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兄転生、妹召喚  作者: 睦月 朔日
第一章~未定~
10/14

~第9話 家族の危機(1)~

今回はジョセフ(父親)視点から始まります。

苦手な戦闘話になるので、拙い描写になりますが、ご了承ください。


では、本編をどうぞ。

 村から少しばかり離れた山中。ジョセフとエリオナールは山の中を駆けていた。


「はぁ、はぁ……。エリナ! 大丈夫か!!」

「えぇ! まだ、大丈夫よ!」


 ――ギャアァァ――


「っく!! 『アシッドリキッド』!」


 ジョセフは背後から迫り来る敵に錬金術師《アルケミスト》のスキル『アシッドリキッド』を使用して迎撃した。


 『アシッドリキッド』は錬金術師《アルケミスト》のスキルで、敵に強力な酸をぶつけて攻撃するスキルである。別スキル『薬品生成』で作られた、アイテム【塩酸ビン】を消費することで、威力が増すのだが…。


 ――グギャアアアァ――


 敵の魔物に当たる直前にジョセフの攻撃は止められてしまう。



 っく! 相手が悪すぎる! なぜ、このような場所にスノードラゴンが出てくるというのだ!?



 スノードラゴン。それは、雪山に住まうドラゴン。本来はケイモーン山脈に住んでいる魔物で、ミルミンギ村に出るような魔物ではない。 また、先ほどの攻撃も相性がとても悪すぎる。敵は氷の魔力を取り込んだ魔物だ。こちらの攻撃であるアシッドリキッドは塩酸を敵にぶつけて攻撃するわけだから、敵は来た攻撃を凍らせるだけで防ぐ事ができるわけだ。


 こちらの攻撃は効かない。あちらの攻撃は効く。

 このような状況で、二人に勝ち目はなかった。今まで生き延びることができているのは、敵の性格と彼らの実力の高さによるところが大きい。

 スノードラゴンは、その姿は見るものを魅了させるくらいに雪のように白く美しい。ただ、その姿とは裏腹に、冷酷な一面を持ち、獲物をジワジワと執拗に苦しめながら狩る。

 今も、敵は執拗に攻めることもせず、ただ獲物をジワジワ詰って居るだけだ。恐らく2人の体力が尽きるまで。


 だが、


「ジョゼ!」

「あぁ、もう少しだ。研究所までたどり着けば、とっておきでアイツを倒して見せるよ」


 二人は諦めない。

 当然だ。今まで幾多の困難に二人で立ち向かってきたのだ。この程度のことで負けてしまうわけがない。



 ――……クウゥゥゥゥゥゥ――



 くっ! マズイ!! 奴が力を貯めている。これは…


「エリナ! 恐らくヤツのスノーブレスが来るぞ!」


 スノーブレス。それは、スノードラゴンの代表的、かつ最も強力な攻撃の1つで、体内に蓄積されている氷の魔力を圧縮して、それをブレスとして、敵に吹きつけるという攻撃だ。


「わかってる! 歌うわ!『平和の歌』」


 ジョゼフの忠告の直後にエリオナールが歌いだす。これは、エリオナールが取得している、吟遊詩人《バード》のスキルだ。

 吟遊詩人《バード》は古の歌を歌うことによって、味方や敵の能力を変える事ができ、『平和の歌』は味方の守りを強化する力がある。

 吟遊詩人《バード》のスキルの利点として、攻撃を行いながらも歌うことで能力を上昇させること出来る。ただし、逆に歌が途切れてしまうと、即座に効果が切れてしまう欠点もある。


