~第1話 新しい家族~
皆さん、お久しぶりです。元気にしていましたか?
俺は元気です。
そう言えば、自己紹介をしていませんでしたね。
俺の前世の名前は宮本 誠(26才)。俺の家族は歳の離れた妹だけだった。両親は妹が生まれてすぐに他界しており、はじめの頃は親戚の家に別々に引き取られていました。しかし、俺は唯一の肉親となる妹と暮らしたくて、高校を卒業後すぐに働きに出て、生活に余裕が出てきたあたりで妹を引き取ってふたり暮らしを始めていました。まぁそんなこんなで、妹が事故に遭うまでは、恙無く暮らしていました。
それでね、妹なんだけどそりゃ可愛いのなんのって、そんじょそこらのアイドルなんかには出せない可愛さが溢れ出していてね。ほんど、目に入れても痛くないくらいの可愛さなんだけど…。
え? そんな説明いらないって。まぁまぁそれよりも…、イテ、コラ!! 石を投げたのは誰だ!?
まぁいいや、妹の事はまた今度、レポート用紙100程度にまとめて君たちに進呈しよう。
それで、今、俺は窮地に陥っている。
自称神に、「転生させてあげよう!」なんて言われて、俺は調子に乗っていたのかもしれない。
まさか、こんなことになるなんて。
「あらー。どうしたのかなー? 私の可愛い赤ちゃん」
「ぶぅ……(母上……)」
そう、この目の前にいる。見事なスカイブルーの長髪の女性が俺の新しい母親だ。
エリオナール(17才)容姿端麗で、頭がとても良い。しかし、普段はどこか抜けているような話し方をする。
父上曰く母上を怒らせるとその人柄に似合わず、悪鬼羅刹の如く力を震わせるらしい。(内心、疑わしいところではあるのだが)
それでも、滅多なことでは怒らないから、俺はまだその姿を見たことはないんだけどね。
「あらあらー。もしかしておしめの交換かしらー」
上記の流れで、お察しかもしれないが、あえて俺の口から説明すべきだろう。
そうなのだ、俺は今赤ん坊なのだ!!!
いや、確かに転生って言ってるんだから、赤ん坊から始まるのは仕方ないのかもしれない。
しかし、しかしだ!!
まさか赤ん坊の頃から記憶がはっきりしているなど、思っても見なかったよ!
こんな拷問でしかないじゃん!! なんなのこの羞恥プレイ。
まぁ日々黒歴史を量産している訳だが、赤ん坊なのだから仕方ない。諦めるしかないのだから。
うぅ……。
と、まぁ俺がそんな現実逃避をしているうちに、母上がオシメを取り替え終えたようだ。
「はい、これで綺麗になったわね。ホント可愛らしいわぁ。食べちゃいたいくらい」
母上、やめてください。
「お、レクサのオシメを変えたのか?」
そう言って、颯爽と現れたのが、俺の父上。
ジョセフ(18才)眉目秀麗で黒髪長髪。誰が見ても、惚れ惚れする容姿を持っている。
白衣を着た姿は、薬師として生計を立てている父上にはぴったりだった。
薬師としても優秀らしく、母曰く、俺が生まれる前に風土病が蔓延していた時があり、
その時に父が処方した薬のおかげで、死を免れれた人が多くいたらしく、今でも父を慕う人が
多くこの村にはいるらしい。
「相変わらず、レクサは可愛いなぁ。食べてしまいたいくらいだ」
そう言いながら、父上はオシメを変えたばかりの俺を抱き上げる。
というか、父上! 貴様もか!!!
「ジョゼ、あなたもそう思う?」
「あぁ、エリナ。勿論キミもとても可愛いと思うよ」
「あら、ジョゼだってとてもカッコイイわよー」
また、始まったか。このバカップルめ!
まぁ夫婦の中がいいのはいいことだしな。放おっておいていいか。
さてさて、先ほど俺の自己紹介の途中だったと思うので、この世界での俺の自己紹介をしておこう。
改めまして、俺の名前はレクセナール(0才)。まぁ容姿は両親の血を受け継いだのだろうが、将来有望らしい。(まぁ両親曰くなので、あまり期待はしていないけどね)
そして、髪型は黒髪なので、父親の血をそこは引き継いだのだろう。
まぁ俺としては、黒髪に慣れてるし、違和感がないのでその点は良かったと思っている。
次に、俺が暮らしている村のことだが、まだ、母親に抱きかかえられてでしか出かけたことがないのだが、どうやら見た感じでは漁村になるらしい。
俺の家は、丘の上に作られているらしく、ちょっと村からは離れていた。村は海に近く、特に特産物があるわけではないので、辺境と言ってしまえばそれで済んでしまうのだが。 それでも、夜になれば、元の世界では見られないような星空が見えたりなど、とてものどかでいい場所だ。
そして、この世界のことだが……。正直まだわかりません。
だって、仕方ないじゃん。俺まだ0歳なんだよ?
まぁそのことは追々調べようかと思ってます。
そんなこんなで、色々と紹介をしてきたわけだが、赤ん坊としては、こんな長時間考え事をしているとなると、お腹が空く訳であって……。
赤ん坊がお腹が空くとなると、こうなってしまうのは生理的にしょうがないわけであって……。
「おぎゃぁ! おぎゃぁぁぁ!!」
「あら。そろそろお昼の時間ね。じゃあレクサにご飯をあげないと」
そう言って、母上は服をたくし上げる。
まぁなんだ。赤ん坊のご飯と言ったら、アレしかないわけであって……。
それは排泄同様、どうしようもないのだが。
…くそぅ! 早く大きくなりたい!!
◇◇◇
皆さん、お久しぶりです。元気にしていましたか?
