されたキラに反応したファンとおそらくカズマさんのお友だちだかなんかの煽りに対してまたカズマさんが吠えた的な感じですはい・・・カオース


「む?なんだいたのか」


「いやまぁ途中からな。・・・にしてもこらガキ・・・よくもやってくれたな?」


「え?いやでもあれはそっちがわるーーー」


「問答無用!!」


そういって今度はキラのツインテールを三編みにしていく。


「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃっ!!!??ちょっ!ちょっとたんまそれだめだって!!三編みは・・・だめぇぇぇぇっ!!!」


・・・綺麗な空だなぁ


「時間がないのだがな・・・まぁ多少の遅れも想定内だ。」


「うらうらうらうら!こうか!?それともこうか!?」


「う、うにゃぁぁぁぁぁっ!!!」


・・・お父さん、僕は今大変ホームシックです。とりあえずここの人たち皆殺しにして帰りたくなってきました


「まだまだ!今度はツインドリル!その次はツーサイドアップ!とどめはシンプルにポニーテールだぁぁぁ!!!」


『ハッ!まておまえら。私は判断を早まっていたようだ・・・彼は勇者だ。我らキラファンクラブにはできないことを平然と・・・一同!勇者カズマに・・・敬礼!』


・・・なんかもういいや




********




結局騒動が収まったのはそれから十分後のことだった。

当初の予定から少し遅れたが無事に打ち合わせは開始され順調に進んでいる。

ただやはりプレイヤーボスとノーマルボスでは戦い方も違うらしい。まずノーマルボスと違ってプレイヤーボスは小さい。

本当にプレイヤーが相手なのであまり数でいっても的が小さすぎるので邪魔になるだけなのだ。

なのにステータスは高く中身も生身の人間ということですごく厄介な相手らしい・・・本来は。

中身も人間なわけだから覚悟も必要だ

というわけでプレイヤーボスの討伐にいくメンバーはここに集まった40人ほどの中から十二名を選ぶことにした。人数も考えてというわけで各陣営三人ずつ、自分達を含めて十六人の行軍だ。

アルフレッドはここで実力よりも冷静さを保てる人員を優先してつれていくつもりだったらしく数的に言えばちょうどいいとかなんとか。

キラはファンクラブの会長と副会長、会員No.3をつれていくらしい・・・てか勝手に決まってたらしい。

カズマのところはある意味一番の戦力になると思う。何でもβ組は事前情報が豊富な上に経験者ばかりだ。実際スタートダッシュを決めて早くも魔法使いになったやつもいるらしいし、初めから職業をもらっていた人以外は未だに戦闘手段が(しかもスモールソードかミドルソード)しか無いため自然と期待も高まると言うものだ。

・・・対して僕を含めたソロ四人はなんともカオスな具合だ。

まずは当たり前のように僕。まぁ当たり前。

次に昨日道でぶつかった女の子。

その次にいかにも真面目ですといった感じの女の子

最後はなにやら顔に布の様なものを巻いて体の線を大きめのローブでかくしたただならぬ雰囲気の性別不明・・・背は高めなので男に見える

ちなみにこれアルフレッドたちがそれぞれが広場を見渡して適当に決めた人選だ。もちろん判断基準はあるのだろう。・・・検討もつかないが恐ろしいまでに最悪の手札だ。ストライク三回続きのターキーといっても過言じゃないくらいに素晴らしい人選と言える。

一人は昨日あった女の子。ぶつかっただけで変態と罵られたのだからお察しいただきたい。

次の真面目そうな女の子。別に悪いわけじゃないけど僕からしたらハードルが高い。何よりもゲーム開始直後から変態と言われる僕を見たらなんと思われることか・・・

最後のなんてまさにそうだ。なんだあの空気・・・近づきたくない。あれはお断りしたい。

しかし無情にもアルフレッドは僕に彼女らをスカウトしてこいと言うのだ・・・わざとじゃないよね?なんか理由があっての人選だよね?・・・はぁ


僕はまず最初の相手として一応顔見知りである少女を選んだ。昨日はいろいろ衝撃的すぎてよく見ていなかったが黙っているところを見るとなかなかにかわいい。そこから理由は察した。昨日僕が変態と罵られた理由と17号という数字の意味。・・・まぁまんまの意味なんですけどね。