「まだだ! 『マジックシールド』!」


 エリオナールの平和の歌の更に後に、ジョセフが魔法使いのスキルの『マジックシールド』を使用する。

 このスキルは魔力に対して干渉する膜を体に張って対象を保護するもので、敵の魔力に反応して、その魔力を相殺するものだ。

 まぁ今回のような強力なものに限っては威力を軽減するまでにしか至らないが、無いよりはマシである。



 ジョセフの魔法が完了すると同時に、スノードラゴンのブレスが二人に襲いかかる。


 ――ギャアァァァァ!!!――


 氷の魔力から創りだされた、無数の氷槍が二人に吹きつける。ジョセフが使ったマジックシールドの魔力の膜が徐々に削られていく。

 その穴から攻撃か入り込んできて、二人を徐々に痛めつける。


 既に満身創痍な二人に、スノードラゴンは止めと言わんばかりにブレスに力を込める。


 そして、ついに。


「ぐあぁぁ!」

「きゃあ!」


 二人を守っていた膜もなくなり、攻撃か直接二人を吹きつける。余りの威力に平和の歌まで中断されて二人は後方へと吹き飛ばされる。


 派手な音を立てながら、後方の木へと叩きつけられる。

 二人はなんとか立ち上がろうとするが、思ったように立ち上がれない。

 既に二人の体は限界まで来てしまっている。

 スノードラゴンの方も大量の魔力が一度になくなったため、すぐには攻撃してこない様だが、既に二人の力は尽きてしまい、為す術もない。



 っく! 無念だ。俺達はここで終わってしまうのか……? せめて、子供たちだけでも逃げ延びてくれていれば……。



 ジョセフがこの場にいない二人の子供たちの安全を願っている、その時だった。


 ――ガサッ――


 二人が戦闘している横の茂みから物音が聞こえた。


「…今度は、な、んだ」


 既に、意識が朦朧としてきている、ジョセフは頭を無理やり回転させながら、茂みへと意識を向ける。


「……父上? ……母上?」


 そこへ現れたのはシャロン。


「シャ、シャロン!!」

「シャロンちゃん!!」


 なっ、なぜ娘がここに居る!!


 突如の闖入者に二人は固まってしまう。だが、そんな二人とは裏腹に魔物は冷静だった。

 そこへ現れた闖入者にスノードラゴンは明確な敵意を向け、獲物を威嚇する。


 ――ギャアアアァァァァ!!――


「…きゃ!」

「いかん! シャロン、逃げろ!!」


 スノードラゴンの咆哮に腰を抜かしてしまった模様のシャロンは、地べたへペタリと座り込んでしまった。


「っく! エリナ!」

「えぇ! わかってます!」



 あと少しでいい! 俺の体よ、動いてくれ!!



 ジョセフは既に動かなくなってしまった体に、ムチを入れ動き出す。なんとか起き上がることができたジョセフは体をふらつかせながらシャロンの元へ駆けてゆく。

 シャロンとスノードラゴンの間に割って入ることが何とかできた二人だが、既にお互いの体は限界で最早経つことすら儘ならない。

 シャロンの前で膝を着いてしまう二人に、スノードラゴン止めと言わんばかりに、体中の魔力を集めだした。


 ――……クウゥゥゥゥゥゥ――



 っく! またスノーブレスか!! 最早ここまでなのか?! ……だが、せめてこの子だけでも。



 既に、二人に彼の者の攻撃に抗うすべは無い。だが、せめてシャロンだけでも救う、その一心で二人はシャルを抱きかかえる。

 すべての攻撃をその身に受け、娘を守る為に。



 そして、無常にもスノードラゴンの攻撃が放たれる……。



「させるか! あのクソったれ《スノードラゴン》から家族を守れ!『召喚・カーバンクル』!!」




   ◇◇◇   




 時は少し遡って、シャルが二人の元へたどり着く数十分前、レクサナールは森の中を走っていた。


「はぁはぁ…‥。何処だ!? 何処に居る!!?」


 必死にシャルや両親を探すレクサだったが、未だに見つけ出すことが出来ない。


「っクソ!! このままだと皆が……」


 ――ゾクッ――


「な、なんだ! これは……、魔力か!? ……ってことはこの魔力がする方に!」


 巨大な魔力を感じ、その方向できっと両親が戦っているのだと直感し、俺は再び走りだした。


 無論、この巨大な魔力はジョセフとエリオナールがスノードラゴンに放たれたスノーブレスで、それによって二人は万事休すな状態であるが、そのことをレクサは知る由もない。



 もう少しだ! 頼む、持っていてくれ!!




   ◇◇◇   




 見つけた! 良かった、まだ無事だ。



 数分ほど魔力が発生した方角へと森の中を駆け、ようやく目的の人たちを見つけた。


 傍から見ると、既に満身創痍な状況だが、まだ両親は生きている。シャルも両親の腕の中に抱かれているようだが動いているため、大丈夫だろう。

 そして、三人の目の前に立ち塞がる大きな龍を見据えた。恐らく、いや、どう見ても奴が今回の異変の原因だろう。


「よし! このまま駆けつけて、あのクソったれ《スノードラゴン》をぶっ殺してやる!!」


 そう言って、更に力を込めて駆け出そうとした、その時。


 ――ゾクッ――


 っく! またか! なんだこの魔力は!! ……奴に魔力が集まっている? あのモーションは……まさかこの魔力を使ってスノーブレスで攻撃する気か!?


 既に人を殺すには十分な程の魔力がスノードラゴンに集まっている。


 っく! 間に合わない! ……ならば!!


 ――『我求、貴人の指を赤く飾り、貧者の命を助く求むる者へと渡りながら、内なる声聴く主を探す赤き宝獣』――


 スノードラゴンの口から先ほどとは比べ物にならないほど強力なブレスが放たれる。


「させるか! あのクソったれ《スノードラゴン》から家族を守れ!『召喚・カーバンクル』!!」


「キュイー!」


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