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第4話 たぶん、晴れ。


 朝、出勤しなくちゃ……と鳴り響く目覚まし時計に手を伸ばそうとして、その存在にハッとする。


「 湊! 」


「ん? あ……和美さん。おはようございます」

 朝の至福が微笑んでる、とついつられて「おはよう」と返して、違う! とキッと彼を睨んだ。

「それどころじゃないってば! もう、七時なのに。どうしてのんびりしてるのっ?」

「え? 何がですか?」

 と、不思議そうにする湊にイラッとした。

「仕事! もう、番組始まる時間じゃないっ」

 ホラ! と和美が時計を手に迫ると、彼はポカンとして次に笑った。

 そのあまりの無邪気さに怒っているのも絆される。

(くぅ! なんて朝の似合う子なのっ。流石よ、由良くん)

「和美さん。今日、土曜日ですよ? 僕は基本、土日は休みなんです」

「へっ? そうなの? ……そういえば、平日しか見なかったかな? 駄目ねぇ、シフトで働いてると曜日感覚が鈍くて」

「和美さんは今日も仕事?」

 ベッドの上で彼は訊き、和美は頷いた。

「そうよ。土日のどちらかは基本出勤なの。今週は土曜出勤で明日は休み」

 支度をしようとベッドから足を下ろして、羽織っていたブラウスの前を留める。下着も履いて、と視線を感じて振り返ればジッと湊が見ていた。

「な、なに?」

「せっかく今日一日一緒にいられると思ったのに、残念だな……と思って」

 心なしかシュンとなった彼に、和美の母性本能がくすぐられる。

 今の今まで、年下男なんて眼中になかったのに由良湊に関しては「別格」だと認めるしかなさそうだ。

「湊、ごめんなさいね。明日は休みだから……」

「うん、だよね? じゃあ、今日は何時に終わる? 迎えに行くから、外で何か食べましょう」

 にっこりを笑って誘う彼に頷いて、和美はつられるようにまた微笑んだ。

「そうね、じゃあ……」


 纏わりつくみたいに朝の支度を手伝った彼は、玄関先で和美の頬にキスをした。

「じゃあね、今日一日頑張って?」

「う、うん。湊も、気をつけて帰ってね」

 慣れない若い恋人同士みたいな朝の風景に、今更自分が立たされるとは思わなかったと頬が熱くなる。

(甘い、甘すぎ……やっぱり、若いわ。ついていけるかしら、わたし)

「和美さん」

「え?」

 俯いていた顔を上げれば、傘を持つ彼女の手を掴んだ彼はニッコリと微笑んで、取り上げた。



「 今日は晴れだよ。傘はいらない 」


本筋は、これで終わりです。出会いの話、って感じですが……後日談として続きが少しあります。もうしばらく、お付き合いください!

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