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兄転生、妹召喚  作者: 睦月 朔日
第一章~未定~
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~第4話 日常~

「でや!」


 俺の拳から放たれた拳撃がクイーンラビットを貫いた。


「ギギィーー!」


 崩れ去るクイーンラビットを傍らに、残りの数体のラビッドナイトが守護すべき対象であるクイーンを倒されたことに激怒して俺目掛けて剣で斬りつけてくる。


 迫り来る無数の剣撃をバックステップですべて回避し、残りのラビットに対して俺は一気に攻撃を仕掛ける。


 『濁流脚!』


 濁流脚とは、武闘家(モンク)の中位技に位置し、複数の敵を蹴り倒す技である。その様がまるで濁流のようなことからこの技名が付けられたとか。

 発動モーションが少し複雑で、ダッシュからの回し蹴りでスキルが発動するため、慣れるまでは少々当てづらかったりする。

 まるで、濁流の音のような大きな音が鳴り響き、放たれた技が複数の敵を飲み込み、無情にも敵は為す術もなく消え去っていく。



「ふぅ……。かなり技の発動にも慣れてきたな」



 俺は周囲に敵が残っていないかを確認しながら、慣れた手つきで消え残っているモンスターの魔素材をはぎ取ることにした。

 ちなみに、先ほどの魔物たちは、クイーンラビットとラビッドナイトって言う魔物で、以前戦ったラビットソルジャー、ラビットレンジャーと同じ種族になる。

 ラビットソルジャーはウサギ型の魔物で、剣を持って戦うことができ、この種族の中では一番ポピュラーなタイプの魔物だ。

 ラビットレンジャーは弓を使うことができすばしっこいし、ラビットナイト頑丈な鎧と盾を持った騎士タイプで、クイーンの近衛的な存在として常に守っている。

 クイーンラビットは群れに1匹しかいない珍しいタイプで、クイーンラビットが居る群れは統率がとれて、ラピッド系の能力が上昇するためかなり厄介なやつだ。

 このタイプの魔物は見た目は可愛いが、恐るべき点は様々なタイプが存在して、その統率のとれた連携にはゲームの序盤ではかなりの強敵となったりする。


「お、毛皮が手に入ったか。これでレザー装備が作れるかな」


 慣れた手つきで敵から魔素材を剥ぎとった俺は、そのままインベントリの中へ放り込んだ。



 そうそう。初めての戦闘から早三年。

 俺も8歳になったんだ。


 あれから、この世界のこととか自分のこととか色々分ったから、みんなに報告しようと思う。



 まず、この世界について。


 この世界はどうやらFTOにとても似ているらしい。


 まず、俺らが暮らしている大陸の名前はメルヒェン大陸。そして、俺らの村があるところは、アイソーポス王国の領土になるらしくて、名前はミルミンギ村って言うらしい。

 村の事は以前説明したから省くけど、メルヒェン、アイソーポスに関してだけ、どどちらもその名前はFTOにも出てきていたんだ。

 ただ、規模がちょっと違っていて、FTOではメルヒェンは世界の名前、アイソーポスが大陸の名前だったんだけど。


 それに、冒険者っていう職業があって、その中の職業も分っている限りでは一緒だったし、モンスターに限っても見た限りでは同じだったよ。

 まぁこれだけFTOの設定と類似しているのであれば、もしかしたらゲーム時代に培った知識も役立つかもしれないね。

 勿論、これは既に現実の世界のことなんだから過信は出来ないけどね。



 次に、先程魔素材だったりインベントリだったり知らない単語が出てきたと思う。


 魔素材とはいわゆるドロップアイテムのことだ。敵や魔力のこもった自然物などから取得出来るもののことをこの世界ではそう呼んでいるらしい。

(ちなみに、魔力のこもっていなものは普通に素材っていう)



