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「………どうして、俺にキスなんてしたんだっ……!!」
「あぁ、嫌だった?俺、キスうまいって評判いいんだけど」
自国へ戻る公爵家の馬車の中で、2人っきりになると早速ラウルがリュートに怒ってきた。
キスをしたとき怒るだろうなと思ったが、やっぱり怒ってきたラウルがなんだか可愛いらしい。
「…………そんなの、分かるわけっ……!!」
「なら、もう一回してみる?もっと深いのする?」
「…………はっ!?」
色白の肌を真っ赤に染め上げ、口元に手を当てて仰け反るラウルにもっと迫りたくなる。
(男に興味なかったはずなのに、おかしいな)
これ以上ラウルをからかうのも今後に支障がでそうなので、リュートはラウルの頭をポンポンと叩いた。
「本当に冗談だから、安心して。アディラ嬢が反対してきそうで面倒くさかったからしただけ」
「………他にやりようがあっただろ…!?」
「うーん、そうかな……。俺にはあの時、あれがベストだと思って」
アディラの強い意志を感じさせた瞳を思い出す。アディラは間違いなくラウルのことが好きだろう。
ラウルとの間にアディラが付け入る隙間がないことを知らしめたくなって、ラウルとキスをしてしまった。
ラウルとするキスは身体が痺れてきそうなくらい、良かった。
もう一度、なんて思ってしまってリュートはその考えを頭から追い出した。
「……もうラウルに手を出すことはしないから」
「本当だな?本当だな??」
何度も必死に確認してくるラウルを、やっぱり可愛いなと思いながらリュートは本当だよと答えた。
ラウルがリュートに着いていくことに決めた理由は、現状を変えたいという思いがあったからだが、自分の父親がいるかもしれないヴァーナリア王国に興味があったこともある。
国を出てから、馬車に揺られて早4日。
馬車の窓から見える風景が、どこか懐かしく思えるのは気のせいだろうか。
リュートのもうラウルに迫ることはしないといった台詞は本当で、適切な距離を保ってくれている。まぁ、それが普通なのだが。
大きな混乱なく、ラウルとリュートは公爵家へと無事に辿り着いた。公爵家の名に恥じない、荘厳な建物だった。
使用人達は前もって聞かされていたのか、急に現れたラウルに驚くことはなく、リュートに何かを伝えている。リュートは溜息をついて、肩を下ろした。
リュートと共にラウルが入った部屋の中には、先客がいた。リュートの姿を見て、嬉しそうに近づいてくる。
「リュート!お前、女を連れて帰ったんだって?僕にも見せてみろ!!………はっ?僕じゃん!!」
ラウルが見たのは、自分そっくりな銀髪の男だった。