「こんにちは。昨日ぶりだね」


相手がそういうことならこちらも少し距離をとってあまり得意ではない笑顔を浮かべる足を止めて無害さをアピールしながら話せば彼女も少しは安心してくれるだろう。

・・・しかし聞こえたぞ。こちらをふりむいた瞬間「キモッ」って呟いたろう。おまけに舌打ちも


「あー・・・どちら様でしょう。私忙しいのでできればあとにしていただきたく・・・やっぱりあとでこられても困るので来ないでいただけると幸いどころかこの世の春到来レベルの幸せを感じることができそうです」


これはひどい・・・


「・・・昨日君とぶつかってそのまま罵られ続けた変態17号だよ」


泣く泣くその名を出すと思い出したのか手のひらを打ち合わせる少女。


「あぁ昨日の。にしても自分から変態を自称するなんて・・・筋金入りですね。やはり気持ち悪いので用があっても近寄らないでください。」


こ、この娘・・・まぁうん。罵倒はされているけど別に本気で拒絶されているわけではない・・・よね?

あ、そうなるとこの娘はツンデレってことになるのかな?嫌よ嫌よも好きのうちっていうしそう信じておこう。


「ところでツンデレちゃ・・・名も知らぬ女の子。用はあるから聞いてくれると助かるなぁ」


「ちょっとまってください!!?なんですいまの『ツンデレちゃ』って!待ってください話を進めようとしないでください誤解です誤認です誤植です誤飲です誤免です

す!」


「最後のは誤字だな。」


「そんなことはどうでもいいんです!ひどくおかしな認識になっている気がするのですがそこらへんどうなんでしょう!?今すぐ早急に足早に早口で答えてください!」


「なにか繰り返すのがマイブームなの?それでも足早は微妙なところだよ?」


「は!?私の情報が収集されていく!?謀りましたね!!」


「いいやこれは孔明の罠なんだ。」


「なんですと!?孔明って諸葛孔明のことですか!?どこどこ・・・ってアホですか!?」


「いいのりだね。ところで今からボスのところまで僕とtogetherしませんか?」


「とんだエスコートをありがとうございます!用件はそれだけでしょうか承りましたので私の健康のためにも今すぐ早急に迅速に直ちに間髪おかずに消えてくださいこの変態!」


「うん。僕も他の人のところにいかなきゃならないからそろそろいくよ。噴水のまえあたりにいてくれると助かるな。じゃあねツンデレちゃん」


「ツンデレいうなぁぁぁぁ!!」


彼女が断末魔の如し叫びをあげた時にはすでに僕はその場に居ない。

僕は少しスッキリとした気分で次の人へ向かうことにした。

次の狙いは真面目そうな人。内容が真面目なら聞いてくれそうだし何よりももう一人の人と話したらこの高揚した気分を台無しにしそうで嫌なのだ。

・・・どの人だっけ?

あ、いたいた。そうだそうだこの人。みんなが初期の設定で髪の色をいじっているのに黒髪のままという珍しい人だったから思い出せた。・・・てか言うほど真面目ならゲームはやらないのか?ひょっとしたら雰囲気真面目で本当は気さくな人だったり・・・


「すいませんちょっとよろしいですか?」


声をかけられた真面目そうな女の人は声をかけられたのが自分かわからずキョロキョロとしている。少しして自分が声をかけられたことに気がついたのか最後の確認とばかりに自分を指差して首をかしげてくる。

本当はサムズアップライブやらでかえしたいところだけれど相手が本当に真面目だった場合に不快な印象を与える可能性があるので普通にコクリッと頷いておく。


「えーと・・・なんでしょう?」


「いえ先に確認しておきたいんですけど・・・ここにはボス討伐に参戦するためにいらっしゃったんですよね?」


相手は僕がなんの意図を持ってこんな質問をしているのか理解できないようで怪訝な顔をしている。


「えぇ、まぁ。」


「そうですか!よかった。おめでとうございます!あなたは今回のボスの討伐隊として選ばれました。詳しくは噴水前にて話すので移動してください。」


なるべく事務的な言い方を選んで話す。

といってもこれこそ怪しい発言そのものなのだが移動ぐらいなら応じてくれるだろう。


「嫌です。」


「そうですか、ありがとうございます。ではまた数分後にお伺いします・・・ってえぇ!?ダメなんですか!?」


「嘘です。」


「!?」


「嘘です。」


「どっちの意味で!?」


「では噴水前にてお待ちしています。」


「・・・はい。」


・・・なんというかイメージと真逆でお茶目な人だった。

・・・ラストかぁ・・・気分重いなぁ


とどちらにせよ下がったテンションで足を後ろに向けてあるきだす。

するとなにかにぶつかった。・・・というかこれまでと違い撥ね飛ばされるというより受け止められた感じが強い。僕も相手も揺らぐことなく、僕も相手も確かに相手の熱を感じながら直立していた。