 初めの頃は、敵から魔素材を取得するなんて考える暇はなかったのだけど、戦闘訓練としてラビッド達と戦っているときに消え残る魔物がいる事に気が付いたんだ。


 本来、魔物とは魔力を宿す生物を指し、魔物を倒すと構成されていた魔力が崩壊して、魔物は粒子となって消え去ってしまう。

 しかし、稀に倒されてもその構成魔力が崩壊しない敵がいた。

 これに関しては、両親にそれとなく聞いてみたのだけど、どのような法則でそうなっているかは未だにわからないらしい。

 その敵から魔素材をはぎ剥ぎ取り、それを元に道具を作成すると強力な道具を作ることが出来る。



 しかし、俺は両親に内緒でこの場所で魔物狩りをしている訳だから、そんな魔素材を家に持って帰ってくる方がおかしい。

 それが原因で魔物狩りや能力がばれてしまうのは元も子もない。でも、折角手に入れた魔素材がそのまだと非常にもったいない。

 なので、どうにかならないかと悩んでいるときに偶然見つけたのがインベントリだ。


 これも俺自身正直どういった原理で出来るのかは不明なのだが、俺が手に持った物をどこかに保存することが出来るのだ。

 ゲームのインベントリみたいにアイテムをしまえることから、俺はそう呼んでいる。

 しかも、入れたものは入れた時の状態が保たれているらしく、以前お昼のオムレツとパンをインベントリに入れていたことがあったのだが、食べる時に取り出してみると作りたてそのものだった。


 ただし、入れておける量には制限があるらしく、制限を超えてしまうと動けなくなってしまうようなのだ。

 そのせいで、戦闘中に調子に乗って色々アイテムを拾いまくっていたら、動けなくなって敵にタコ殴りにされたのは今ではいい思い出だね。


 なので、最近では要らないものは極力拾わないようにしているけど、それでもこのインベントリは重宝している。



 あ、そうそう。

 初めての戦闘から3年もたった俺だけど、あれからずっと腕立て伏せだったり、走り込みだったり、思いつくトレーニングは色々やって来たんだ。

 そのおかげで、体力がかなり付いた。戦闘時に技を使っても次の日筋肉痛で動けなくなるなんて事はなくなったよ。


 

 ほんと初めての戦闘の後は大変だったよ。

 シャルのやつ、1週間も口をきいてくれなかったんだぞ。

 可愛い妹にこんな仕打ちを受けるとは!

 正直、拷問の何物でもなかったよ。


 まぁ仲直りをする為に、色々頑張ったよ。

 当然、愛妹と仲直りをする為なら苦労は惜しまないからね、俺は!






 「さて、そろそろ帰らないとシャルがいじけちゃうかな」


 俺はいい訳用の山菜とシャルのお土産の花を手に、家路へとついた。




    ◇◇◇◇





「母上。只今帰りました」

「あら、お帰りなさい。山菜はたくさんとれたかしら?」


 そう言って、ちょうど夕食の準備をしていた母上は俺を迎え入れてくれた。


「いつも通りだよ。母上」


 母上にお土産の山菜を渡して家の中に入る。


「あらあらー。今日もたくさんねぇ。いつも助かるわ」



 なんで山菜かって言うと、いつも出かけている理由として山で山菜を取ってくるって言って出かけてるからなんだ。

 鍛錬に費やす時間が時間がそれに少し取られてしまうけども、流石に理由がないと怪しまれちゃうし仕方ない。



「にーにぃ……。おかえり」


 トテトテと部屋の奥からシャルが現れて、抱きついてきた。



 っくー!! 可愛い奴め!!

 食べてしまいたいくらいだ!!




 …………っは!!