俺は元気です。
ん? もうすでに同じ挨拶をしてるって?
そんな細かいこと気にするな。
俺もアレから大きくなって、5歳になったんだ。
え? 早すぎないかって?
仕方ないだろう。そもそも、赤ん坊の頃の話をしても、特に語ることなんてないわけであって。
決して、自分の黒歴史を語りたくないわけではないよ?
ホ、ホントだよ!?
まぁアレから、色々あったので、皆さんに報告することがありますね。
まずは俺自身のことからかな。まず、簡単な文字が読み書きができるようになりました!
……あれ? 反応が薄い?!
いやいやいや! この世界で文字がかけるようになるのってすごく大変なんだよ!
そもそも、普通の人は文字の読み書きが出来なくても暮らしていくには問題ないしね。
それに、言葉なんかは赤ん坊のころから聞いていたおかげか普通に話せるようにはなったんだけど、文字ばかりは日本語のせいか覚えるのに時間がかかってしまったんだよね。
それでも、2歳である日常会話が完璧にできるようになって、3歳くらいには母上に頼んで、「ボク、ご本がひとりでよめるようになりたいです」って言ったら、そりゃもう凄い勢いで喜んでくれたんだよ。
その成果が最近出てきてて、簡単な書物だったら一人で読めるようになったんだ。
まぁそう言っても、本自体が高価なものらしくて、父上の書斎に薬草や簡単な魔法の書物があるくらいなんだけどね。
一応子供だからって理由で、まだ父上の書斎には入れてもらってないんだけど、いつかあそこにある書物を読んでみたいなぁ。
「レクサー。ご飯よー」
「はーい。今いきます」
母上に呼ばれて気がついたが、そう言えばもう昼時だしお腹もすいてきた。
居間へ向かうと、既に父上と母上は席についていた。俺の席が父上の隣の席で、母上は斜向いに座っている。
そして、俺の正面には……。
「はーい。シャルちゃん。ごはんですよー」
はい。新しい家族が増えました。
妹のシャロン(3歳)。容姿は母親似で、青い髪を受け継いでおり、とても愛らしい。長い間(三年だけなのだが)妹のミコトに会えなかった俺としては、とても嬉しいことで、その愛情をたっぷりと注いで育ててきた。最近ようやく言葉が話せるようになって来たのだが、一番初めに喋った言葉が「にーにぃ」だったことには、感激のあまり失神してしまうほどだった。
そう言えば、父上と母上はそれがとても悔しかったのか、その後必死に自分のことを呼ばせようとしていなぁ。
ちょっと引っ込み思案な所があって、お客さんが来た時とかは俺の後ろから出ようとしないほどだった。兄としてはちょっと心配なところでもある。
「よし、じゃあ全員席についたな。じゃあ主に祈りを捧げよう」
父上がそう言って、目を閉じて手を合わせた。
「神よ、あなたのいつくしみに感謝してこの食事を日々の糧として、いただきます」
「「「いただきます」」」
最近知ったのだが、この世界も宗教があり、その名も聖一神教会という。先ほどの祈りもそうなのだが、我が家も敬虔とまでは言わないが、信者である。
「シャルちゃん。ママのご飯はどうかなー?」
「……おいちぃ(おいしい)」
可愛すぎる!! やだ、何この子! 可愛いにも程があるんですけど!! ってか家に連れて帰りたいわぁ、って、ここ自分家じゃん。
「んー、やっぱりシャルちゃん可愛い!」
ですよねー、母上。
さてと、今日の昼食はっと……。
うげ、グリンピースもどきが入ってる。ここはそーっと端に寄せて……。
「レクサ。好き嫌いをしては大きくなれないぞ」
ちぃ!! バレてたか、父上。
仕方ない、我慢して食べるしかないか。
「はーい。あむ(もぐもぐ)。……(うげー)」
母上の料理自体嫌いじゃないだけどなー。ただ、このグリンピースもどきに関しては、前世でも苦手なものだったのにこっちの世界でも存在してるんだもんなー。
そうそう。こちらの食事情について軽く説明しておこう。
主に主食はパンで、それに肉や野菜などをメインに食べている。
先ほどからグリンピースもどきと言っているが、味や見た目はそのままなのだが、名前だけ違っているらしく、説明がめんどくさいので、もどきと言っている。
また、食料に関しては、元の世界と変わらないようで、ほとんどの食材が見たことがあるものだった。
これなら、元の世界で培ってきた料理スキルも通じるのではないだろうか。まぁまだ試す機会はないのだろうけどね。
◇◇◇
「「「「ご馳走様でした」」」」
ご飯を食べ終えた俺はシャルに声をかけられた。
「にぃーにぃ」
「ん?」
「きょうも、いっしょにあそぶ?」
普段は昼食が終わるとシャルと一緒に遊んでいる。
まぁ遊ぶと言っても俺が本を読み聞かせたり、お人形遊びを付き合ったりなどだが。
しかし、今日に限ってはそうも行かない。
「今日は悪いけど、一緒に遊べないんだ。ちょっとやることがあってな」
「ぇ……」
やばい!! シャルのやつ泣きそうになってる! まずい、非常にまずいぞ。何とかしないと!!
「そ、そうだ。明日は絶対に遊んでやるから! 絶対に!」
「……うん。わかった……。やくそくだよ?」
なんとか納得してくれたけど、非常に気まずいな。でも、そろそろアレを試してみないといつまでたっても進展がないしな。
妹よ、すまない。この埋め合わせはきっと明日するからな。
シャルが寂しそうにしているが、後ろ髪をひかれる思いでこの場を後にした。
2011/10/29 誤字修正
2011/12/15 誤字、主人公の年齢を修正
2011/12/25 誤字修正