「っ!?」


謝るよりも先に悲鳴が飛び出たことについて悪いとはおもはない。なぜならそれほどまでに衝撃的なことが同時に起きたのだ。


まず1に僕を受け止めたこと。


次に今も僕の顔に残る僅かな柔らい母性の感触。

いくら現実で人付き合いをしてこなかった僕といえどネットならば別。率先してしたことはあまりないがそれでも決して少なくないレベルのコミュニケーションはとってきた。故に普通ならばどもることも緊張することもない人との対話だがさしもの僕も女性の胸に顔を突っ込んだのは初めての経験だった。しかも厄介なことに相手は豊かなそれをサラシかなにかで締め付け、さらに少し大きめの輪郭を隠すようなローブを着ているのでパッと見は背格好から男にしか見えないという罠だ

というか触れていても違和感ぐらいにしか感じないだろうこれ。痛くないのか?


この段階で僕は急いで飛び退く。今更ながら全体像を確認してやはりと思う。


第三にこいつは・・・


「よう、私様に用があるみたいだったから来てやった。」


それは(・・・)の声でとんでもないことをいってのける。


第三の理由・・・こいつは僕が声をかけるべき最後の相手だった


キラが選んだ最後の一人・・・顔を布で隠した謎の人物。遠目で確認しただけなのに体が接触を拒絶した正体不明。たった一言はなしただけでわかるその異常性。アルフレッドやキラのような感じる異質さではなく理解させられるソレは人間という種としての格の違いを思い知らされる。仮に魔王本来の力を振るったとしても勝てる場面が想像できない。逆に言えばそんなあり得ないことが簡単に想像できてしまう。

なんてモノを選んでんだあのドチビ。


「んー?どうしたよ?そんな蛇ににらまれたかのように固まっちまってよ」


そういいながらカラカラ笑う女。男の声を出しているがこれは間違いない

これほどの人物を相手にするとなると自然と自分の中で警戒度があがる。お陰でさっきの女の人のように油断から手玉にとられることはなくなっただろう。・・・実力で手玉にとられることはあるかもしれないが。


「いえ、僕ってば思春期真っ盛りの初な子供なモノで。ちょっと刺激が強すぎたんですよね。」


「ん?よくわかったな。初な子供はむしろわからんもんだと思うがな。生の感触を知らんから」


と唐突にもとの声であろう女性特有の声に戻す。


「不自然さには敏感なんですよ僕。男の胸でも女の胸でも普通は感じないソレを感じるってことはそれは胸を作っているか潰しているかってことです。抑えた胸に対してその体の線を隠す服装と男の声・・・そこまでわざとらしい変装はありませんよ。クオリティが高くても過ぎればらしすぎて不自然です。」


「ほーぉ。参考にさせてもらうわ、ありがとな。にしても不自然さに敏感ねぇ・・・それこそまぁ不自然な設定を作ったもんだ。まぁ別に気にしないけどな」


「本当ですよ・・・?」


「どーだか・・・ところで同類。私様は用事を聞いていたんだが?」


「話をそらしたのは貴女でしょうに。あと同類ってなんですかやめてください」


「『貴女』じゃない。私様の名前は『M.M.』ってんだ。よろしくな、同類」


「またそらしましたね。てか無視しましたね」


「んなことはどうでもいいんだよ。名乗ったんだから名乗り返せ」


・・・どうせ同類としか呼ばないくせによくいうよ。


「私の名前はABCですどうぞお見知りおきを」


「わかったmiyuuだな。」


「知ってるならきかないでくださると嬉しいのですが」


「相手が名を知っていても名乗り返すのが礼儀ってもんだ」


「・・・で?何で同類何て言うんですか?ついでに僕の名前を知ってる理由も教えてください。」


「先に質問したのは私様なんだがなぁ」


「話をそらしたのも貴女です」


「貴女じゃなくてM.M.だってば。好きなように読んでくれて構わんけどよ、呼び方は名前にしろ。」


「・・・ダブルマゾさん」


「ソレでよし」


「いやよくねぇよ。」


「いいんだよ私様がいいっていったら殺人も合法だ。」


「現状だと洒落にもなりませんね。あまり好きな冗談ではないです」


「別に冗談って訳ではないんだがなぁ」


とそんな風に真顔で嘯く彼女の表情はうかがい知れない。

顔を覆い隠す布と布の隙間から見える金眼のみが怪しい光を放ち全身を影のように黒く染めた彼女のなかで星のように輝いている

一見神秘的ですらあるその光景は彼女のだす不思議な雰囲気にのまれないように逃避する先としてはベストなものだろう。もっとも腹の探り合いの最中にそんなことをすれば一気に腹のうちを悟られるのだろうが。