 こ、これでは両親と同類になってしまうではないか。

 あぶない、あぶない。



「にーにぃ、シャルには?」

「ん? あぁ勿論シャルにもお土産はあるよ。ほら」


 そう言って、シャルに先ほどの場所で摘んできた花を渡した。



「わぁ……! きれい」


 シャルは花を見つめながら嬉しそうに喜んでくれた。



 いつも思うんだが、毎回花でいいのだろうか? まぁ喜んでくれてるみたいだからそれで構わないんだが。

 でも、今度はまた違った物でも持って帰ってくるかな。



「にーにぃ……。ありがと」


 シャルが嬉しそうに花を見つめている姿に、俺は心が癒された。



「あらあら。よかったわねぇ、シャルちゃん。綺麗なお花さんを貰えて。じゃあテーブルの花瓶に飾りましょうか」



 そう言って、母上は戸棚にあった花瓶を持ってきて、シャルに渡す。


「うん」



 シャルは嬉しそうに花を挿した花瓶を両手に抱えて、再びトテトテと部屋に戻っていった。



「じゃあお夕飯にしましょうね。レクサは手を洗ってきなさい。あと、お父さんいつもの場所に居ると思うから呼んできて呼んできてちょうだい」

「はーい」


 そう言って、俺は家の裏にある井戸まで駆けていった。


 この井戸もこの世界に生を受けて使うようになってから、既に数年ほど経った。最初は自分の力では持ちあげられなくてとても苦労した覚えがあるなぁ。



 いやぁ成長したね、俺。



 うん。変な感傷に浸っていないでさっさと父上を呼びに行こう。





    ◇◇◇◇





「ふむ。ポーションの濃度が高すぎるな……。これだと、過剰回復してしまって逆に体力を奪うことになりかねん……(ブツブツ)」


 父上ことジョセフは乱雑に本が積み重なっていたり、実験器具と思われるガラスの管や薬草らしきものが散らばった部屋に篭って朝から薬品の調合に打ち込んでいた。

 ここは家の隣にある建物で、父上の診療所兼研究所兼薬剤室として使われている。


 父上は村の診療をやりながら、仕事の合間に薬師として様々な調合法を研究していたりもする。

 また、父上は昔、冒険者として各地を母上と一緒に旅をしていたらしい。

 それもあってか魔法が使え、噂ではそこそこの冒険者だったとかなんとか。


 まぁ実際に本人の口から聞いたわけではないので、その辺りは定かではないのだけども。



「父上。夕飯の準備が出来ました」



「こいつを入れてみてはどうだろうか……? いや、しかしこれでは効果が反発しあって今度は回復量が足りないか……(ブツブツ)」


 うわぁ。また研究モードに入っちゃってるよ。

 こうなったら、ちょっとやそっとの事では気がついてくれないだろうな……。

 まぁ個人的にはこうやって研究に没頭する父上の姿は格好良いと思うし、好きなんだけど今回ばかりは大変そうだな。



「父上! 夕飯の準備が出来ました!!」


「だとするとこれを使用してみるか? いや、でも確かにこれを使うと効果は安定するが、価格が高すぎるから今度は安定供給が……(ブツブツ)」


 案の定気が付かないよ、この人。


 ……このまま放おっておいくか?

 いや、それはそれで、母上が怒りそうで怖い。

 うーん、でも流石に薬品使ってる場所だから近くに行って驚かせたりしても危ないだろうし……。


 うん。メンドクサイ。



 こうなったらアレか……。




 俺は一度この場を後にして、家に戻った。

 家に戻るとリビングのテーブルの上に先ほど持って帰ってきた花を眺めているシャルを連れて、再び先ほどの場所まで戻ってきた。



「いいか、シャル。さっき伝えた事をそのまま父上に対して言うんだぞ?」

「うん。……わかった」


 俺は、こちらに来る際に、父上をこっちの世界に戻すためにとっておきの言葉を伝えておいたんだ。


「よし、じゃあ頼む」






「父上なんて大っキライ(ボソッ)……」


 ドンガラガッシャーン!!!!




 うん、効果は抜群だ。



「シャ、シャル! ど、どうしたんだ! 父が何かやってしまったのか!? 反抗期なのか!!?」



 いや、正直慌てすぎだろ!ってツッコミがどこからか飛んでくるかもしれない。


 だがしかし! 年頃の娘を持つ親バカな父上には、これがとてつもなく効くんだ。

 それこそ、集中力が高まっている研究モードになっていようと耳に入ってくるようだし。


 まぁ正直俺が言われても、同じような反応を示すだろうけどね。


 うん。遺伝って怖いな。



「父上。落ち着いてください。シャルもそこまで嫌いではないはずですよ」


「そこまでってどこまでだ!? やはり嫌われてしまったのか!!?」


 あー、ちょっとメンドクサイ事になったかも。

 自分でやっておいてなんだが、ちょっと後悔。


「(シャル、さっき教えたように言ってやってくれ)」



 シャルはわかったと頷き、父上に言い放った。



「……ゴハンできました。食べに来てくれたらキライになりません……」


「そ、そうかそうか! じゃあ早速食べに行こう!! すぐ行こう!!」


 そう行って、父上はシャルを抱えて猛ダッシュで家の方へと戻っていった。




 ……父上。キャラ変わりすぎです。


更新が遅くなって申し訳ありません!!


仕事が忙しくて更新できませんでした…orz


はい、いい訳ですよね。スミマセン(TдT)


定期的の更新を頑張って目指しますので(出来れば週一で)よろしかければこれからも見てやってください。


2011/12/15 主人公の一人称、村の名前を修正

2011/12/16 感想での指摘があった件を修正

2011/12/25 主人公の口調を修正


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