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ついに来てしまった、公爵家での晩餐会。
上手く立ち振る舞えるか不安に思うアディラの横には、ラウル。
従僕に過ぎないラウルだけれども、正式に招待されたため貴族のような装いをしていた。
黒髪を後に撫でつけ、端正な顔を顕にしている。
真っ白のシャツに紫色のクラバット。
平常時から人目を浴びる容姿のラウルだが、正装のラウルはますます魅力的に見えた。
少し気怠げな表情を浮かべているのが、なんとも言えないぐらい色っぽい。
「こんなん、大したことないだろ」
アディラよりも場数を踏んでいないはずなのに、やけに堂々としているラウルが恨めしい。ラウルのエスコートを受けながら、アディラは華やかな会場に足を踏み入れた。
キラキラと光り輝くシャンデリアの下に、人集りができている。そこにラウルの目的とする人物がいると思われた。
公爵家の晩餐会なんてものに、ラウルが呼ばれた理由はただ一つ。ラウルの容姿がヴァーナリア王国の第三王子に似ていることを聞きつけた王国の大使が、ラウルに会ってみたいと言い出したからだ。
緊張はしてないものの、居心地の悪さをラウルは感じていた。意味深に向けられる貴族達の視線が痛い。
ようやく人がはけて、アディラとラウルが大使に挨拶できるようになったとき、ラウルは心の中でげっと声をあげてしまった。
「あっ、君は……!!」
嬉しそうにラウルに握手を求めてきたのは、何時ぞや街で会った優男だった。
ラウルは引き攣った笑顔を浮かべた。
アディラは状況が飲み込めずきょとんとしている。
「ヴァーナリア王国のプライズ公爵家次男、リュートだ」
「……ラウルです」
通常なら話しかけることの許されない身分の高いリュートに、男爵のとか従僕のなどつけて名乗るのが癪で、ラウルはただ名前のみを伝えた。
ただラウルは卑屈な態度を取ることはなく、リュートの瞳を直視していた。不遜とも取られる行為であったが、リュートは不快感を覚えることはなく、ラウルをやはり好ましい男だと思った。
リュートは繋いだ手をぎゅっと自分の元に引き寄せると、ラウルに耳打ちした。
「君と誰にも邪魔されず話したい。私が合図をしたら、テラスに来てくれ」
「………………はっ?」
ポカンとした表情を浮かべてしまったラウルの肩を軽く叩き、リュートは肉食動物が獲物を見つけたときのような怪しい笑みを浮かべた。
(―――俺のことを狙っている………!?)
ラウルはリュートの微笑みに体をゾッとさせた。