・・・そんなことはおいておいてどうにも納得のいかないところがある。

この女性・・・もしくは少女(絶対にないが)のことだ

先程からずっと話をそらされているが彼女は僕のことを「同類」と呼んでいる

同類・・・それはもちろん違うと断言できる。彼女はむしろアルフレッドやキラ側の人間だ。むしろソレそのものと言っていいほどのレベルで。

そんな彼女がそんなことをわからないはずが無いだろう。なぜ彼女はわかりながらもそんなことを言ったのか?僕はソレが気になる。

僕は自分が壊れていることはしっているがどこがどういう風に壊れているかまではわからない。

何で自分が周りとずれているかなんてわかるはずがない。ソレの答えをこの人が知っていると言うのなら僕は教えて欲しい。その答えを知れば僕は現実で普通の生活を送れていたはずなのだから


「甘ったれんなよ同類、私様は教師じゃないんだよ。」


だろうね。・・・驚かない。僕は絶対に驚かない。そしてツッコまない


「なんだつまんねぇやつだな。ほれ、答えてやったんだからさっさと用件をいえ」


・・・


「・・・わかってるんじゃないですか?」


「お前こそよくわかったな。」


この人は・・・


「だから名前で呼べって言ってんのに・・・んー・・・じゃああれだ。私様のことはこれからマキナと呼べ。わかったか?」


「・・・はい」


「いっぺんよんでみろ」


「・・・マキナ・・さん」


「あーあーかってぇなぁ。ま、いいや。噴水前だっけ?ほらいくぞ。・・・あ、私様のことは秘密だぞ。あくまで寡黙なだけの普通の男性で通すからよろしく」


「・・・ハァ」


「幸せが逃げるぞー」


誰のせいだ誰の。

マキナさんは僕よりも先に人混みを抜けて噴水までいってしまったようだ。

・・・ほんとにめんどくさくて厄介なパーティーになったもんだ。

時間も無いしあまり遅くなると待たせてる人たちに何を言われるか判らないので僕もさっさと移動することにした。

結局誤魔化されたがあの「同類」とは一体何のつもりなのか・・・気になって仕方がない。

そしてもうひとつ。

昨日の仮面はアインに接続することにより僕の心を読んでいたわけだが・・・マキナさんはどうしたというのだろう。彼女も僕と同じ立場なのか?それなら確かにアインと繋がっていてもおかしくないし同類かもしれないが・・・アインに接続している以上僕だってやればできるのかもしれない。

やはり相手も何らかの方法でアインと繋がっているんだろう。そう考えないと心を読んだところで僕の思考速度についてくる方法がない。

・・・あんな人間がこんな事件を起こすとは思えないし・・・やっぱり同じ立場だと考えるのが自然か?・・・でもソレで同類なんて言葉を使うのもちょっとなぁ

・・・とりあえずいこうか。

噴水前にはアルフレッドたちもいるし、恐らく説明はされていると思う。だからあとはアルフレッドたちに任せてボスのところまでいくだけだ。


「お帰りミュー君!お勤めごくろーさまです☆」


「数秒見ない間にまたアホ具合が成長したなキラ」


「ひどっ!?」


「なら学習しろ」


「年上はもっと敬うべきだと思うよー!」


「ならソレらしい言動をすることをおすすめするよ」


「キラ・・・お前もう諦めたら?」


とカズマさんが会話に入ってくる。まぁさっきまでと違い初対面の人が集まっている今あまりふざけるのもよくないか


「こんな風にあしらわれて引き下がれるかー!」


「あしらわれてる自覚はあるんだな。とりあえずそろそろ時間も時間だ。皆にはすでに説明したからとりあえず進行しよう。アルフレッド!ミユウもきた、進めてくれ。」


「うむ、それでは・・・注目っ!!!!」


一瞬で広場が静まり返り無数の視線が僕らに突き刺さる回りにいた人たちは皆噴水から少し離れていくのでまんなかに取り残された僕らは目立っているのだ。さらに言えば今回の主催者とも言える三人がいるのであればその集団の意味も自然と理解できるはず・・・最初のボス攻略のメンバーとして選ばれた僕らを値踏みしているのだ。

人間というのは上下をつけたがる。それもこの世界でいえばレベルなんてもので分かりやすく表されてしまうもの。

だから彼らは考えているのだろう。自分より本当に優れているのか?追い付けるのか?なんで選ばれたのか?可能性はあるのか?

その目に写るのは嫉妬や疑心、悲しみ、怒りだけではない。

羨望も期待も尊敬も・・・各自が己の心に野心を宿した眼を向ける


「いい目だ、これからもその心を忘れぬことだな。・・・さて!皆も察したように此度のボス攻略のメンバーが決定した!!この戦いはこのゲームをクリアするにあたってとても重要な意味を持つことになるだろう・・・ぜひそんな戦いに赴く戦士たちの勇姿をその眼に焼き付けていって欲しい!私の言葉はこれだけだ。後は今回部隊を率いる三人のものに引き継ごう。」


・・・え?

なにこれ?おれもやるの?


「じゃあお先もらうぜー」


といってカズマさんがアルフレッドのとなりにかけ出る。


「あ、ずるい!」


キラは出遅れたようだ

つまり・・・これを知らなかったのは僕だけということになる


「は?」


「ん?どうしたのミュー君?」


キラがカズマを恨めしそうに睨みながら意識だけをこちらに向けてきた


「・・・僕スピーチするなんて聞いてねぇから何も考えてない。」


瞬間キラの周囲だけ時が止まったかのような動きを見せた。いいえて妙な表現になったが簡単に言うとキラが突如として固まったのだ。本人談だとチャームポイントらしいツインテールも今は人をさせそうなほどに鋭く硬質化している

・・・まさか。


「おいキラ・・・お前まさか俺に伝えーーー


「あぁっと!カズマの番終わっちゃったね!次私の番だから行ってくるね!」


と不自然に話題を切りカズマさんと同じようにアルフレッドのところへかけていく。

確かに見てみるとカズマさんのスピーチは終わったようだ。

途中キラがこちらを見て親指を立てながらカズマさんになにかを呟いていた。

入れ替わりでもどってきたカズマさんは怪訝そうな顔をしながら僕に伝言だといい「がんばって☆」と妙に腹立つ口調でいってのけた・・・

後ろからくぐもった感じの笑いが聞こえてきた・・・恐らくマキナさんだ。・・・あの人も他人事だと思って・・・


「カズマさん、ひとつきいてもいいですか?」


「おう、なんだ?」


「僕にスピーチのことを伝える役目って・・・誰だったんですか?」


「ん?それならキラが・・・ってまさか?」


「えぇ、そのまさかです。」


「・・・あのバカ。・・・はぁ、いいや。おれがアルフレッドに訳を説明してきてやる。」


といって一歩踏み出したカズマさんの腕をつかんで止める。

ここでそんなポカを判明させると観客たちの向上心や熱狂を萎えさせる可能性がある。それは今回の目的の半分が無意味になることと同義だ

させるわけにはいかない


「大丈夫です、何とかします。」


「なんとかってお前・・・」


カズマさんがなにかを言い切る前に圧倒的な歓声が彼の声をたちきる。

キラがスピーチを終えたのだ・・・たったそれだけ。

それだけでこの場は彼女に魅了された。


「・・・なんつーか悲しくなってくるねぇ。これがネイターってやかい。」


「・・・・・・。」


否定はしない


「まぁそうなんだろうな。お前も大丈夫っていってるし・・・行ってこい。同じネイターならおんなじくらい盛り上げて見せろよ?」


「・・・ハードル高すぎですよ。」


なんとも極端な彼の物言いに苦笑い


この熱狂を前に僕は足を踏み出す。

前からくるのはこの場を支配したバカ(女王)

生意気にもかっこつけながら歩いてくる様はやはりネイターのなにふさわしい。


(・・・負けてらんないな。)


僕は負けず嫌いだ。どうせなら勝ちたい。

だから僕は負けじと歩みを続ける

キラとすれ違う瞬間に彼女は僕に笑いかけた。それはとても挑戦的な笑みで・・・とても僕を刺激した。


ーーー今度は負けないーーー


彼女の顔がそう言っているかのようにみえる。

僕も例に則って言葉ではなく表情に気持ちを込めて伝える


ーーーかっこつけんなアホーーー


自分でも思う、最高の笑顔だった。

彼女は怒りゆえか空気に当てられて興奮したのか顔を少し赤く染めてうつむき歩き出す。


アルフレッドのところまでたどり着き前へ向き直る。

聞こえてくるのは疑問。

当たり前だ・・・ここまでのメンバーは皆一様に知名度の高い人達。さらに言うなれば僕の前はキラで回りから見れば僕はトリをつとめていることになる。

なぜこんなよくわからんやつが最後なのか・・・気になって当たり前だ。

ちらりと横目でみんなを確認する。


アルフレッドは・・・身を瞑り既に聞く体制に入っている。僕のスピーチにそんな価値はないと思うのだけれど・・・


カズマさんは・・・心なしか不安そうだ。あぁはいったもののやはり心配なのだろう


キラはいつになく真剣な目でこちらを見ている。目が合うとまた僅かに頬を上気させた。・・・そんなに怒ってるのか?


マキナさんは・・・顔は伺えないが楽しんでいることは間違いない。


ツンデレちゃんはさして興味無さそうに視線をあちこちへと向けていて真面目そうだった女性は何を考えているのか判らない顔でこちらを見ている。


・・・はぁ

体にこもった緊張をほぐすように深呼吸を繰り返す。

正直緊張はそんなにしていない。

理由は簡単だ。この思考速度があるかぎりアドリブだろうが特に問題がないから。だが今回に限りこれは使わない。・・・何度も言うが僕は負けず嫌いだ。そしてチートは好きじゃない。

だから僕はこの勝負にバカみたいな思考速度を使うことはしない。


場が落ち着きを取り戻して意識がこちらに向くのを感じながら僕は口を開いた


ーーー僕の名前はmiyuu。知っている人もいらっしゃるかもしれませんね。こんなんでも一応ネイターをやっていますーーー


この短い文で会場は一気に盛り上がりを見せる。


ーーー実は僕、緊張しちゃってここではなそうと思ってたこと忘れちゃったんですよ。だからあまり長いことは言えません。皆が楽しめるなことも、皆が気になることも言えません。ーーー


僕は天才じゃない・・・ずれているだけなんだ。

だからあくまで凡才であることに代わりはない。

だから皆を惹き付けるカリスマも率いるリーダーシップも発揮することはできない。

・・・でもゲームなら・・・


ーーーですが一つだけ約束しましょう。ーーー


ゲームプレイヤーとしてネイターの名を受けた僕にできる唯一のこと・・・


ーーー必ずやこのゲームをクリアしてみせますーーー


ゲーマーだから


ーーー生き残ってくれさえすれば絶対に世界の終わりを見せますーーー


魔王として


ーーーだから見ていてください。僕は今回・・・ボスを・・・人を殺します。ーーー


既に一人殺してるくせによくもまぁいけしゃあしゃあと抜かせたもんだと自分でも思う。

でも・・・これは負けたくないからではなく本心としてだ。

僕は殺させない。罪人を増やす必要はない。僕は殺す。

人を殺すだけの修羅へと堕ちる。・・・だから壊れているんだろう。


ーーーその決意として僕はここに・・・これまで隠してきた顔を・・・名を・・・声を・・・心をーーー


ようやく決めた。僕は逃げない。

人を救えずそれどころか殺し、親友にあえば何をするというわけでもなく一人で逃げて、敵には心の隙をつかれ・・・そんな僕は『miyuu』とはいえない。

僕はmiyuu()であるために御正悠哉を捨てる。


ーーーここに晒したーーー


素直になろう


ーーーだからーーー


素直になろう


ーーーついてきてほしいーーー


素直になろう


ーーー信じてほしいーーー


素直になろう


ーーー支えてほしいーーー


素直に・・・なる


「だから僕と一緒に戦ってください」


それは僕が発したことのない言葉だった。

セイネ君の時も・・・僕は彼と一緒に戦った訳じゃない。

彼を下に見て・・・侮って・・・そして一人勘違いをして守る必要もないのに勝手に守っていただけ・・・それはまるで七年前のように。

だからこんどは同じ間違いを繰り返さないためにも


「僕の隣で・・・戦ってください」


ずれたままで・・・ひとり孤独で終わりたくないから

だから僕は・・・素直になる


あー・・・成績やばーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!


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